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クレイジー・リッチ・センセーション | mofi ニュース

アジア系キャストとスタッフが大集合した、珍しい映画が北米を席巻中。これはハリウッドに訪れた新風なのか? 同時に、#metooには逆風が逆巻く。夏も終わりかけのニュースをピックアップ。(mofi 218号 2018/08/20)

【興収:8月第3週】アジア人主演・監督の話題作『Crazy Rich Asians(邦題:クレイジー・リッチ!)』5日間で$34Mの快挙

週末は$25.2Mで、水曜日からの合計は$34Mで初登場1位。前週の首位だった巨大サメをめぐるアクション映画『The Meg』を抜いた。本作はアジア系アメリカ人やアジア文化に根付いたロマンティック・コメディで、近年の興行データでは比較可能な例がないことに注目が集まっている。黒人女性4人の仲良し珍道中を描く『Girls Trip』や、ベストセラー小説の映画化作品『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』との類似点はあるが、『Crazy〜』は主要都市部の有色人種を中心に客層が集中している点で特殊。しばらくはヒットの背景を分析すべく、そこここで議論が展開されることになるだろう。(O)


【#metoo】ケビン・スペイシー主演映画、初週公開劇場たったの10館で$126の売り上げ

セクハラ問題で事実上の業界追放の憂き目に遭っているスター俳優、ケビン・スペイシー。そんな彼の共演作『Billionaire Boys Club』の製作を手がけたVertical Entertainmentは6月、彼にまつわる問題が勃発する2年以上も前に撮影された同作を「共演陣とスタッフの努力に配慮」して公開することを発表し、この週末、実際に上映開始した。しかし7月にはすでにストリーミングで視聴可能にしていた上に、公開館数も10館のみという弱気ぶり。その結果も...日本円にして1万円弱という、興行と呼べるかどうかも戸惑う数字。いろいろな意味で世知辛い。(O)


【#metoo】A・アルジェント、金で自身のセクハラ糾弾案件を隠蔽? ワインスタイン告発女性のひとり

ケビン・スペイシーの一件が話題になったと思ったら...こちらは仰天のブーメラン的報道。たった数時間前の米時間の日曜午後にすっぱ抜かれたニュースで、NYTが初出しした。ハーヴェイ・ワインスタインによる長年のセクハラおよび性暴力強要を告発した女優のひとり、アジア・アルジェント本人が、当時17歳だった少年に対して行ったというセクハラ案件に対し、手切れ金を支払うことで隠蔽を行った、というもの。#metooの潮流が消し飛ぶような話ではないだろうが、確実に波紋と反発を呼び込む案件になるはず。米メディアの公平性を証明するような案件といえば、そうとも言えるわけだが...。しかし、こんな報道の応酬には陰謀が渦巻いていると思ってしまうのは、ドラマの見過ぎだろうか。(O)


【ビジネス】今夏の映画興行で学ぶべきレッスン「みんなやっぱり映画館が好き!」

落ち込む総観客動員数をチケット価格上昇でごまかし続けているアメリカの映画興行ビジネスだが、今年は大小さまざまな規模の劇場作品が大活躍。あからさまに「映画館向け」な大作映画がひしめく一方で、こぶりなインディ映画たちが数字を稼いでいる現状は、業界に少なからず希望をもたらしている。記事の著者は、こう言う:「映画館が、映画を映画たらしめる。大きな作品も、小さな物語も、スクリーンへと大きく映し出すのが映画館という場所。そんな場所へ足を運ぶことへの価値は、まだまだ失われない」。良い主張だと思う。(O)


【ビジネス】老舗インディ劇場チェーン「Landmark Theatres」は誰の手に?有力候補はアマゾンというウワサ

2011年にも売りに出された同チェーンは当時、買い手がつかなかった。しかし激変する昨今のビジネスでは、新たなバイヤー候補がごろごろしているそう。もっとも有力と言われる買い手は、アマゾン。同社の「プライム」のストリーミング・サービスに先立って劇場公開を行う「インディ映画スタジオの新星」が、劇場を持つとしたら? ちなみに、そもそもアメリカでは「配給会社が映画館を経営してはいけない」という取り決めが、40年代に定められている。この条件そのものが司法省によって取り払われる可能性も、実はあるらしい。業界はいよいよ変わり始めている。(O)


【ビジネス】オーサムネスTV、ヴァイアコムによる買収の余波で従業員50%をレイオフ

先頃までフォックス買収を巡ってディズニーと競争していたヴァイアコムだが、このオーサムネスTVを含む買収活動はほかでも行っていた。オーサムネスTVはデジタル・コンテンツ専門の、いわゆるMCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)と呼ばれていたスタジオだったわけだが、ヴァイアコムは買収が成立した途端、大量の首切りを決行したことになる。大手がリーチを伸ばすのは勝手だが、こう人員削減が頻繁に起きるのは経済にも打撃。次はディズニー・フォックス間で同じようなことが起きるはずだ。(O)


【映画賞】J・カッツェンバーグ、アカデミー賞「人気映画」部門騒動で傍観者を決め込む

先週、米アカデミー賞が「最優秀人気映画(=ポピュラー映画部門)」を設けることを発表した一件だが...業界の重鎮であるジェフリー・カッツェンバーグはダンマリを決め込んだとの報。「私の立場で口出しできるような話題じゃない」と言っている背景はわかる一方、「あなたの現役時代の年俸、何十億円でしたっけ?」と言いたくなるような返答ではある。彼レベルの人間が口出しすると、逆に波紋を呼んで面倒なことになるだろうことは確かなのだが。(O)

著者:小原康平 / 初出:2018/08/20 第218号
有料メールマガジン「Ministry of Film - ゼロからのスタジオシステム」より

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