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お気に入りの本について語る #2

本との出会いは、運命ともいえる。本屋さんや図書館に行くと、膨大な数の本に驚く。自分が読んだ本、この先読む本は、この膨大な本の宇宙の中の、ほんの一部なんだなって思う。この中の、まだわたしが知らないところで、とっても面白い本、好きになる本があるんじゃないかと思うと、わくわくすると同時に、読むことなく終わってしまう本がどれだけ多いんだろうと、不安にもなる。

今回語りたいお気に入りの本との出会いは、まさに運命だと思っている。

アリスン・アトリー作・小野章訳「時の旅人」(評論社)

舞台はイギリス。主人公のペネロピーは、療養のため母の実家であるサッカーズ農園で過ごすことになる。古くから続く農園で、ペネロピーはある日突然16世紀に迷い込み、スコットランド女王メアリー・スチュアートを巡る王位継承争いに関わっていくことになる。

わたしがこの本の存在を知ったのは、中学校の時の国語の教科書。授業中、たまたま教科書をぱらぱらっとめくっていたら、この本が紹介されているページを見つけた。その紹介文に惹かれて、どうしても読んでみたくなって図書館で探した。読んだ瞬間、「ああ、この本に出会えてよかった」って思った。今でも本当に大好きな本。

体が弱くて大人しく、夢見がちな少女であるペネロピーは、わたしの小説の主人公の好みにまさにあてはまる。そして、わたしはこういうタイムスリップのお話も好き。

ペネロピーの生きる現代と、迷い込んでしまった16世紀、それぞれの農園での暮らしが丁寧に描かれている。何度も読んで頭の中に小説の世界を思い描き、自分がここで暮らしたら?って想像して楽しんでいる。どちらの世界でも、ペネロピーを温かく迎え、優しく愛してくれる人達がいて、読んでいて心地よい。

物語の中心である、メアリー・スチュアートに関しては、16世紀の農園の人たちはみんな彼女を愛し、逃亡を手伝おうとするんだけど、歴史の中で彼女は処刑されてしまう。悲しい運命を知りながら、ペネロピーは農園の人たちと過ごす。読んでいて、すごく切ないんだけど、一生懸命生き、愛するメアリー・スチュアートのために奔走する登場人物たちが愛おしい。

初めて読んだときは、メアリー・スチュアートに関する歴史は知らなかった。それから世界史の授業でこの時代の歴史を勉強し、メアリー・スチュアートについて知った時には胸が苦しくなった。もちろんお話自体は物語だから、本当のことではないだろうけど、メアリー・スチュアートに限らず、淡々と流れで学ぶ歴史の一つ一つの場面では、必ず多くの人たちがいて、みんなそれぞれいろんな思いを抱えながら一生懸命生きていたんだよなって思った。

小学生、中学生の頃にもたくさん本を読んでいたけど、その頃は図書館で読むことが多くて、同じ本をその後も読むことはあまりなかった。この「時の旅人」は、わたしにとって特別な本で、高校生くらいの時にも思い出して読みたくなって、また図書館で探した。それから大学生になってブックオフにいる時に、ふとこの本のことを思い出して、探してみたら売っているのを見つけて買った。あー懐かしいって思いながら読んでいたんだけど、こんな感じだったかな?ってちょっと違和感もあり、ネットで調べたら訳している人が違うことを知り、中学生の頃読んだ時の小野章さんが訳した方を通販で購入した。

今この記事を書きながら、久しぶりにこの切なくて温かい世界に浸りたくなってきたから、また読んでみようかな。悲しいのをわかっているから、再びこの世界に入るのはちょっと勇気がいるんだけど、それでも何度も読みたい大切な本。


読んでくださって、ありがとうございました。

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