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人の死を見届ける

つい先日、夫のおばあちゃんが亡くなりました。
息を引き取るその瞬間を見届けられて、悲しいけれども、貴重な経験だったと思います。
その時感じた気持ちが色あせないうちに文章として残しておきたいと思い、上手く書こうとは考えずただただ書いてみます。


夜、もうすぐ寝ようとしていた時に、夫が電話をしていた。
あ、これ、病院に行くな。
話している相手も内容も分からなかったけど、なぜかピンときた。
おばあちゃんの体調があまり良くなく、最後に家族で集まる時間を作った方が良いとお医者さんから言われたらしい、と何日か前に夫から聞いていた。
いよいよか。
電話はやはりおばあちゃんのことで、病院に行くか聞かれたがもちろん行くと即答した。
心臓はどきどきしているけど、頭は冷静だった。

病院へ向かう車中、夫になんて声をかければ良いか分からなかった。
「きっと元気になるよ」 あまりにも楽観的?
「最期に会えるの、良かったね」 亡くなる前提でいいの?
そんな風にあれこれ考えて無言が続いたら、夫がポツリと
「もし何か運転の様子がおかしかったら教えて。気づいてないだけで動揺しているかもだから」
と言った。

身近な人の死は、20年以上訪れていない。
しかも、亡くなった知らせを聞くのではなく、これから自分の目で死を見届けるかもしれない。
不思議な気分。

夏休み、プール教室から帰ったら亡くなったのを聞いて和室で泣いたこと。
安置室でおばあちゃんを見て、初めて亡くなった人の顔を見て怖かったこと。
おじいちゃんのお葬式で、初めてお父さんが泣く姿を見たこと。
しばらく思い出すことの無かった記憶がぶわっと蘇った。

夫の母(義母だけど、お母さんと書くことにする)が先に着いている。
病室まで歩く間、お母さんはどんな様子かなと考えた。
きっと悲しい様子だろうな。私がお母さんと夫を支えないと。

病室に着くと、来てくれてありがとうと笑顔でお母さんが迎えてくれたので、あれ、と思った。
予想に反して、いつもみたいに穏やかで明るい様子のお母さんだった。
もう、覚悟を決めたんだな。見送るって。
そう考えたら、ぽろぽろ泣けてきてしまった。

近寄ってみると、おばあちゃんの意識はもう完全に無かった。
「おばあちゃん。」「おばあちゃん!」
夫の呼ぶ声にも、何も反応は無い。
定期的に起こる呼吸しか、おばあちゃんの生きている様子は感じられなかった。

おばあちゃんとは一度だけ、元気なうちに会ったことがある。
コロナ禍で面会ができず、ずっと会えなかったけれど、今年やっと会えた。
結婚のこと、喜んでくれたね。

あの時のおばあちゃんとは全然変わってしまって。
むくんだ手足、目は右だけ少し虚ろに開いていて、黄色くて温度が感じられない肌。
怖い。怖いけど、最期までしっかり見届けなければと思った。

それから数時間。
時折モニターの状態を見ながら、おばあちゃんの手を握ったり、足をさすったり、話をしながら過ごした。
たわいもない話をする横には、死にゆく人がいて。
これから起こることを分かっていて、それでもこの頃には穏やかな気持ちだった。

お母さんはおばあちゃんに色んなことを話しかけていた。
もう十分に頑張ったよ、苦しい思いしなくていいよ、ありがとうね、
おばあちゃんの反応はないけれど、不思議と絶対に届いてるって思えた。
見えていなくても、聞こえていなくても、私たちがこの場にいるっていうのは絶対におばあちゃんは分かってるって強く思った。

このまま朝まで続くかな、とも思ったが、本当に少しずつ少しずつ、心拍数と酸素濃度が下がってきた。
ずっと60台だった心拍が、ゆるやかに50台になってきて、そうしたら一気に30台になった。
定期的に起こっていた呼吸の間隔もずいぶん空いた。
お母さんが、人は死ぬ前に大きな呼吸を何回かするのよ、と教えてくれた。
死の合図。
少ししたら、2つ3つ、大きく酸素を取り込むような呼吸をした。
本当だ。


あ。
と思わず声が出た。
心拍が0になっていた。
これ、ドラマで見るような光景。
しばらくモニターから目が離せなかった。
お母さんがナースコールを押すところで我に帰った。

「◯◯(私)のこと、おじいちゃんとお父さんによろしく伝えてくださいね」
とお母さんが言ってくれた。
私はこの人たちと家族になれて何て幸せなんだろうと心から思って、また泣いた。

それから待合室での長い待ち時間。
真夜中だけど、不思議と眠気はやってこなかった。
その間にも、お医者さんや看護師さんはきびきび動いていて。
事務の方も葬儀社の方も、こんな時間まで働いていて。
こういった方達のおかげで社会が回るのだなと尊敬の気持ちになる。
諸々の手続きが終わって家に着く頃には、もう朝方だった。


亡くなった人のことを思い出すと、その人の周りには綺麗なお花が降るらしい。
こんな素敵な話を、よく聴くポッドキャストで知りました。
今、お花降ってるかな。
おばあちゃん、最後苦しまなかったといいな。
天国で久しぶりにおじいちゃんたちと会えるね。
編み物したり話したり、楽しい時間を過ごしてね。