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エッセイ ②プラハの春


カレル橋(プラハ城)

 プラハの街に惹かれたのは、春江一也著『プラハの春』を読んでからだ。第二次世界大戦を舞台にし、日本人とドイツ人が恋に落ちる物語である。
 背景は戦争という暗雲が立ち込めているが、私はそれを飛び越えプラハは恋人同士が似合うロマンチックな街として憧れた。そこを初めて訪れたのが20年前。
 プラハ城から広がるパノラマは息を飲む。街を貫くのはスメタナで有名なヴォルダ川。見渡す限りの街は、赤みがかったレンガ色に統一され、旅人の目をうっとりとさせる。
 プラハ城を抜けると18体の像が橋の両側に立ち並ぶカレル橋に出る。男女が手を繋き楽しいそうに行き交う。一人で歩いているのが恥ずかしい。
 縁あって15年後再び訪ねた。日本を発つ前プラハで撮影された映画「ハイドリヒを撃て」を観た。第二次世界大戦中ナチス占領下のチェコで、副総督であったハイドリヒが暗殺されたのだ。怒ったヒトラーは容疑者を建物の地下で残虐な水責めをする。7人を殺害するのにドイツ軍800人で包囲した。
 なぜヒトラーはこれほどまでにむきになったのか。謎はすぐ解けた。当時のハイドリヒの写真だ。彼は過ぎるほどの美男であった。噂が広がった。ヒトラーと密かな仲であったという。
 まさかプラハにて、こんな恋もあったのかと想像すらしていなかった。


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