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マーケット読み間違えてない…?最先端に敏感な人ほどハマりやすい落とし穴

業界に革新をもたらした〇〇!
全く新しい△△!
××業界にイノベーション!

そんな「最先端」も大切ですが、それだけでは売上があがらないのが現実です。

こんにちは!全国で日帰り温泉「おふろcafé」を展開しているONDOグループの宮本です。最近「それって、マーケットの読み間違いでは?」と思うことがあり、今日はそんな話をしたいと思います。

特に業界の中に長くいて、流行や最先端の人こそ陥りやすい落とし穴だと思います。

「イノベーター」「アーリー・アダプター」に支持されたままではビジネスが成り立たない

今日の話のベースになるは、有名なイノベーター理論です。

新しいものが市場に出た時に、

イノベーター : 新しいものを進んで採用するオタク層 2.5%

アーリーアダプター : 流行に敏感で、新しいもの好きな先駆者 13.5%

アーリーマジョリティ : 比較的慎重だけど流行に反応する人たち 34%

レイトマジョリティ : 周囲の大多数が試しているのを見てから派 34%

ラガード : 流行に鈍感な無関心層 16%

という順番に、世の中に浸透していくという流行の流れを、割合で図示したものです。

イノベーター理論の図は有名ですが、実は誤解も多いのです。

この図を「流行のグラフ」と理解して「流行らせるためにはイノベーターにアプローチしないといけない」とだけ考えている人が実は少なくありません。

この図は「イノベーターにアプローチすれば、自然とこういうグラフになる」ということを表しているのではないのです。

むしろこの図は、それぞれの客層をまたぐ時に適切なアプローチをしないと、どんなにいいサービスでも売上成長が途中で止まってしまうということを忠告してくれています。

とても大切な話をします。

新しいことを始める時に「イノベーター」「アーリーアダプター」に支持されたままだと、ビジネスとして成り立つ売上になりません。

新しいサービスを出した後は、全体の34%を占める「アーリーマジョリティ」にいかに素早く受け入れられるかを考えることが大事なのです。

そして「イノベーター」「アーリーアダプター」と次の「アーリーマジョリティ」の間には深い溝=「キャズム」があると言われています。マーケティングはこのキャズムを超えるのがとても難しい・・・。

キャズムを超えられないと利益が出ずに、結果的にマーケットからの退場を余儀なくされます。イノベーションはキャズムに落ちる可能性がとても高いので、今日はここを深堀りしたいと思います。

取材されて、話題になって浮かれている場合ではない

僕はお風呂業界の人間なので、この業界の話で言えば、革新的なコンセプトで新たな価値観を市場に投入した「BathHaus(バスハウス)」はイノベーターに支持されたものの、キャズムを超えられなかった事例の一つだと思います。

※BathHausの内情は知らないため、僕個人が観察する範囲においては、という前置きをつけさせていただきます。

バスハウスは、地下にコワーキングスペース、1階にお風呂とクラフトビールが飲めるバーが併設された新しいスタイルの銭湯でした。今でこそ「銭湯×クラフトビール」「銭湯×コワーキングスペース」というコンセプトは少なくありませんが、その走りだったと思います。

開業当時は話題を集め、多くの雑誌やメディアに取り上げられていましたが、1年足らずで運営会社である(株)chill&workは倒産。その後、店舗の運営は別会社に引き継がれたものの、2022年に閉店をしています。

さて、イノベーティブ理論の図に戻りましょう。

「イノベーティブなこと」は、イノベーターたちから称賛されるし、取材も殺到したりして、世の中に大きなインパクトを与えます。ただし、イノベーターは全体のわずか2.5%。ここから生まれる売上は小さいんです。アーリーアダプターを足しても、たった16%。

このタイミングで取材が殺到し話題になることは、大きなチャンスであると同時にピンチを引き寄せることでもあります。なぜなら、市場にアイディアを披露することになり、ライバルの市場参入を促すからです。

ライバルが増えると、「イノベーター」「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間にある深い溝=「キャズム」をいかに乗り越えるかのスピード勝負になっていきます。

イノベーションを起こして取材を勝ち取るリーダー、と、マジョリティに早く受け入れさせてキャズムを超えるリーダーのコンビが揃うと、売上の破壊力は凄まじいです。

一方で、キャズムを超えさせられるリーダーがいないと、イノベーションで一時は注目されたものの、それを見て、丁寧に模倣する店が現れた途端、一番売上があがるところを食われてしまいます。

「取材がされた」という事実は、一つのマイルストーンであってゴールではありません。

むしろ「取材された以上、1日でも早くマジョリティを掴まないといけない」と「ここからが勝負だ」と気合を入れるタイミングだと思ってます。

▶参考図書:キャズムver2

キャズムを超え、メインストリーム市場を押さえてから新たなイノベーションを起こすのが基本サイクル

さて、今あなたが提供しているサービスは、キャズムを超える前でしょうか。それともキャズムを超えた後でしょうか。

一度、全力でキャズムを超えてマジョリティを取ってから、新しいイノベーションを起こすのがビジネスの基本サイクルです。

そして、キャズムを超えるためには、マジョリティを狙って緻密に施策を打つ必要があります。

この見極めを間違うと、いつまでもキャズムを超えられず、新しいことを投入し続けているのに、売上が上がらないというイノベーション症候群に陥ります。

その上で、僕がここ最近気を付けたほうがいいなと考えているのが「サウナ」です。

サウナブーム自体は過去に何度も起こっていますが、今の流れで言えば、ようやくキャズムを超えて、メインストリーム市場に入り出したところだと見ています。

つまり、ここからが一番売上があがる稼ぎどころです。

キャズムを超えた後のマジョリティが好むのは、みんなが使っているという事実だったり、安心して使えるための清潔感や清掃・ルール決めだったりします。

ところが、流行や先端に触れている人ほど、よりイノベーティブなことをしたくなってしまうのです。せっかく稼ぎどころになったのに、そこを押さえずにまた新しいことをやりだす。

そうなると、せっかく一番売上が取れるマジョリティを他店に譲り、自店舗は売上の取れないイノベーションにばかりチャレンジし、しかも他店にアイディアを与え続ける……というなんだかよく分からないことになってしまいます。

一定の品質を保ちながら大衆化させる

では、キャズムを超えてマジョリティを取りに行くためにはどうすればいいのか。実は、ここはとても地味な活動が多いのです。

なんならユーザーや同業からはネガティブなリアクションをもらうことも多いです。

・アーリーアダプターのユーザーから「最初のころが好きだったけど、最近流行ってきて行かなくなった」と言われる
・同業からは「流行るタイミングで入った運のいい勝ち馬乗り」のように言われる

実際に、僕も何度も言われたことがあります。

そもそも、アーリーアダプターとアーリーマジョリティは相いれません。

アーリーアダプターは、一部の人しか使っていないことが心地いいわけなので「みんなが使って流行り出したら使わなくなる」のは当たり前です。

分かっちゃいても、結構寂しいものがあります。

ここまで「キャズムを超える」というかっこよさげな言葉を使ってきましたが、分かりやすく言えば「大衆化させる」ということです。

①一定の品質を保ちながら、大衆化させる
②そのためには、マジョリティを意識して販促や営業をする必要がある
③その途中で「アーリーアダプターが離れる」現象は避けられない

これはもう、覚悟を決めるしかないです。そして売上をあげましょう。

ただ、大衆化させ続けるだけだと、どんどん陳腐化していきます。そこでマジョリティを掴んだら一定期間をおいて、イノベーターやアーリーアダプターが好むものをまた追加していきます。

ビジネスはこれの繰り返しです。

「イノベーションすれば、そのうち流行って大きな売上になる」
「メディアに取材されさえすれば大きな売上になる」

というのはちょっと安直だということがお分かりいただけたでしょうか。

キャズムを超えるために注目しているキーワード

繰り返しますがイノベーションが認められて取材が殺到したところで、売上は大きく伸びません。

キャズムを超えて売上を上げるためには

・大衆が求めていることを
・大衆が求めている水準で
・大衆が見ているメディアで取材される

ことを考えなくてはいけないのです。

こうやって書くと当たり前なのですが、事業に集中している当事者こそ見落としがちなポイントなので注意が必要です。

キャズムを超えないうちに、イノベーションを連発すれば、イノベーション症候群に陥ります。

アーリーアダプターにとどまりつづけると、居心地はいいけどたいして売れない店になります。

実際に、僕が「おふろcafé」の運営やローカルの事業再建などで大衆化のために注目しているキーワードは次のようなものがあります。

・サウナイベント
・YouTube
・ローカルデザイナーコラボ
・おふろの鏡広告
・Esports
・ダンスレッスン
・撮影機材貸し出し
・アートのシェア・サブスク
・コスメのシェア・サブスク
・バスボムのサブスク
・物々交換やレンタル事業

あなたの事業やサービスに置き換えて、ぜひ考えてみてください。

本当は右手でイノベーティブ、左手でキャズム越えを1人で出来る人がいれば最強ですが、これはかなり難易度が高いことです。

キャズム越えは地味ですし、あまり表に出てこない役回りでもあります。組織内でイノベーティブとキャズム越えの役割分担をどのようにするのかも含めて、改めて考えてみてください。

流行や最先端に敏感な人ほど陥りやすい落とし穴「キャズム」のお話でした。

このnoteは、ONDOグループ社内に向けて僕が配信しているコラムを基にしています。経営者として考えていることや、旬の情報、ビジネスのノウハウなどをシェアしています。
同じハコモノ事業者さんや、サービス業の方々にとってもお役に立てるものがあるのではないかと思い、内容を少しだけ編集して公開しています。

宮本昌樹@ONDOグループ CHRO

1986年生まれ、和歌山県出身。27才の時に地域活性を目指して株式会社温泉道場入社。支配人を2年間経験したあと、店舗リニューアル開発・コーポレートブランディング、フランチャイズ事業などを経て、HR部門に注力。2019年より、ONDOグループ1人目の社長として、三重県の株式会社旅する温泉道場の社長を兼任している。

Twitter:https://twitter.com/masakimiy

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