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日本とフィリピンが準軍事同盟?

◉日本のマスコミは、あまり熱心に報道していませんが、沿岸監視レーダーを供与したというレベルに留まらない、日本の外交の形が見える事件なんですが。朝日新聞はそこが解っているのか、準軍事同盟という言い方をしていますが。昔は反日感情が強い国と認識されていたフィリピンが、中国という共通の脅威に対して、両国が手を結ぶ意味は、大きいですね。これは、安倍晋三元総理の外交戦略を、外務大臣として支えた岸田文雄総理の、ひとつの成果だと思いますよ?

【日本とフィリピン 首脳会談 沿岸監視レーダー供与で合意】NHKニュース

フィリピンを訪れている岸田総理大臣は、日本時間の3日夜、マルコス大統領との首脳会談に臨み、中国を念頭に安全保障協力を強化するため、新たな支援の枠組みを通じて沿岸監視レーダーを供与することで合意しました。
(中略)
また両首脳は、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練を行う際などの対応をあらかじめ取り決めておく「円滑化協定」の締結に向けて交渉に入ることや、アメリカを含む3か国の協力をさらに強化していくことで一致しました。

さらに警戒管制レーダーの移転を含む防衛装備・技術協力を一層進めていくことも確認しました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231103/k10014246551000.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、フィリピン・セブ島の奇岩です。

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■シーレーン戦略■

フィリピンは元々、アメリカに対しても中国に対してもついたり離れたりの、コウモリ外交の部分があったけど。さすがに米軍撤退以降の中国の圧力に、決断したか? 日本はイロイロと批判はあっても、ビルマの軍事政権やロシア、イランとも外交チャンネルの維持に勤めてきた面があります。外交チャンネルは維持しないと、いざというときに八方塞がりになりますから。それは、教祖が反共から親北朝鮮に転向した、統一教会に対しても同じです。拉致被害者の情報源として、有用という面もありましたからね。

外交というのは、アホな国粋主義者が「韓国と断交!」とか喚くように、簡単なものではないです。事実、日本は北朝鮮とも台湾とも断交していますが、温度差はかなりの違いです。それはイスラエルやハマスに対するポジショニングも同じですが。安倍晋三元総理が提唱した、日米豪印戦略対話に加えて、台比越泰の古くからの付き合いに加え、星馬印尼錫の、中東から日本へのシーレーンを安定させる戦略が重要です。下記の図を見てみれば、そこは明らかでしょう。

1943年───昭和18年11月5日に、大東亜会議が開かれたのですが。これは大東亜共栄圏2.0? シーレーンとして、日本→台湾→フィリピン→ベトナム→タイ→マレーシア→シンガポール→マラッカ海峡→インドネシア→ビルマ→スリランカ→インド→紅海の、石油のルートは日本の生命線ですから。日米豪印のクワッドの枠組みも、このルートの安全保障とセットです。 で、中国は台湾やビルマ、インドネシアに楔を打ち込もうとこの20年、躍起になってる現実。岸田政権になってからの日本は、オーストラリアとイギリスに円滑化協定を結んでいますが、第三の国がフィリピン。 この円滑化協定は、完全に戦略的。

■日比準軍事同盟■

ぶっちゃけこの支援は、アメリカの迂回、でしょうね。アメリカ自体は、ウクライナ支援で10兆円を既につぎ込んでいますし。バイデン大統領は、ウクライナとイスラエルへの支援を合わせて1000億ドルを、議会に要求しましたが。議会の突き上げも強いですから、日本ができることはできるだけ支援する。ベトナムにも、海上保安庁の退役船を提供し、対中包囲網はかなり明確に。ある意味で、防衛費の大幅アップを岸田内閣が決めたのも、アメリカが支援しきれない部分の、バックアップ的な面が大きいでしょう。

【日本とフィリピン、準同盟級めざして首脳会談 中国の海洋進出に対抗】朝日新聞

 岸田文雄首相は3日、フィリピンを訪問し、同国のマルコス大統領と会談した。両首脳は自衛隊とフィリピン軍が共同訓練をする際の入国手続きなどを簡略化する「円滑化協定」の締結に向け、正式交渉入りで合意した。海洋進出を強める中国を牽制(けんせい)するため、両国関係を「準同盟」級へと格上げを図る。
(中略)
 日本が「同志国」の軍隊に防衛装備品などを無償で提供するため今年度に創設した「政府安全保障能力強化支援(OSA)」でも、両首脳はフィリピンに6億円分を初適用することで合意。フィリピンの海洋安全保障能力を強化するため、沿岸監視レーダーをフィリピン軍に供与する。

日本は、艦艇でも新型を建造して、旧式のものを東南アジア各国に払い下げる形で、上手く予算の獲得と支援をやれますしね。海上保安庁自体が、ある意味で予算を分捕るための存在だったりしますから。まぁ、ここらへんは 戦前の、戦艦大和の予算のやりくりとかと同じで、ある程度柔軟にやらないと、杓子定規には行きませんからね。今回、フィリピンの沿岸警備隊に日本の資金提供で、全長97メートルの大型巡視船5隻の追加供与を受けることも決定。海軍ではなく沿岸警備隊ってところが、海上保安庁の予算と同じで、巧妙ですね。

■反日感情の現実■

もっとも、フィリピンも含めて反日感情があった国って、マルコス大統領時代のフィリピン、李承晩・朴正熙・全斗煥大統領時代の韓国、蔣経国総統時代の台湾……なんのことはない、独裁者が牛耳っていた国の、ある時期の話なんですよね。それこそ、ナチスの理論的主柱になったカール・シュミットの友敵理論ではないですが、外部の敵は内部の団結、ですからね。昔言われた「アジアの嫌われ者日本人」は、たぶんに左派とマスコミが作ったイメージです。その独裁者がいなくなると、対日感情も替わるものです。

1986年にマルコス大統領が失脚し、1988年には全斗煥大統領は大統領の座w退き、選挙で選ばれた盧泰愚大統領の時代へ。同年、蔣経国も死去。ほぼ同時期に、独裁者の時代が終わっています。逆説的に、中国や北朝鮮は未だに独裁者が居座る国だから、反日感情が強い、と? 韓国では独裁的な権力を持つ大統領が、反日か親日かで、風見鶏化するのですが。逆説的に、ロシア・中国・北朝鮮は独裁国家だから、反日感情が固定されてるわけで。嫌われ者に嫌われるのは、むしろ勲章じゃないですかね? 知らんけど。

バラマキと批判される日本のODA(政府開発援助)ですが、これも贈与は少なく借款が多く。この借款も、韓国のイルベとかで貸したカネはけっきょく利子を付けて儲けてるだけだという意見を見合っけましたが(日韓基本条約の借款も同じだと言いたいらしい)。金をあげると発展途上国では邪魔すの指導者のように、権力者や高官がポッケナイナイしちゃうので。でも、定理で長期の借款なら、ちゃんと返済するために、国内の産業育成に投資せざるを得ませんから。ただ金をばらまくよりも、技術指導も入ってWin-Winの方法論です。

■大東亜共栄圏2.0■

今回の報道を見て思ったのは、「これって大東亜共栄圏2.0じゃね?」でした。逆に言えば、戦略としての大東亜共栄圏自体は、そんなに間違っていなかったんですよね。国粋主義的な、天皇制の強制的な部分が混入したのと、相手側に対する押しつけが、非常にまずかったわけで。逆に言えば、あのときも、満州の権益でアメリカを上手く引き込めていれば、本来は北進論が主流で南進論は傍流だった日本は、中ソ包囲網で、アメリカと組めた可能性があったわけで。でもそれが、令和の世で日の目を見る奇縁ですね。

明治の国家神道は、キリスト教文明に対抗するために、本来はアミニズム的な浸透を無理やり、一神教的に作り替え得てしまった面があります。自分は、この点において国家神道には批判的です。これは国家社会主義にも批判的であるのと、セットですが。日本には、一神教的な価値観はそもそもシックリ来ませんし。そもそも、キリスト教文明自体が、ニーチェ以降は批判されて、見直しが進んでいますしね。ユダヤ・キリスト教の鬼子としての、共産主義思想も同じ。むしろ、多文化共生には多神教的な世界観を導入する必要も。

日本人は、島国の村社会で、出る杭は打たれるの社会ですから。でも、NASAの実験でしたか、スタッフやクルーに日本人を入れると、対立しがちなクルーとの、調整弁になってチームが機能しやすい傾向があるとか。国際社会でも同じで、我が強いアメリカとかロシアとかに対して、調整役・仲介役としてのポジショニングをする。なんのことはない、調整型の政治家であった安倍晋三元総理の、外交方針に近いんですよね。ただその場合、ただの八方美人ではダメですから。

イスラエルだって国際法違反だと批判し、G7で唯一賛成しないなど、筋を通す必要はあるので。そこは履き違えず、太平洋とインド洋と紅海の安全を求めるのが、日本のポジショニングかと。

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