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母親の認知症生前対策(後編)

2022年夏、自分の母親(81歳)に対処した「認知症生前対策」に関し、前編中編に引き続き、後編(最終回)をお届けします。
家族信託の導入を検討し親子間で実際に締結するまでの経緯を記載しました。同じ悩みを持たれている誰かのちょっとした参考になれば幸いです。

高齢の親を持つミドル・シニア世代の方、
親元から遠く離れた地域や海外で暮らしておられる方、
家族信託を始める準備をされていたり、逆に躊躇されている方、
年齢に関係なく前倒しで親孝行したい方に、是非お読みいただきたいです。

最終的結論は、受託者である私は母親のこれからの人生の面倒を責任と覚悟を持って看るということを、公正証書にして国の機関(公証役場)に自ら届けました。親孝行の枠を超えて絆が深まり、安心感でつながった母親の笑顔が特に印象的に感じました。



親の抱えている本当の悩み


家族信託の話をする前に大事なことは、認知症に伴う財産凍結リスクが存在するということで、その生前対策の必要性を知ってもらう必要があります。親が心の奥で抱えている悩みを、少しずつ減らしていくことを目的として考えていくと、認知症になる前であればその最たる戦術で有効なものが「家族信託」。

親の抱えた悩みを減らしてあげれたことで自然と笑みになるんだと体現して分かりました。

家族信託は進化しており、低料金で利用ができユーザーの利便性が高いものとして、専用アプリで煩雑なことが全て解決する「スマート家族信託」も知っておいてもらえたら嬉しいです。


公証人と母親


8月某日、お盆明けの平日に東京から司法書士のT先生、母親・私の3人で福井の公証人を尋ねました。

これまで確認してきた信託契約を「信託契約公正証書」にするためです。初めての公証役場、初めての面談で緊張している母親がいました。

公証人はその状況を察知したのか、ゆっくりとした口調で笑顔で話しかけてくれたのが印象的でした。

公証人:「〇〇さん、ではお名前をフルネームでおっしゃってください。生年月日とご住所も続けて教えてください、お願いします」。

母親:「〇〇〇〇」、昭和〇年〇月〇日生まれ、住所は福井県〜・・・・。

公証人:「はい、ありがとうございます。お母さん、では今回の信託契約に関して質問します」「今回は〇〇を息子さんに・・・・・。」〜

母親:「ちゃんと説明を受けて理解しています」(以下、割愛)


公証人は冒頭、認知能力が衰えていないことを確かめた上で、信託契約を結ぶ事実や、その中身も理解できているかを図解入りの1枚の資料を用意した上で丁寧に説明をしてくれました。

後で司法書士の先生が言ってましたが、最初で回答につまずくと信託契約の締結は難しという判断となるようです。

公正証書の読み合わせをします。最初から最後まで読み上げて確認するかどうかは、委託者の状況次第のようです。


公正証書にする理由


公証役場では、公務員である公証人(元裁判官・検察官等)が証書の作成時に本人確認、意思確認を行いますので、後々の紛争防止、契約についての法的な安定性が確保されます。
法的安全性が担保されることで、金融機関での信託口口座開設もよりスムーズになります。

実は公正証書にすることが成立要件となっていません。
では何故、作成手数料を払ってまで私は公正証書にしたのか?

数年後、もしくは万が一の家族内トラブル(争続)を防止するためです。

母親の考えとして、「兄弟は仲良く力を合わせて助け合うことが大事。自分の介護や病気が原因で兄弟が仲違い(なかたがい)をすることは避けたい」という考えが有りました。

もう1つの理由は、受託者である私の居住地内に、家族信託の信託口口座を開設していただける金融機関が無かったため、個人口座を1つ作りそれを家族信託専用の信託口口座とみなして保管することにしたので、尚更、公正証書にして弟にも共有しておく必要がありました。

家族信託の場合、9割以上の人が公証役場で公正証書にしているようです。


今回の学び


家族信託に関し、親子で理解できたこと


・判断能力を喪失したら何が出来なくなるかが整理・言語化された。

・財産凍結になったら困ることが具体例を持って親子で共有できた。

・生前対策は認知症だけに限定されたものではないこと。

・信託財産に対しては遺産分割の意思(母親の想い)を入れる事ができた。


受託者である私が学んだこと(あくまでも個人的見解)


・家族には都度、経緯や締結した書面などを共有しておくこと。

・公正証書にすることで争族対策にもなることが分かった。

・受託者の居住地次第では信託口名義での口座開設ができない。

・家族信託相談案件が多い事務所で実績を積んだ司法書士に案件が集まる。 
 
・地方で組成する場合は、出張費用は掛かっても首都圏で取扱い実績の豊富な司法書士を呼ぶ方が安心感がある。(実績豊富な士業が見つからない場合)


最後に


公証役場で別れ際の話。

公証人:「地方はお年寄りが多いけど、家族信託の利用者が身近に居ないから知らないだけ。皆にもっと利用してもらいたいね」

私:「福井でも自分が社会課題の解決に向けて生前対策支援、頑張るので高齢者を笑顔にしていきましょう!」と。

親の抱えた悩みを減らしてあげれたことで自然と笑みになるんだと体現したので、これから公証役場く来ることが増えそうです。


■フオミタス千葉オフィス

■フオミタス福井オフィス

ご自愛ください。

ではまた次回。




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