「あまろっく」

てっきり尼崎舞台の音楽(ロック)絡みの映画かと思っていたらさにあらず。ろっくは閘門(水門)を意味するLockから来ていた。鶴瓶は相変わらずの味やし、江口のりこもこれは江口のりこしかおらんやろというはまり役。中条あゆみもさすが大阪出身のことはある、よう頑張った。実は当方も尼崎と同じ兵庫南部の出身だが播州の人間で、尼崎という町はこれまでとんと縁が無かった。電車を使う場合はふつうJRで、JRだと尼崎北という駅があるが通過するだけで一度も降りたことがない。映画の舞台は阪神電鉄尼崎駅前だが、阪神電車も甲子園駅止まり。国際色豊かな港神戸、高級住宅街芦屋、歌劇団の宝塚、学園都市っぽい西宮などに比べて尼崎は阪神間にあって圧倒的に印象が薄い。兵庫県というよりは大阪市の一部とも言える。強いて言えば工場の街か。そんな尼崎がこの映画で逆襲に転じた。尼崎城の天守が再建されていたことは映画を観るまで不覚にも知らんかった。笑いと涙満載の、サービス精神旺盛な関西ローカルのベタな展開がいい。鶴瓶の科白、「人間、めし食て寝たら、人生大概のことはなんとかなる」「(一回きりの人生や)楽しまなあかん」はローカルでもなんでもなく普遍的な真実だ。元歌手で神戸出身の佐川満男が鉄工所のベテラン職人役で出ていたと思ったら、映画公開日(4月19日)の1週間前の4月12日に亡くなられていたことが20日に公表された。これもまた人生。江口のりこ扮する主人公は京大ボート部出身の設定。確か京大は淀川水系ではなく琵琶湖で練習していたんではないかなと、学生時代の埼玉戸田ボートコースを少し思い出しながらローイング風景を見ていた。贅沢な2時間でした。ありがとう。

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