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アンモニアと水素で発電の未来

◉溜まっていたエネルギー関係のネタを、まとめていくつか。まずIHIは、旧商号は石川島播磨重工業株式会社です。エンジン開発では国内有数の会社で、戦闘機のジェットエンジンとか開発で知られますね。エンジン開発は発電機のタービンの開発などとも技術が近いようで、日本の三菱重工やイギリスのロールス・ロイス社など、両方を手掛ける会社は多いですね。日本の、ジェットエンジン開発大手企業のひとつであるIHIは、東南アジアでアンモニア発電の実用化と、アンモニアの調達 と供給のネットワークも、構築するようです。

【IHI、電力需要3倍の東南アジアでアンモニア発電網構築へ】日経ビジネス

この記事の3つのポイント

①IHI、東南アジアでアンモニア発電の実用化を狙う
②東南アジアの電力需要は2050年に21年比で約3倍
③再生エネ由来のアンモニアも調達、供給網を構築へ

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00332/031100076/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、発電所のプラントをイメージして生成したイラストだそうです。

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■アンモニア合成■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。IHIはエネルギー関連でも、重要なポジションを占めるわけで。そのアンモニアは紀元前から知られている、化学肥料の原料にもなる、ありふれた物質ですが。窒素と水素の化合物ですから、火力発電でも混焼などで、補助的な燃料を通しての役割が期待されます。とは言え、それ自体は決して燃えやすいというわけではないので、安定した燃焼のためには、それなりに技術と装置が必要な物質でもあります。

【理研など、アンモニア合成向け新触媒 低温で窒素活性化】日経新聞

理化学研究所(理研)などの研究グループは、大気中の窒素分子(N₂)からアンモニア(NH₃)を低い温度で持続的に合成することに成功した。6原子程度から成る金属クラスターが無数の細かい穴(細孔)に取り込まれた触媒を作製して実現した。燃焼時に二酸化炭素(CO₂)を排出しないアンモニア燃料の増産に活用が期待できる。
東京大学や北海道大学と共同で研究した。本研究では、大きさ1nm以下の金属クラスター触媒を...

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC315I10R30C24A1000000

こちらはちょっと古い記事でなんですが、理研(理化学研究所)が大気中の窒素分子からアンモニアを、低い温度で持続的に合成することに成功したというニュース。アンモニアの合成といえば、ハーバー・ボッシュ法が革命的な技術だったのですが。鉄を主体とした触媒の上で、水素と窒素を 400〜600度の、超臨界流体状態で直接反応させる方式。それが、そこまでの高温状態じゃなくても合成できるなら、大きな技術的進歩ですね。

■海水から水素製造■

アンモニアはNH3で、1個の窒素原子と3個の水素原子を持ち、水素を別の形で安全に運搬する「水素キャリア」としての役割も、期待されます。水素は気体では軽く大きな体積がネックで、液体にするには−252.87度と超低温が必要な、けっこう厄介な物質です。液体水槽は大型ロケットの燃料などにも使われていますが、容器をすり抜けて外に出てしまうという、ちょっと変わった性質も持っているそうで。ただ、TOYOTAは水素燃料と水素エンジン推しです。

【海水から水素製造…希少金属使わない技術を切り開く】読売新聞

 気候変動を食い止める切り札として、水素エネルギーへの期待が高まっている。化石燃料から作る「グレー水素」ではなく、再生可能エネルギーを活用して作る「グリーン水素」が望ましい。しかし、大きな問題がある。淡水を電気分解(電解)する現在の製法は、淡水を潤沢に得られる場所でしか使えないことだ。海水を電解する技術もあるが、高価な希少金属のイリジウムが欠かせない。

 筑波大学数理物質系の伊藤 良一准教授(41)(電気化学)は、イリジウムなどの貴金属を使わずに海水を電解する技術の開発に挑む。成功すれば、アフリカなどの海に面した乾燥地や、日本でも増えている洋上風力発電の施設周辺などで、グリーン水素を生産しやすくなると期待される。

https://www.yomiuri.co.jp/column/dreamchaser/20240308-OYT8T50073/

世界の水の97%は海水と言われますから。その膨大な量がある海水から、水素を電気分解で取り出すための触媒を、筑波大学は、ありふれた卑金属だけを組み合わせた合金で、海水の電気分解に長期間使える高耐久性の電極を開発したと発表。やはり日本は、化学と素材研究は世界的にもまだまだ強く、こういう触媒の研究開発には、余念がありませんね。レアアースの輸出規制の嫌がらせにも、代替物質の開発や使用量大幅カットの工夫で、乗り切れましたからね。

■石炭とアンモニアで発電■

こちらはJERAの、国内のアンモニアを混ぜて燃焼実験(混焼)の話題です。昨年末からこっち、世界的には核融合発電の研究の話題で、持ちきりですが。たとえ核融合発電が実用化になっても、水力発電や火力発電は相変わらず、重要な発電方法のひとつであり得ると思うんですよね。たったひとつの発電方法に、オール・インすること自体が、リスクを高めますから。そして、石油よりも豊富にある石炭はまだまだ、有力な化石燃料足り得ます。

【JERA、石炭とアンモニアで発電 26日から実証】日経新聞

国内火力発電最大手のJERAは13日、碧南火力発電所(愛知県碧南市)でアンモニアを2割混ぜて燃やす実証を26日から始めると発表した。海外から石炭火力への批判が強い。アンモニアは燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない。石炭火力の脱炭素へ有力な手段になるとみて、2027〜28年の商業運転をめざす。

JERAは13日、実証に向けて導入した設備を公開した。石炭を燃やす燃焼装置(バーナー)に新たなノズル(管)を取り付け、気化したアンモニアを流し込んで発電する。船で受け入れたアンモニアを運ぶ配管や、貯蔵するためのタンクも敷地内に設けた。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC114OX0R10C24A3000000/

記事によれば、アンモニアは石炭に比べて、価格が高いのが課題だそうですので。それだけ石炭は、値段が安定して安いということなんですね。石炭に関して言えば、より安全性が高い第四世代の原子炉である高温ガス炉では、その製鉄にさえ使える超高温を利用した、石炭の液化も研究されています。そういう意味では、水素とアンモニアと石炭は、日本のエネルギー市場の未来を背負っていく、貴重な物質なのでしょうね。

ここら辺のネタはあまり 需要がありませんが、再生可能エネルギータスクフォースの、令和のゾルゲ事件と呼べるような状況を見ると、需要は低くても定期的にエネルギー関係の話題はアップしていかないといけないなと、つくづく思いました。文系の自分ですが、手塚治虫先生や藤子不二雄先生、あさりよしとお先生の、科学する心を育む漫画の影響は大きいので。これからもできるだけ触れていきたいと思います。


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