見出し画像

晴れのち桜

 晴れた日の空に桜の花びらが舞っている。幸一は、仰いだ空に春いっぱいの空気を感じ心地良くなった。幸一は、桜を眺めては心を落ち着かせていた。幸一は心に病を抱えている。それは、もう十年にもなる戦いだ。
「幸一、桜は好きか?」
友人の聡が話し掛けた。
「ああ、好きさ」
「なぜ?」
「綺麗に咲けるからかな」
「きみだって、綺麗に咲けるだろ」
「僕は無理だよ、心の病はそう単純じゃない」
「無理じゃないよ」
「それは、建前さ」
「心の病にはいろいろな弊害があるからね」
幸一は寂しげな表情を浮かべた。
「弊害ね、また、社会に壁があるとか言うんだろ」
「ああ」
「でもさ、そんなこと言ってたら、いつまでも、はじまらないよ」
幸一は俯くようにしてムカついているような表情をした。
「そんな顔するなよ」
「俺の気持ち分からないくせに、勝手なこというなよ」
「まあ、でも、おまえに少しで前に進んで欲しくて」
幸一は聡の気持ちに内心喜んではいたが表情には出さなかった。
桜は陽を浴び輝いている。幸一は病んでいる心と戦っていた。


 続くかも……。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?