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BNPLの利用者の増加とその背景


BNPLの成長

 「BNPL(Buy Now Pay Later)後払い決済」について解説します。BNPLは、2021年頃から注目されてきました。注目が薄れた時期もありましたが、海外での利用者はその後もじわじわと増えて続けています。アメリカでは、昨年の年末商戦で1兆円以上が利用されたとか、節約志向のドイツでもBNPLの利用が増えていると報告されています。

BNPLとクレジットカードの異同点

 まず、BNPLとは何か簡単に説明します。BNPLは、「Buy Now Pay Later」の略で、日本語で後払い決済と呼ばれています。これは、買い物をして分割払いにするなどして、後で支払うことができるサービスです。
 クレジットカードでも同様のことが可能です。
 BNPLとクレジットカードの違いは、BNPLの場合、手数料や金利がかからない点です。クレジットカードの場合、分割払いにすると手数料が発生しますが、BNPLでは手数料が発生しません。BNPLを提供する会社は、お店側からの手数料だけで収益を得ています。また、クレジットカードの場合、クレジットカード会社がお金を貸す対象者を審査しますが、BNPLでは審査がほとんど行われません。審査がない代わりに、利用限度額が徐々に増えていく仕組みになっています。
 分割払いにした時の手数料がかからないという理由で、クレジットカードからBNPLに切り替える人が多いです。また、クレジットカードの審査が通らない人などもBNPLを利用するケースがあると言われています。

BNPLを提供する企業

 BNPLを提供している会社としては、アメリカのAffirm、オーストラリアのAfterPay、ヨーロッパのスウェーデンのクラーナ(Klarna)などが有名です。クラーナ(Klarna)については、2021年にソフトバンクグループのビジョンファンドが出資した会社です。その後、企業価値が急落して一時は約1/7にまで落ち込んだと言われています。期待の高まる中、BNPLの需要は伸びていったものの、期待ほど伸びなかったという中で、急上昇した企業価値が急落したという状況でした。
 紆余曲折ありましたが、BNPLの利用者は増え続けています。

ドイツにおけるBNPLの利用

 ドイツ人は、節約志向が強いとされていますが、ドイツでもクラーナ(Klarna)の利用者が増えていると言われています。

ドイツの節約志向(歴史的な背景)

 ドイツ人の節約志向は歴史的な背景があります。
 18世紀まで歴史を遡ると、1778年にハンブルクで世界で初めて貯蓄銀行が誕生しました。年を取ったり病気になった時のため、貯蓄が行われるようになりました。プロテスタントの節約志向もあり、国中で貯蓄ブームが起こったとされています。これによって1900年には国民の1/4が貯蓄口座を持つに至ったとされています。そして、貯蓄銀行が集めた資金がドイツ国内でのインフラ整備などの投資に利用されて、貯蓄をすることが国に貢献することだという考え方が生まれていったと言われています。
 その後、第二次世界大戦中の政権も倹約と貯蓄は愛国的義務だとして貯蓄を推奨しました。戦後は、国のために貯蓄をするというような考え方はなくなっていったと言われていますが、それでも自分のために貯蓄をしようと考える人が多く、その後もドイツ人の節約志向は続いてきました。

ドイツの節約志向(現在)

 ドイツの貯蓄率は他の国に比べて今でも非常に高い水準になっています。2022年のデータでは、世帯年収の20%程度が貯蓄に回っているとされています。これは、EU全体の12.7%を大きく上回っています。ドイツでは、持っているお金を節約しながら使おうという考え方があるので、クレジットカードを利用するニーズも他の国に比べて少ない傾向があります。

ドイツのBNPLの利用者

 しかし、ドイツで今クラーナ(Klarna)の利用者が増えているとされています。特に、1996年以降に生まれた若者、いわゆるZ世代が多いとされています。安定した職についている若者は、少々の借金は大丈夫と考える人が増えており、ドイツ人の節約思考に変化が見られていると言われています。

BNPLの規制について

 BNPLの利用者は、アメリカでもZ世代を中心とした若い世代が多いと言われています。BNPLの利用が増える一方で、信用力が低い人たちが審査もせずにお金を借りるような状況は危険だと思われるかもしれません。各国の金融当局もその問題を認識しており、規制を強化する動きもありますが、まだ具体的に規制に乗り出している国はわずかで、有効な対策が打たれていない国が多いのが現状です。
 クレジットカードの場合、支払いに問題があると、そうした情報が信用情報機関に共有され、他の会社でカードを作ることが難しくなる仕組みが導入されている国がほとんどです。
 しかし、BNPLの場合はこうした仕組みがないので、支払いに問題が生じてもまた他の会社からお金を借りてどんどん借金を膨らませてしまう可能性があります。

将来的な問題の可能性

 今後、このBNPLの利用者はますます増えていくと見られています。そして、過剰債務を抱える若者が増えていく可能性があります。そうした中で急激な景気後退のようなことが起こり、多くの若者が職を失うような事態が発生した場合、借入れを返済できないようなケースが増加する可能性があるかもしれません。BNPLを提供する会社は、審査をせずにサービスを提供することを売りにしているため、顧客データを分析することでリスクを減らそうという取組みを行っているようですが、徐々に利用者が増加する中でさらに注目になっていきそうです。
 今のところ、返済できない人たちが増えたとしても金融システムに大きな影響を与えるような金額ではないため、金融システム不安になったりするような問題ではないと思っています。ただ、未来を担う若者に関わるということで、無視できない問題と言えるでしょう。

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