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『神のいない世界の歩き方:Richard Dawkins (著) 』 神を信じる人には厳しい本、だが進化論は正しい

さらば、神よ 科学こそが道を作る』の改題文庫版。

目次
第1部 さらば、神よ

第1章 神はとてもたくさん!
第2章 でも、事実なの?
第3章 神話とその始まり
第4章 聖書は善良の書なのか?
第5章 善良であるために神は必要か?
第6章 何が良いことか、どうやって決める?

第2部 進化とその先
第7章 きっとデザイナーがいるはず?
第8章 ありえなさへの歩み
第9章 クリスタルとジグソーパズル
第10章 ボトムアップかトップダウンか
第11章 私たちは信心深くなるように進化したのか? 親切になるように進化したのか?
第12章 科学から勇気をもらう

Amazon『さらば、神よ』から

この本のレビューは下手な内容説明より、あとがきの後に付け加えられた『「解説 世界の見方」佐倉統 東京大学大学院情報学環教授 』が分かりやすい。いくつかを引用する。

この本の内容は、そのダーウィンの進化論にもとづいている。

その真髄は、生物の進化を個体や種ではなく遺伝子の視点で説明したところにある。

二〇〇六年、神の存在を完膚なきまでに否定した『神は妄想である』(邦訳早川書房)を出版、これは欧米、とくにキリスト教信仰が今でも根強いアメリカでベストセラーになり大論争を巻き起こした(ヨーロッパ諸国の多くはアメリカに比べるとはるかに無宗教である)。

神の否定もダーウィン進化論の帰結のひとつなのだが、普通の進化学者はこのような宗教批判を積極的に展開したりはしない。だがドーキンスは、進化論と科学の伝道師として、宗教との関係を避けて通るわけにはいかなかった。アメリカでは、ダーウィンの進化理論を否定して神が地球上の生物を創ったという創造論を信じている人が、今でも大勢いるからだ。彼ら彼女らは公立学校の教科書に創造論についての記述を入れよと州政府に圧力をかける運動を起こし、実際アメリカのいくつかの州ではそういった教育課程を採用するという、日本では考えられないような事態が現実の出来事になっている。

 この本でドーキンスは何度か、科学は正しい知識を提供してくれるがそれを知ることが人間の幸せにつながるとは限らないと警告している。だから今でも多くの人たちが、「不都合な真実」の進化論を受け入れることに抵抗し、なんとなく心地よい神の存在にいつまでもしがみついているのだ、と。
 科学の成果が必ずしも人に心地よくないというのは、本当にそのとおりだ。太字で強調しておきたい。氾濫する反科学や疑似科学やトンデモ科学の原因のひとつは、ここにある。

 ぼくはドーキンスほど厳しい知性の持ち主ではないので、少しは科学的でなくても人々が幸せを感じるなら、そっちの方が良い場合もあるだろうと思っている。血液型占いで合コンの席がなごんだり、夜の墓場の肝試しで夏合宿が盛り上がったって良いじゃないかと思うのだ。人は科学のみにて生きるにあらず。
 だけど、それが勢い余って科学の恩恵まで否定するようになってしまったら、明らかに行き過ぎだ。

「解説 世界の見方」佐倉統 東京大学大学院情報学環教授


感想

もともと神や悪魔を信じていないので、この本に書かれていることは腑に落ちることばかり。

第1部では聖書(旧約、新約を問わず)に、書かれている内容は史実ではなく、神話(事実ではない物語)であることを歴史的・科学的見地から徹底的に説明する。

第2部では、日本では少数派と思われる「進化論を信じない人たち」に対して、生物学をもとにそれらの妄想の根源を明らかにしている。

後半、シュレティンガーの猫、コペンハーゲン理論が出てきた時には「量子論まで話が行くのか?」とワクワクしたが、著者の専門ではないらしく、その説明は尻切れとんぼに終わる。

読了後、世界の信者がどんな分布かを調べてみた。

ブリタニカ国際年鑑(2017)世界の宗教別人口ランキング
1位:キリスト教 22.5億人(US:2.3億、Brazil:1.8億、Russia:1.2億)
2位:イスラム教 14.3億人(Indonesia:2.0億、Pakistan:1.8億、India:1.8億)
3位:無宗教 9.5億人(無宗教を宗教と呼べるか? 中国・日本等に多い)
4位:ヒンズー教 9.1億人(India:8.3億)
5位:仏教 3.8億人(中国:2.4億)

西側諸国の中では、米国の2.3億人(人口3.3億人)が突出している。ロシアの人口は約1.4億人なので、ほとんどがキリスト教徒。

ウクライナ戦争で鍵を握る主要国に、キリスト教信者が多い不思議。


MOH

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