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シアターレトロマーケットプロデュース公演「それだけでうれしい」映像演出振り返り①

2024年1月20日・21日に公演された広島市安佐南区の演劇グループ・シアターレトロマーケットのプロデュース公演「それだけでうれしい」。無事終演いたしました。
今回は「家族」がテーマのオムニバス5編です。この公演は会場である安佐南区民文化センターとの共催事業で、「プロジェクションマッピング芸術文化支援事業」の一環となっています。ということで公演の随所に映像演出を使わせていただいています。

約2時間の舞台のために制作した映像は15本以上。すべて舞台のために制作したものでほかに公開する場所もないので、しばらくnoteにて各映像を作品と共に紹介しながら制作裏話というか小話を挟んでいこうと思います。

今回はその振り返り第1回ということで、舞台全体のお話を。

ちなみに本文中のステージ写真はすべて写真・アートワーク担当の浮田茉侑さんに撮っていただきました。


そもそも舞台映像演出を始めたきっかけ

最初にシアレトからお声がけいただいたのは2019年1月か2月、当時の私は会社で映像クリエイターをしつつプライベートではVJをしていました。
ある日、前職で一緒にお仕事をしていた方から連絡をいただきました。

その方は安佐南区の演劇グループ・シアターレトロマーケットの舞台公演のポスターをデザインしたり写真を撮ったりしているそうで、私はシアレトの代表を務める方とご挨拶することになりました。
シアレトは以前より舞台にて映像を使った演出を取り入れていたことから2020年度より活動拠点の安佐南区民文化センターが行っている「プロジェクションマッピング芸術文化支援事業」に携わることになり、プロジェクションマッピングができる人を探されていたそうです。
で、たまたま私がそういう分野の仕事をしていたのでもしよかったら、と。

お仕事としてではなくサークル活動的な感じで、ということだったのですが、転職1年目でVJも始め新しいことを色々やってみたかった私は即断しました。会社員で余裕があったということも理由のひとつです。

それから4年、加入直後にコロナ禍となり十分な活動が行えない日々が続きましたがその後何度か有観客の公演を行ったり、映像演出について講座を行うことも出来たり、シアレトの演出を見た他の劇団さんからお声がけいただいたり、色々なことがあっての2023年度本公演となりました。

舞台に映像が入るということ

映像演出について、毎回さまざまなご意見をいただきます。
映像を使うことで照明だけでは表現しきれない繊細な情景や特殊効果を加えることができたり、新鮮さを感じられるようになったり。

一方で、使い方に気をつけないと情景を説明しすぎてしまうこともあります。お話や場面によってはシンプルな色だけで風景を想起させる照明のみの演出が合っているものもあります。

映像を使うことが一概に良い悪いという話ではなく、演出家さんがどんな舞台にしたいかによるかなと思っています。
特殊効果をたくさん使って派手な舞台にしたいときもあれば、シンプルな役者の演技が際立つ舞台にしたいときもある。

舞台演出の方法の中に「映像」という手ががあるんだと知っているかどうかが一番大事だと思っています。
映像という演出方法を知らずに知っている方法の中で試行錯誤するのか、知っていてあえて使わないという選択肢を取るのか、最終的に出来上がる舞台は同じだとしても演出に込められた意図は大きく異なってきます。

まだまだ地方の舞台ではスタンダードではない映像演出を私はなるべく色々な場面で活用してもらって、演出の幅を広げる役割を担えたらいいなと思いながら舞台演出に関わらせていただいています。
私自身も色々な演出家さんからの「これできる?」を形にしていくことで自分の技術向上に繋げられています。

今回の公演について

前回の公演

前回の公演では劇中の背景に映像を投影していました。前回はホールの舞台を逆向きに使うことでホール常設のプロジェクターを舞台背景にリア投影できたことで照明の干渉を受けにくかったためそのような演出がやりやすかったのですが、今回は本来の向きで公演を行うため基本的に映像は照明が入らないor暗めのシーンで使おうということになりました。具体的にはオープニングや各作品の転換部分、あとはカーテンコールのキャスト名表示など。

今回の公演

作品ごとにイメージが出来上がり、音楽も決まってきて、各演出も固まってきたのが12月あたり。
11月いっぱいまで私も別の仕事でいっぱいいっぱいで、稽古もあまり顔を出せなかったり舞台のことが全然できなかったので、ほとんど年末年始に一気に仕上げる形になりました。

劇中に使う素材は全体的にイラストタッチな雰囲気にしようと心がけています。写真のようにリアルだと情報量が多くなりすぎてしまうので多用はせず、今回はリアルな描写は舞台背景となる4か所に留めました。

各作品のオープニングと幕間は、音楽や作品から連想した私なりの「もうひとつのストーリー」を作ってほしいと全任せされたので好き勝手作らせていただきました。
各作品のオープニングは、各作品の印象的なモチーフを使いつつストーリーに寄りすぎない演出を心がけてみました。

映像の制作について

映像の制作ソフトは主にAdobe After Effectsを使っています。
イラストを使用する部分はCLIP STUDIO PROで描きました。
フリー素材もほんの少しだけ拝借。ほんの少しだけです。

舞台はイメージの指定がかなり細かく入るので、基本的に素材はすべて1から作ります。
今回はとくに、作中のストーリーと合わせて役者さんを撮影し背景に合成して投影するシーンや、舞台上常設ではなく特定の作品の時だけ設置される舞台装置にマッピングする演出もあったので、そういうシーンは早くから構成を練って制作しました。

映像の投影について

TouchDesignerというソフトを使って当日のオペレーションを行っています。
プロジェクションマッピングに特化したソフトといえばRezolumeやGrand VJやMadmapperなど色々あるのですがTouchDesignerは映像が得意なプログラミングソフトです。
元々VJで使っていたので操作慣れしていたこともあり、ずっとこのソフトを使っています。

こんな画面を作って操作しています。
ひとつの映像素材につきひとつのボタン、フェードやスイッチが必要な素材はそういう機能も追加して、音入りの素材は音が出るようにしてあります。

MIDIコントローラーを接続してボタンやフェーダーで操作することもできますが、私の持っているコントローラーとPCの相性が若干怪しく稀に数値が暴走することがあり、ミスできない現場では信用ならないのでマウスでの操作を行っています。

投影機材について

今回は舞台後方、上下のパネルと3か所にプロジェクター投影しました。

後方はホール備え付けの大型プロジェクター、パネルはそれぞれ一般的サイズのプロジェクターを使っています。いずれも共催である安佐南区民文化センターさんからお借りしました。いつもお世話になっています。

さて投影には今回ノートパソコンDAIVを持っていきましたが、通常ノートパソコンはHDMI差込口が1つしかありません。
そこで活躍するのがこちら。

右の正方形の機械。HDMI分配器です。
仕組みとしてはパソコンから4Kサイズの画面を送出して、この機械の中で4分割しそれぞれを別のHDMI経由でプロジェクターへ送っています。
前職を辞めてからもずっとお世話になっている知人よりお借りしました。私もそろそろ自分用に買いたいです。

ちなみに左の機械は、下2つがHDMIをLANに変換して何十メートルも離れた場所へ信号を繋ぐためのコンバーター、上に乗っているのはPCから出る音をミキサーへ繋ぐ際の機械です。このあたりはセンターさんが全部やってくれて私はあまり詳しくないので割愛。

オペ卓。手前から音響、映像、照明の3人で行いました。

ということで公演全体のお話で3000字超えてしまいました。
次回からは各作品の映像について深堀り予定です。
ぼちぼち記事書いていきます。

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