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5月15日の米消費者物価指数発表に向けて


米消費者物価指数について

 5月15日の水曜日にアメリカの消費者物価指数が発表される予定です。今回はいつも以上に注目されています。その理由は、アメリカの中央銀行であるFRBが利下げの開始時期を探り始めた一方で、インフレが思った以上に高止まりする状況になってきています。その結果、利下げの期待が急速に落ちてきており、FRBの金融政策がどうなるのか、今回の消費者物価指数の結果が大きな影響を与えそうな状況になってきています。
 今回は消費者物価指数やインフレについて、どの部分に注目すべきなのか、どのように見るべきなのかといった基礎的な部分について解説したいと思います。

注目ポイント① インフレの速さ

 インフレの状況を見る際にどの要素を見るべきかというと、私は注目すべき点が4つあると考えています。まず1つ目はインフレの速さです。
 消費者物価指数の場合、前年比などで見ることができます。アメリカの場合、2022年の6月には前年比プラス99.1%で伸びていましたが、直近の2024年3月のデータでは前年比プラス3.5%になっており、伸びが緩やかになってきています。つまり、インフレが進むスピードが遅くなってきていることが分かります。

注目ポイント② インフレの方向性

 2つ目はインフレの方向性です。これは前月比で見ることができます。3月の消費者物価指数は前年比プラス3.5%で、前月比ではプラス0.4%でした。前年比では伸びていても、前月比ではほとんど伸びていなかったり、逆にマイナスになっていたりすることもあります。この前月比の動きは、足元の方向感を確認することができます。この前月比の伸びについては、2023年の10月から12月はプラス0.1%からプラス0.2%と、ほとんど伸びていない時期もありましたが、今年に入ってからは1月がプラス0.3%、2月がプラス0.3%、3月がプラス0.4%と徐々に上がってきています。つまり、方向性としては上昇傾向になってきているのが分かります。
 この足元の方向性というのも非常に重要です。メディアの報道では前年比の水準だけが伝えられたりすることもありますが、前月比の方向性というのもマーケットは敏感に反応したりすることもあります。

注目ポイント③ インフレの広がり

 3つ目はインフレの広がりです。インフレが一部の商品だけで起こっているのか、それとも多くの品目に広がっているのかというのも非常に重要な要素です。2000年代初頭から世界中でインフレ率が徐々に上昇していきましたが、この頃のアメリカのインフレはほとんどがエネルギーと自動車などの一部の商品の価格が高騰したことが要因でした。金融緩和による資産インフレで物の値段が上がったという面もあったでしょう。ただ、サービスの価格だったり家賃だったりといったところはそんなに上がっていませんでした。一部の物の値段が上がっているだけで、あくまで一時的だとFRBは言っていました。しかし、これが徐々に多くの品目に広がりました。

注目ポイント④ インフレの粘着性

 4つ目に重要なのが粘着性です。要するに、継続する可能性があるインフレなのかどうかということです。
 粘着性があるとされているいくつかの品目があります。それらの品目が上がってくると、粘着性があると見ることができます。その品目というのが1つはサービス、もう1つは家賃です。このサービスと家賃に粘着性、つまり継続性があるのは契約期間があることと関係していると言われています。
 サービスというのは人がサービスを提供することになりますので、そのサービスを提供する従業員の賃金の動向と密接な関係があります。賃金というのは多くの場合、契約期間というものがあります。例えば昨年、アメリカの自動車会社の労働組合が4年間で25%の賃上げを求めて最終的に合意しましたが、契約期間が4年間ありますので、4年間ずっと賃金が上昇することになります。このように、賃金というのはある程度の長い期間の契約になっている場合が多いので、継続性があります。
 家賃もそうです。アメリカでは不動産の賃貸契約は1年のものが多いですが、それよりも長いものもあります。中には徐々に家賃が上がっていくようなものもあります。このように、家賃も契約期間がありますので、価格上昇に継続性があります。

 契約期間がないただの物の場合は、価格が上がっても下がるのも早い場合が多いです。ですが、契約期間があるものに関しては、価格上昇が継続することになります。ですので、このサービスや家賃の価格が上がってくると、インフレが継続する可能性が高いと見ることができます。そして、アメリカの場合、サービスと家賃で全体の6割を占めています。これらの項目が非常に大きな影響力を持っています。家賃だけで全体の35%程度の構成になっています。家賃の動向は非常に重要です。

今後の見通し

 5月15日に発表される4月のデータに関しては、こうした粘着性のある項目の高止まりが引き続きどうなるかが注目されています。加えて、このところ中東情勢の不透明感などから原油価格がだいぶ高くなりました。そのため、エネルギー価格が上がると、物を作ったりサービスを提供したりする多くの価格に影響します。それがどこまで波及するのか、そういったところも注目されています。
 5月3日に発表された4月の雇用統計が弱めの結果だったことを受けて、今年のFRBが利下げをする期待というのがまた少し復活しました。

 現在、マーケットは今年1回から2回の利下げがあることを織り込んでいます。このところ消費者物価指数が予想を上回る展開が続いてきているので、仮に家賃やサービスがまた一段と高くなったりすると、また利下げができそうにないということで、利下げの期待がまた後退する可能性があるでしょう。

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