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源氏物語と紫式部関連の本 

今年は、大河ドラマ「光る君へ」の主人公が、紫式部ということで、源氏物語や平安時代がマイブーム。

展覧会にも行ったし。

源氏物語」自体はずいぶん前に、与謝野晶子の現代語訳を読んだことがあるが、詳細を忘れているし、この機会に読みなおそうかな、と去年から思っていた。
でも、いきなり取り掛かるのはハードルが高いので、まずは手持ちの解説本などを読んでみることにした。
全部読み終わってから、と思ったけど、それだと大河ドラマも終わってしまいそう!?な気がするので、途中経過として、5冊分の感想を書いておこう。

①『NHK100分de名著 紫式部『源氏物語』』(2012年4月テキスト) by 三田村雅子

2012年当時に読んだはず(多分番組も見たのだろうけど記憶になく)だけど、10年以上もたてば新鮮に再読できる。

目次はこんな感じ
「初めに」 想いは届けられるか
第1回 光源氏のコンプレックス
第2回 あきらめる女、あきらめない女
第3回 対面に縛られる男たち
第4回 夢を見られない若者たち

家系図や六条院の復元図なども出ていてわかりやすい。
分量もさほど多くないので気負わずに読める本で、良い解説書だけど、やはり「源氏物語」本体を読んだ人がより理解を深めるため、もしくはこれから読む人が予備知識を得るため、のものだ。

②『NHK「100分de名著」ブックス 紫式部 源氏物語』(2015年発行) by 三田村雅子

①を持っていることを忘れてつい買ってしまった。
第1回→第1章みたいに変更されているけど、パラパラすると内容は同じ。
やっちゃったな~と思って、じっくりチェックすると、微妙に変更されているところがいくつかある。
図に注釈が増えていたり、ちょっといまいちと思っていた文章がしっかり削られていたりする。

さらに「ブックス特別章」として、「歌で読み解く源氏物語」(30ページほど)が追加されていた。
和歌には詳しくないので、この部分が楽しめたというと、そういうわけでもないけど、ともかくも買った価値はあったわけでほっとする。
これだと、新しい方だけ取っておいて、古い方は処分してもいいか、と思いかけたが、古いほうのが字が大きくて読みやすいし、一部カラーだったりする。新しい方は今でも買えるけど、古い方はもう売っていないだろう、なんて考えて、両方保存することに決定!

③『源氏物語と紫式部(名著とその人)』 by 木村正中

おそらく中学生くらいの時に読んだのだろう、というこの本を本棚の奥から引っ張り出してきた。昭和47年の発行の古い本だけど、中身は色あせていない。

前半200ページは、源氏物語54帖のうち第1部(光源氏が栄華を極めるまで)の中の選りすぐり10帖の現代語訳。ジュニア向けだから、やさしめの言葉で書かれている部分もあるが、要約ではなく、きちんと物語を追っているので、源氏物語のエッセンスは十分楽しめる。
取り上げられているのは、桐壺、夕顔、若紫、末摘花、須磨、明石、蓬生(よもぎう)、薄雲、玉鬘、藤裏葉(ふじのうらば)。うまく話がつながるように、補足もされているし、完結な系図ものっていてわかりやすい。
字も大きめで、仮名もふってあるので、ありがたい。

後半の170ページほどは、「紫式部の伝記と作品」。字も普通サイズで、行間もぎゅっと詰まっているので、さらに内容が濃い。
1.紫式部の父
2.少女時代
3.結婚と夫の死
4.宮仕え
5.「紫式部日記
6.「源氏物語」はいつ、どうしてできたか
7.「源氏物語」のあらすじ
紫式部の生い立ちなど、最近のTV番組で初めて知ったように思っていたけど、すでにここに書いてあった!
あらすじでは、宇治10帖まで含めた全編がざっくりわかる。

④『紫式部と源氏物語の謎55』by 古川順弘

これもつい買ってしまって、20ページくらい読んだところで止まっていたけど、展覧会に行ったり、解説本をいくつか読んだり、大河ドラマを見たりで気分が盛り上がってきたところで再開したら、興味深い話が満載で、一気読み。

第1章 『源氏物語』とは―作品をめぐる謎
第2章 なぜ光源氏が主人公なのか―物語をめぐる謎
第3章 『源氏物語』はどうやって書かれたのか―成立をめぐる謎
第4章 なぜ『源氏物語』は読み継がれたのか―受容史をめぐる謎
第5章 本当に紫式部が書いたのか―作者をめぐる謎

1つ1つを順を追って解説していく本ではなく、トリビアの寄せ集め(でも、結構専門的だったりする)のような本だ。
へぇ~と思ったことをメモしておこう。

1)54巻がすべてこの順で書かれたわけではないことは、よく言われているが、「紫の上」関連が先に書かれて、後で「玉鬘」関連が書かれて間に入れられた、という説もあるらしい。

2)抜けている巻もある可能性が。明らかに話が飛びすぎているところがいくつかあるからである。
なるほど~。実は、以前「源氏物語」を読んだ時に、何人かの重要人物が、何の説明もなく唐突に表れる気がしていたのだった。たとえば、六条御息所。葵祭(だったか?)でいやな思いをさせられたり、生霊になった場面とかは生々しいけど、源氏に愛された時代もあったはず。その辺の記述が全く出てこない気がしたので、自分が読み飛ばしてしまったのかと思っていたけど、もともとなかったのだ。

3)「源氏物語」はその名のごとく、「源氏」が栄華を極める物語。
物語の中では、「藤原家」は出てこないけど、「右大臣家」「左大臣家」は「藤原家」のことを意味しているとのこと。そうすると、源氏が栄華を極めて、藤原家がやや落ち込んでいく「源氏物語」を、道長が押すというのも不思議な気がするが、これによって、道長は源氏と敵対せず、身内に引き込もうとしたのではないか、ということだ。
実際、道長の正妻も第2夫人も源氏から、ということで、つじつまは合うのだ。

4)現代語訳を初めて手掛けたのは、与謝野晶子だが、実はアーサー・ウエィリーの英訳のほうが早かった!

⑤『NHK知るを楽しむ この人この世界 源氏物語の男君たち』by 瀬戸内寂聴

2008年4月5月版。
番組を見たかどうか覚えていない(多分見ていない)けど、本は確かに一度は読んだはずなのだけど、記憶になく。
タイトルから、今年放送された「趣味どき 源氏物語の女君たち」の男性版かな?と予想したが、「趣味どき」では、各回1人にスポットを当てて紹介しているが、こちらの本では、第8回を除き、源氏の君の話もかなり多く出てくるし、全然関係ない人の話も詳しかったりする。
順に読んでいくと、あらすじもわかってくるので、それはそれでわかりやすいともいえる。

第1回 光の君の誕生-桐壺邸
第2回 藤壺との禁断の恋―恋の醍醐味は秘め事に
第3回 無二の従者惟光-その忠誠と危険
第4回 朱雀帝の悲劇-「負け犬の苦悩」
第5回 源氏と藤壺の陰謀-人間は変わる
第6回 裏切られた頭の中将-六条院の光と影
第7回 柏木の悲恋-寝とられた夫源氏
第8回 薫と匂宮の争い―浮舟出家

登場人物の内面にまで迫る解説は面白いが、時として、そんなことは書いてないでしょ、というくらい深読みしている部分もあったりする。
全文現代語訳を手掛けた方だから、文章にない部分も想像できるのだろうけど、あくまで1つの説、と思って読んだ方がいいかもしれない。

ちなみに、今年2月~3月に、MHKで放送されていたTV番組「趣味どきっ!~源氏物語の女君たち」。
テキストは買わなかったが、講師の先生のお話もわかりやすかったし、ゲストや生徒の方々のお話も楽しめたが、なんといっても、講談が最高に良かった。


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