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読書感想文 :: フィッシュストーリー/伊坂幸太郎(著):: あやうくKindleで2回買いそうになった

伊坂幸太郎氏の短編集。

楽しむ本、参考になる本(小説を書く時の)として、今の自分にちょうど良い。

他の短編集や章ごとに主人公が変わる小説を確認してみた。

今まで読んできた伊坂幸太郎氏の小説は、どれもが中長編なので目新しい。
と思いながらAmazonの案内を読んでいると「フィッシュストーリー」に既視感がある。

でも「フィッシュストーリー」のページには『購入済み』とは表示されない。
改めて購入履歴で「フィッシュストーリー」の検索をかけると出てきた。

注文履歴に「伊坂幸太郎」で検索しても、この本は出てこない
出版側の登録コードが変わったのか? Amazonの不思議
左:購入済みが表示されないAmazonのページ(iPad Pro画面)
右:難なくダウンロードが出来た本の表紙(Kindle Oasis画面)
 

備忘とコメント

以前読んでいるはずなのに、全く覚えていないのは何故だろう。
再々読さいさいどくしなくて済むよう、内容をメモしておきたい。

動物園のエンジン

家族と電車に乗って、思い出す不思議な過去の一片。
シンリンオオカミにまつわる、いなくなった人たち。
元飼育員の不可解な行動。

サクリファイス

山間のある村を舞台にした因習に纏わるミステリー。
彼が書く物語にしては珍しい雰囲気。
話の行方は明かされずに物語が終わる。
泥棒の黒澤は『ラッシュライフ』や『重力ピエロ』にも登場。

フィッシュストーリー

30年前にアルバムがリリースされ、解散したバンドの曲がテーマ。
20年前 → 現在 → 10年後の物語。
この物語のハイジャック(現在)シーンだけは覚えていた。
全て、fish story(ほら話)なのかも知れない。

ポテチ

飛び降り自殺しそうになった女性を思い止まらせ同棲する、空き巣泥棒の物語。
物語の中で一度も泥棒を働くことはなく人助けをし、『ピタゴラスの定理』を発見して驚き、野球観戦に感動する、泥棒らしからぬ泥棒。

ラストで謎が解ける。
タイトルの命名は「なるほどー」😊
泥棒の黒澤が、兄貴分として登場し、物語の展開に重要な役割を果たす。
 

雑感

短編同士には何の関係性もないが、舞台は全て仙台市内とその周辺。
仙台のことをよく知っていれば、物語をより楽しめる。
観光で何回か行ったことがあるので、小説を読みながら「あの辺かなぁ」と景色を思い浮かべていた。
 
この短編集、あらためて読んでみると、話の筋のもつれ具合が絶妙。
 
ストーリーとして特別な何かが起こるわけではないのだが(パンデミックとか、銃撃戦とか、宇宙人襲来とか、異世界転生とか…)、読み飽きることはない。
話の先が気になり読むスピードを速めようとすると、登場人物の意外なセリフ回しや、思いもよらぬ風景描写、上手い文章表現が出て来て、ページが止まる。
「ここでこういうふうに書くと、こうなるのか」と話の持って行き方に感心する。
 
ただ、エンターテイメント的には、読み返すことが出来る小説の世界だからこそ表現できることも多く、アニメや映画にするには、物語として美味しいところ(読者が読みながら考えて納得するところ)を省いたり、ネタバレ的に説明を加えたりしなければ、話が進まない。
 
鑑賞の時間軸を同一化せざるを得ないメディアミックスに彼の物語を持ち込むと、原作の魅力的な部分が損なわれてしまう。
物語のイメージだけを拝借して、別物語にしてしまうのかも知れない。
 
小説(文字だけの世界)ならではの長所を、上手く引き出せる作家さんだと思う。

MOH

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