買い付けの旅、私のスタイル

私も夫も旅が大好きです、人生のライフワークと言いましょうか。悪阻が治り、むくむくと旅に出たい欲が湧いてきていますが、今は仕事とは天秤にかけられないほど大切で幸せな時間だと思い、今年の海外仕入れ業務は夫一人に任せ、私はマタニティライフを楽しむことにしました。

石の仕入れをするのには目利きであること以外にも必要な要素が沢山あります。言語、交渉スキル、コミュニケーション能力の他にも、基本的なことですが仕入れの際にベストバフォーマンスが発揮できるように自己管理をしたり、お金の管理をしたり、今後のために人脈作りをしたり。

でも実は私自身はこれら全ては持ち合わせていません。会社員の時からそうでした。気づいたら時間オーバー、予算オーバー。新しいものを見つけてくる嗅覚だけは鋭いのですが、どちらかというとやっぱりアーティスト気質というか、集中してアドレナリンが出ている時に冷静にセルフマネージメントするのが苦手なのです。

宝石の価格交渉は値段を釣り上げられてしまわないようにポーカーフェイスで臨むものですが、私の場合魅力的な石があるとつい目がキラキラして "欲しいオーラ" が出てしまう。努力はしていますが心理戦の交渉には全く不向きなんです 笑。

そして今挙げた全てを持ち合わせているのが、他の誰でもなく夫、ショウコハンなのです。結婚してからというもの殆どの買い付けに同行しているので、仕入れノウハウもすっかり身についてきました。海外で運転できることもそれまでの私にはなかった大きなメリット。旅慣れているので航空券や現地の移動手段、宿泊の手配、スケジュール管理なども全て任せています。

初めて仕事をする相手なら交渉は最初からうまくいくわけではありません。それでも”不服だった、失敗だった” で終わらせずに Give & Take でお互いにメリットがあるように今後に繋げていく力があるのも夫です。仕事面でも最高のパートナーであることは言うまでもなく、「仕入れに関してあなたの一番の強みはなんですか?」 と聞かれたら、”自分の審美眼” と答えつつも、心の中では ”夫です”  と思っています。まさに夫婦二人三脚ですね。

妻をよく理解している夫はマーケットでお互い単独で石を見て回ると、私好みの石を見つけては「イイもの見つけたよ!」とウキウキしてやってきます。面傷のチェックなどは私よりも厳しく、最終チェックと交渉をするのは彼の役目。私と違って男性だしビジネスマンなので、プロフィットを考えたり、交渉することで見えてくるマーケットの本質や人間の心理を見るのが楽しいようです。なので不安な要素も全くなく、今回初めて一人で仕入れをお願いする事にしました。

さて、”買い付けの旅” という事で、なんとなく今回はスリランカの写真を載せました。note を始める前に行ったきりで公開していなかった写真も多かったので。これは地下に穴を掘って掘削していく昔ながらの方法で、夫が中に入らせてもらった時のもの。神聖な場所で女人禁制。中に人がいる時に崩れてしまうこともあるまさに危険と隣合わせの現場。それでも皆浪漫を抱いて働いていました。

ジュエリーショップでゼロが何桁にもなっているサファイアがこんな命がけの作業をしながら採掘されているって、煌びやかなジュエリーからは想像ができないですよね。それをただ聞くのとこの目で見るのとでは大違いで、感謝して宝石を大切に扱わずにはいられなくなるのです。その土地の人たちがどんな暮らしをしているのかも肌で感じてこそ、MOEMI SUGIMURAの作品は出来上がっていきます。

私が丸太を渡っている図、これは大規模な採掘場にいくまでの道のりです。ここでは大きな機材を使って大々的に掘っていきますが、すぐ近くには掘っ建て小屋のようなものがあって、鉱夫は寝泊りしながらやっています。

ひと段落したら近くの椰子の木に登って採れたてのココナッツをご馳走してくれたり、鉱夫達と一緒に休憩したり。お茶もココナッツを器に、一緒に食べるおやつもココナッツ菓子。ちなみによく宝石が加熱処理されるというのを聞いた事のある方多いと思いますが、昔はココナッツの殻を使って低温でやっていたようです。偶然にも買い付け中に ”まさに加熱中の人” を見つけて、いまだリアルにやっている人がいるんだ!と、実際の現場を見られた事に感激したのを覚えています。

下の写真はスリランカ出身の建築家ジェフリーバワの建築。この時は数カ所 ”バワ廻り”もしていました。現地のアーティストの作品というのはとても刺激をもらえます。その土地に生まれたからこそ創れるものがあって、作品だけを美術館や書籍で見るのとは違って、”なるほどこういう環境だからこそこんな感性が生まれるんだな” って肌で感じ取る事ができる。そんな経験が私自身の世界観へと繋がっていきます。 

そんなこんなでもう来週に迫った夫の出張の準備や打ち合わせを進めながら、しばらく旅に出かけられなくなった自分の "旅のスタイル”についてふと考え、ここに書いてみる事にしました。

ここ数年は横浜に住んでいるので旅の始まりはもっぱら羽田から。チェックインはオンラインで済ませるので、荷物をドロップしたらANA便であれば優先レーンを通り、指紋認証でパスポートコントロールは待ち時間がゼロ。定番の化粧品を免税店で買ってそのまま上のラウンジへ行く。ここまで空港に着いてから最短10分の時もあります。今はこれが定番の流れです。

旅慣れていると思われがちですが、乗り物酔いの常連で、機内車内ではあまり眠れないので1日無駄にしてもなるべく昼便。いざ仕事をする時に疲れてしまっていてはダメなので、体調が万全になるように心がけています。

独立してからは同じように海外で仕入れする知り合いが増え、買い付けの旅にもやっぱりそれぞれのスタイルがあるなあと感じるようになりました。旅先で何を得たいかは皆違うし、移動費や宿泊のコストを抑えるというのは利益を大きくする為には当然の事なんですが、私は自分が周りに与えられる価値に最大限投資するのも大切な事の一つだと思っているタイプです。

飛行機にしても宿にしても、ひとつひとつの選択と経験がその後の自分を創っていく。バッグパッカーのような旅もビジネスクラスのフライトも、バランス良くどちらも経験があって今の価値観とブランドの世界観が創られているわけですから。

会社員時代の話をすると毎度驚かれるのですが、今でも尊敬している初代ボスは利益をしっかり社員に還元しようという考えの人でした。本人がホテルが好きというのもありますが、出張先に五つ星ホテルがあればそこに滞在します。パリならルグラン、LAならフォーシーズンやビバリーウィルシャ、韓国はグランドハイアット、香港ならペニンシュラ、といった具合です。

浅はかな考えの人に話すと「ちょーバブリーだね、待遇良くてうらやましー」 で終わってしまうのであまり話しませんが、単に高級志向なのではなく、グローバルなトップレベルのサービスを実際に体験してお客様への接客に還元してほしい、良いものを見て仕事のアイディアに活かして欲しいというのが真の目的でした。

おかげで私は実務的なノウハウよりももっと大切な "良いものを見る訓練と質の良い経験を重ねる事は、確実に自分の目利きに影響する" というバイヤーとしての基礎をここで鍛えてもらうことが出来ました。これがなかったら今の自分はありません。だから今でも意識して続けています。

そして "石を仕入れる” だけでなく、デザイナーとしてそれ以上の何かを吸収できるようにめいいっぱいその場所を感じること。これが私の旅のスタイルです。 インスピレーションを得るのはもちろん、ただ都会から離れて心身共にリフレッシュしたいだけの時もあるし、その国の情勢を感じて学ぶこともある。日本にいる時とは違うセンサーにスイッチが入ります。

SNSで旅の速報を発信するのはここ数年の流行で、お客様は楽しみにしてくださっているのですが、そのエンターテイメント性を追いすぎて、携帯ばかり見ている状況は長い目で見ると自分を枯らせてしまうな、インスタントにではなくもっと丁寧に伝えていく事が自分には合っているな、と感じるようになりました。現地でしか味わえない空気感、そこでしか出会えない人たちと時間を割くのも大切な事です。これからも変わらず一番自分に必要なのは、良い石を選べる感性をアップデートし続ける事ですから。

仕事以外でも沢山旅をしてきた中で、もちろんLCCやローカルな宿も利用します。鉱山などの辺鄙な場所へ行く時は必然的に条件は悪くなりますから、何時間もガタガタ道に揺られることもあるし、片腕を全部をダニに噛まれたホテルもあったし、ガイドに襲われた事もある。そんなハプニング続出の予測不可能な旅はワクワクして大好きです。そういう旅から得られる感覚や発見は決してファイブスターホテルにはないものです。

沢山の旅の経験は幅広い視野を持たせてくれて、偏らない旅をしてきた事で人脈の幅も広がりました。自由な旅人達とも同じ感覚で話せるし、60代、70代のビジネスパーソンと時事問題だ経済だという話しになっても、外国人と世界情勢の話になっても、今までの経験が何かしら頭の引き出しに入っていて、投げられた球を返せるようになりました。

30代になってこうして年齢や職業に関係なく様々な人と対等に話せるようになったのは、”自分の旅のスタイル” の大きな財産です。

先日展示会の後に嬉しいメッセージを送ってくださった方がいらっしゃいました。「他のバイヤーさんやジュエリーブランドと一線を画していることは、石のチョイスを見れば歴然です」と。これまでの考えと経験があってこそ聞けた言葉なのかな。だからこれからも自分自身のアップデートを止めないように、沢山旅をしたいと思います。(今は休憩中ですが!)

その前に、ひとまず《ショウコハン一人買い付けの旅》が始まります。彼は張り切っております。6月、7月と買い付けが続きます。皆さんも是非SELSHAのインスタグラムから見守ってあげてください!

そして、2019/7/3(水)〜9(火) まで、大阪の阪急うめだ本店、一階プロモーションスペースにて MOEMI SUGIMURA 初となる関西でのポップアップショップを開催いたします!セミオーダーもお受けできます。初日と週末は私も店頭に立つ予定ですので、是非関西方面の方遊びにいらしてください!

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MOEMI SUGIMURA

Jewellery Desiner / Gem buyer 宝石を巡る旅が好き。そこにしかない経験とローカルな人たちとの出会いを大切に。 www.moemisugimura.shop

出逢いを求めて

2018年夏以降の海外買い付けの記録です。
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