マガジン

  • 『四書集注』訳注

    • 11本

    当会活動の成果物として、朱熹『四書章句集注』の訳注を公開しております。

最近の記事

泰伯第八

泰伯第八 一章 泰伯第八 凡そ二十一章。 【泰伯篇第一章】 (本文)子曰く「泰伯は、其れ至徳と謂ふべきのみ。三たび天下を以て譲り、民得て称する無し」と。 〈訳〉 孔子が言った。「泰伯は至徳と言える。三度天下を譲り、民はそのことを称賛のしようがなかった。」 (注) 泰伯は、周の大王の長子。至徳は、徳の至極にして、以て復た加ふる無き者を謂ふなり。三たび譲るは、固遜を謂ふなり。得て称する無しは、其の遜すること、隠微にして、迹の見るべき無きなり。蓋し大王の三子は、長は泰伯、次いで

    • 述而第七

      述而第七 1章 此の篇多く聖人己を謙(へりくだ)りて人に誨(おしへ)るの辭及びその容貌行事の実を記す。 凡そ三十七章。 子曰く「述べて作らず、信じて古を好むこと、窃かに我が老彭に比す。」 好は、去声。○述とは、旧を伝えるのみ。作とは、則ち創始なり。故に作るは聖人に非ざれば能くせず、而して述ぶるは則ち賢者も及ぶべし。窃かに比すとは、之を尊ぶの辭。我がは、之に親しむの辭。老彭とは、商の賢大夫、大戴礼(だたいれい)(注1)に見ゆ、蓋し古を信じて伝述する者なり。孔子詩書を刪し、礼

      • 雍也第六

        凡そ二十八章。篇内第十四章以前(十四章を含む)、大意前篇と同じ。 【雍也篇第一章】 子曰く「雍や南面せしむべし」と。 南面は、人君聴治の位。言ふこころは仲弓寛洪簡重(じゅう)にして、人君の度有り。 仲弓子桑伯子を問ふ。子曰く「可なり簡」と。 子桑伯子は、魯の人。胡氏以為へらく疑ふらくは即ち荘周称する所の子桑戸なる者是なり(注1)。仲弓夫子己に南面を許すを以て、故に伯子の如何を問ふ。可とは、僅かに可にして未だ尽くさざる所有るの辞。簡とは煩(はん)ならざるの謂。 仲弓曰く「

        • 公冶長第五

          此の篇、皆な古今の人物の賢否得失を論ず。蓋し格物窮理の一端なり。凡そ二十七章。胡氏以為へらく、疑ふらくは子貢の徒記す所多しと云ふ。 公冶長第五1章子、公冶長を謂ふ、「妻あはす可きなり。縲絏の中に在りと雖も、其の罪に非ざるなり」と。其の子を以て之に妻あはす。 妻は、去声。下同じ。縲は、力追の反。絏は、息列の反。○公冶長は、孔子の弟子。妻は、之が妻と為すなり。縲は、黒索なり。絏は、攣なり。古者、獄中に黒索を以て罪人を拘攣す。長の人と為り、考ふる所無し。而して夫子其の妻あわす可

        泰伯第八

        マガジン

        • 『四書集注』訳注
          11本

        記事

          里仁第四

          里仁第四 01章 子曰く、「里は仁なるを美と為す。択びて仁に処らざれば、焉んぞ知なることを得ん」と。 処は、上声。焉は、於虔の反。知は、去声。〇里に仁厚の俗有るを美と為す。里を択びて是(ここ)れに居らざれば、則ち其の是非の本心を失ひて、知と為すことを得ず。 里仁二子曰く、「不仁者は以て久しく約に処る可からず。以て長く楽に処る可からず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利とす」と。 楽は、音洛。知は、去声。○約は、窮困なり。利は、猶ほ貪のごとし。蓋し深く知り篤く好みて、必ず之を

          里仁第四

          八佾第三

          凡そ二十六章。前篇の末二章に通じて、皆礼楽の事を論ず。 ■八佾第三01章 孔子季氏を謂へらく、「八佾庭に舞はす。是をも忍ぶべくんば、孰れをか忍ぶべからざらん」 と。 佾、音は逸。 ○季氏は魯の大夫季孫氏なり。佾は舞列なり。天子は八、諸侯は六、大夫は四、士は二。毎佾人数、其の佾の数の如し。或ひと曰く、「毎佾八人」と。未だ孰れか是なるを詳にせず。季氏大夫を以て僭して天子の楽を用ゆ。孔子言ふこころは、其れ此の事をも尚ほ忍びて之を為せば、則ち何事をか忍びて為すべからざらん。或ひ

          八佾第三

          為政第二

          ■為政第二 01章 子曰く、「政を為すに徳を以てすれば、譬へば北辰其の所に居りて衆星之に共ふが如し」と。 共は、音は拱、亦た拱に作る。〇政の言為る正なり、人の不正を正す所以なり。徳の言為る得なり、心に得て失はざるなり。北辰は、北極、天の枢なり。其の所に居るは、動かざるなり。共は、向なり。言ふこころは衆星は四面旋繞して之に帰向す。政を為すに徳を以てすれば、則ち無為にして天下之に帰す。其の象此くの如し。〇程子曰く、「政を為すに徳を以てして、然る後無為なり」と。范氏(注1)曰く、

          為政第二

          学而第一

          ■学而第一 01章 此れ書の首篇為り。故に記す所、本を務むるの意多し。乃ち道に入るの門、徳を積むの基にして、学者の先務なり。凡そ十六章。 子曰く、学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。 説は、悦と同じ。〇学の言為る効なり。人の性は皆善にして、覚に先後有り。後覚者は必ず先覚の為す所に効へば、乃ち以て善を明らかにして、其の初に復るべし。習は、鳥の数々飛ぶなり。之を学びて已まざるは、鳥の数々飛ぶが如し。説は、喜ぶの意なり。既に学びて、又時時に之を習へば、則ち学ぶ所の者熟して、中

          学而第一

          ■論語・孟子を読むの法

          清?宋大字本に拠り補ふ。 程子曰く、「学者は当に論語・孟子を以て本と為すべし。論語・孟子既に治まれば、則ち六経は治めずして明らかなるべし。書を読む者は、当に聖人の経を作す所以の意と、聖人の心を用ふる所以と、聖人の聖人に至る所以にして、吾の未だ至らざる所以の者、未だ得ざる所以の者を観るべし。句句之を求め、昼誦して之を味はひ、中夜之を思ひ、其の心を平らかにし、其の気を易くし、其の疑はしきを闕けば、則ち聖人の意見るべし」と。 程子曰く、「凡そ文字を看るに、先づ其の文義を暁るを須ち

          ■論語・孟子を読むの法

          ■論語序説

          ■論語序説 史記世家に曰く、「孔子は名は丘、字は仲尼。其の先は宋人なり。父は叔梁?、母は顔氏。魯の襄公二十二年、庚戌の歳、十一月庚子を以て、孔子を魯の昌平郷陬邑に生む。児たりしとき嬉戯して、常に俎豆を陳ね、礼容を設く。長ずるに及びて、委吏と為り、料量平なり。 委吏は、本は季氏史に作る。索隠(注01)に云ふ、「一本は委吏に作る、孟子と合す」と。今之に従ふ。 司職吏となりて、畜蕃息す。 職は、周礼牛人に見ゆ。読みて?と為し、義は杙と同じ。蓋し犠牲を繁養するの所。此の官は孟子

          ■論語序説

          大学章句

          大学章句序 大学の書は、古の大学の人に教ふる所以の法なり。蓋し天の生民を降すよりして、則ち既に之に与ふるに仁義礼智の性を以てせざることなし。然れども其の気質の稟は或は斉しきこと能はず。一たび聡明叡智にして能く其の性を尽くす者の其の間に出づること有れば、則ち天は必ず之に命じて以て億兆の君師と為し、之をして治めて之を教へ、以て其の性に復らしむ。此れ伏羲、神農、黄帝、堯舜の天を継ぎ極を立つる所以にして、司徒の職、典楽の官の由りて設くる所なり。  三代の隆なること、其の法寖く備はり

          大学章句