お月さまのジャム

 雪解けのころ、川面に映るお月さまを、そっと掬い取る。新鮮な水をたくさん吸ったお月さまは、ずっしりと重たく、鼻を近づけてみると甘い香りが溢れ出しているのが分かる。周りについた水分をよくふき取って、お砂糖をたっぷりと敷いたお鍋の中にそっと置く。さらにお砂糖をふりかけ、小さな火でじっくりと煮込む。しばらくすると、お月さまの中身が溶け出してお鍋に広がりだす。辺りはあっという間に甘い匂いに包まれ、かき回すと光の湯気がたち込める。表面が沸騰してきたら、レモン汁を少し加えて、容器に移せばできあがり。冷蔵庫の中からバニラアイスを取り出して、作ったばかりのお月様のジャムを少しだけ垂らしてあげると、スプーンがアイスにするりと差し込まれ、穏やかな光のジャムが絡みついてくる。溶け切らないうちに口に入れると、冷たさのあと、温かさがやってくる。もたつくバニラアイスの甘さは、優しい酸味に包まれて胃の中へと滑り落ちる。淡い光を放つジャムの美しさに、思わずため息が漏れる。あぁこれだから、真夜中のおやつはやめられない。

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お月様の食べ方。

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コメント3件

わぁ~おいしそうです!掬うのが難しそう!ワタシでも出来るかな~
ryoichiさん、読んで下さりありがとうございます。月のおいしさは底知れないですよね ^^まさに夢の味。ryoichiさんの月のお話も楽しみにしています!
キジトラネコさん、読んで下さりありがとうございます!!「おいしそう」その言葉を待っていました!お月さまを掬うのは指南の技だと思いますが、きっと作れるはずです!
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