【第8回】LGBT 理解増進法成立は暴挙 犯罪増加などの懸念払拭されず

 6月16日の参議院本会議において、LGBT理解増進法案が可決・成立した。政府が法案成立を急いだ背景は何か。また、法案成立によって社会にどのような影響があるだろうか。

 今回の法案成立はあまりに強引だったと言わざるを得ない。自民党の公約を見ると、2016年参院選から2021年衆院選まで、公約ではLGBT法を議員立法で成立させるとしている。しかし、直近の2022年参院選の公約にはその記述がない。また政策集においては、2016年参院選から2021年衆院選まで公約とほぼ同じ記述があり、2022年参院選では「法制度等の見直し」と議員立法という文言は消えている。

 それにもかかわらず、茂木敏充自民党幹事長は12日の記者会見で「わが党の党議拘束は極めて重い。最終の党総務会でも党議拘束に関する意見はなく、全会一致で了承された」と述べ、党議拘束はかかるとして、法案反対の保守派を牽制した。

 今回の法案のように内心に関わることは、党議拘束はかけるべきではないし、まして直近の国政選挙で公約に掲げていなかったことをするのだから、自民党執行部の党議拘束をかけるという行為は、尚更おかしいことは明らかだ。

 こうしてみると、岸田首相が是が非でもやりたかったということが推察できる。その理由の1つとして、今年2月の元首相秘書官の性的少数者への差別的な発言が影響したと考えられる。また、法案成立を急いだ理由としては、米国や公明党への配慮が指摘されている。

 とりわけ、今回のLGBT法案をめぐっては、ラーム・エマニュエル駐日米国大使が大活躍した。大使はツイッターで、LGBTの権利擁護を繰り返し訴え、広島G7(先進7カ国)サミットの直前には、15カ国の公館代表らとともに「日本には希望の兆しが見えている。誰1人取り残さない社会を実現するときだ」などと発信した。

 この大使の行動は、明らかな日本に対する内政干渉であり、看過できない。大使の発信は、日本はLGBT理解増進の遅れた国と語ったも同然で、まさに上から目線としか言いようがない。

 世界のLGBTの法規制について、衆議院法制局によると、G7の中で性自認に特化した法律はないという。「G7でLGBTの権利保障がないのは日本だけ」という主張をしていた左派系のマスコミがあったが、これはミスリードだ。つまり、今回の法案成立で日本はG7で初めての性自認に特化した法律を持つ国ということになる。

 法案成立で、やはり懸念されるのは、犯罪の増加だろう。折しも、三重県の入浴施設にある女性用浴場に女装した男が侵入して逮捕された事件があった。報道によれば、「私は女だ」と容疑を否認しているという。海外では、逮捕を差別として訴える事例もあるという。LGBT法の成立によって、こうした事例が増えそうだ。

 こうした懸念が払拭されていないのに、法案を成立させたことは、ここ数年での一番の暴挙といえる。

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