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バブルの起源、南海泡沫事件とは


バブルについて

 近年、金融市場でバブルが発生しているのではないかという話題が頻繁に取り上げられています。過去のバブルと言えば、1980年代後半や2000年にかけてのドットコムバブル、リーマンショック前の不動産バブルなどがよく話題になります。

バブルの歴史

 人類が初めて経験したバブルが17世紀前半に発生したチューリップバブルであることはよく知られています。
 しかし、このチューリップバブルが発生した時代の少し後、18世紀のイギリスで発生した南海泡沫事件という事件について知っている人は意外と少ないかもしれません。
 南海泡沫事件は、バブルが発生し、その後崩壊した事件です。オランダのチューリップバブルの時代よりも、金融市場が発展していたことから、現代社会にも適用できる部分があります。この事件は、バブルという言葉が生まれた事件でもあります。今回は、この南海泡沫事件について解説したいと思います。

南海泡沫事件とは

 南海泡沫事件は、1720年代にイギリスの南海会社という会社の株式が急騰し、その後暴落した事件です。
 南海会社は、アメリカ大陸と奴隷貿易を行うために設立されました。当時、南アメリカはスペインが支配しており、そのスペインから獲得した地域で南海会社が奴隷貿易を行い、その利益でイギリスの国債を賄うという計画が立てられていました。しかし、実際には1718年からスペインとの戦争が激化し、貿易はうまく進まない状況になっていました。

 そうした中で、1718年に南海会社は宝くじのようなものを発売し、大成功を収めました。そして、徐々に金融事業を行うようになりました。1719年に南海会社は、いわゆる南海計画というスキームを指導しました。南海計画というのは、南海会社の株式とイギリスの国債を時価で交換するというものです。100ポンドの国債を持っていた人に、南海会社の株式100ポンド分を渡すという仕組みをスタートしました。南海会社は、受け取った100ポンドの国債から支払われる利子を南海会社の株主に配当として渡します。そうすると、南海会社の株主は、国債を持っていた時の利子と同じだけの配当を受け取ることができます。これは、株価が変わらなかった場合の話ですが、株価が上昇していくと、南海会社の株主はどんどん利益を増やしていくことになります。つまり、株価が上がると、南海会社とその株主は利益を上げ続けられる。これが南海計画でした。

 当初は南海会社への期待もあって、株価は急騰しましたが、その後株価は暴落しました。これは今より高い値段で誰かが株を買い続けてくれるから成り立つ仕組みで、それが途切れた時点で終わりというわけです。長く続くはずがありません。

バブルの起源

 1720年1月に南海会社の株は1株100ポンドぐらいだったところから、5月には700ポンドを超え、6月24日には1,050ポンドの高値をつけました。そして、この南海会社の株式が急騰すると、他の株式会社の株も上昇しました。当時、こうした会社を設立することは政府の許可を得る必要がありましたが、無許可の会社が乱立するような事態になり、政府が規制に乗り出しました。泡沫会社禁止法(Bubble Act)、英語でバブルアクトと言いますが、議会の承認を得ていない会社が株式を発行することを禁止する法律を作りました。これによってバブルが崩壊し、南海会社の株は暴落し、その後イギリスは大恐慌に突入しました。そして、この時にバブルという言葉が生まれたと言われています。

南海泡沫事件とその後の影響

 バブルが崩壊し、投資家が損して終わりということではありません。こうした事態を招いた政治家たちに対する批判が集まり、有力な政治家が辞職するなど、政治的にも大混乱が起こりました。そして、この混乱した状況をまとめ上げたのがロバート・ウォルポールです。イギリスの初代首相と言われています。

フランスのバブル

 同じ時代にフランスでも歴史的なバブルが起こりました。北アメリカに植民地を持っていたフランスは、ミシシッピ川周辺を開発し、貿易を行う計画を立てました。これがいわゆるミシシッピ計画で、これを行うために設立されたのがミシシッピ会社でした。当時、フランスも戦争や王族の浪費などで膨大な政府債務を抱えており、これをミシシッピ会社に引き受けさせようとしました。そして、ミシシッピ会社の株もフランス国債と交換するということが行われました。しかし、ミシシッピ会社の株も急騰した後に暴落し、南海会社と同じ運命をたどりました。

 この時代、株式会社というものが登場し、金融市場がまだ脆弱だった中で、同じようなことが世界で起こっていたと言えます。フランスもイギリスも財政難に陥っていましたが、この時代にライバル関係にあったスペインやオランダもまた、繰り返される戦争によって財政状況が極めて厳しい状況に陥っていました。

現代社会との共通点

 実態のないものに高い値段がつけられ、価格が急上昇することがバブルの特徴と言えます。しかし、現代社会で起こるバブルとの共通点はこれだけではありません。南海会社がイギリスから離れた地域で活動していたことから、経営の実態が投資家に見えづらかったというのも一因です。そして、株価が上がれば上がるほど、新しい株を発行して国債を引き受け、利益が増えるという金融的なスキームがバブルを引き起こしたという点も、現代で起こることと共通しています。
 今、多くの先進国の財政状況が悪化している要因は、戦争だけではなく、もちろんコロナパンデミックへの対応なども影響しています。多くの国が財政的に苦しくなっていて、小競り合いが増えているといったところは、共通している点もあるでしょう。

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