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もしくは、桑原 茂→の由布院旅情。

劣化するものの美しさに幻惑され、
硬直する命を宝石湯で溶解する。
すると妖怪も溶解 
まだ私に何か用かい?
自覚の有る無しに関わらず、
人間界は今も昔も弱肉強食の世界であることに変わりない。
心と身体の強い者が 弱きを従え 闘い 功を成す。
あるいは 志し半ばで、挫折する。憤死する。
いづれにせよ 強きものも 弱きものも
傷ついた心と身体を癒す湯を
「宝石湯」と呼びたい。




夜が明けたばかりの湯船に差し込む光の美しさに 
息を飲み 心を奪われるが、
たくらみのない純白は 瞬く間に昇華する。
過程は永遠だが 歓喜は一瞬だ。
美は あまりにも儚いのだ。






さて、由布院温泉が主催する蓄音機コンサートからの出演依頼に、
「桑原茂→の斜視の耳」で答えた。
とある友人の紹介で蓄音機を求め知り合った蓄音機の専門店、「梅屋」
そのオーナー梅田英喜さんとのご縁で温泉の湧く湖で岳本の池ともいう、
金鱗湖

金鱗湖 

明治初期の儒学者・毛利空桑が、湖で泳ぐ魚の鱗が夕日で金色に輝くのを見て「金鱗湖」と名付けたといわれています。

その湖畔に面したシックなカフェで
蓄音機を回す。
SP盤時代の音楽をテーマに、
選曲家として由布院にお呼びいただいた。
CAFE LA RUCHE

その夜の選曲は、
こちらでお聞きになれます。
moichi kuwahara The gramophone turns is an idea of era

音楽が空気の一部でもあるかのような暮らしの中では、
蓄音機の時代を想像するのは容易ではないが、
電気を使わず
ゼンマイでレコードを回し、鉄の針でSP盤を削り、
一曲一枚聴いたのちは、その針を捨てる。
何故ならレコード盤が傷むからだ。
つまり、蓄音機が生まれた頃は、音楽を再現して楽しむことは、楽団を手配して生演奏を楽しむ擬似体験的のようなもので、富裕層だけの贅沢な時間であったはずだ。となれば鑑賞者たちも存分におめかしをして集まるサロンでもあったろう。
ノスタルジックに溺れるなら、
パリのオペラ座でクラッシックコンサートを楽しむように、
SP盤レコード盤に針を落とした瞬間、私は息を殺し全身の毛穴が逆立ち、
その音楽に集中する。
私が魅惑される蓄音機とは、音楽が愛された時代へのタイムマシーンであり、あの時代の天才たちと同じ空気に触れる極上の体験なのである。
そんな蓄音機を愛でる由布院は私の桃源郷でもあるのだ。


蓄音機の梅屋
「 蓄音機の梅屋 」 
数年前に、東京の神保町から由布院に移られた。
” アンティックな看板が重厚な門構えに
ピッタリハマってますね。"
" ああ、これね、以前の職場(青土社)の
上司が開店のお祝いに作ってくれましてね。"
” うん? 青土社って、"
青土社は、日本における出版社の一つ。神話・言語・哲学・文学・宗教・文明論・科学思想・芸術などの人文諸科学の専門書の出版社として名高い。
清水康雄が1969年に創業し、現在まで続く雑誌『ユリイカ』を創刊した。
" 私、元編集者だったんですよ。”
" 絶句 ”
人に歴史あり。
ならば尚更、梅田さん、蓄音機の魅力を中心に据え、
人が豊かに生きる為に必要な事柄を、これまでにないアプローチで、
梅田さんの哲学書をいつか、ではなく、なる早で、上梓して頂きたい。
切望しています。

黄金の大きなまん丸が
そのままスピーカーです。
あまりにゴージャス。
笑っちゃうほどアンビリーバブルな
デザインに思えますが、
どうも音を追求するとこうなったようです。
お値段をお聞きするのも忘れました。

これは、中波、短波を聴く
真空管アンプ内臓のラジオです。
が、
目的はラジオを聴くことではありません。
CDデッキ、ターンテーブル、
カセットデッキ、等を
このラジオに繋ぎ音楽を楽しみます。
それはもう、甘い、甘い、
遥か彼方のノスタルジックな世界。
きっと貴方は随喜の涙を流す事でしょう。
この快楽のお代は、40万円也。 

" あれ?この写真は・"
" ああ、これね、私の苗字が梅田なので、、”
” 鋤田正義さんの作品ですよね。
確か11月に由布院へお見えになるとか、”
" 縁あって、購入させてもらいました。"
縁あれば千里
まさか、鋤田さんのボウイに由布院で出会うとは、

一樹の陰一河の流れも他生の縁  

人生に偶然はないのかも、
それにしても、確かに、偶然は完璧だ。

翌日、CAFE LA RUCHE のオーナー、
は伊藤剛好さんの案内で、
今、由布院で人気の山椒カレーうどん
「菊すけ」のご主人で、元、鋤田正義さんのアシスタントだった
菊池昇さんを訪ねた。
写真は今も撮ってらして、店内にはモノクロの重厚な写真がいくつも飾られていた。
この11月のイベントのフライヤーの写真も 菊池さんご自身の作品だそうだ。
で、話は一気に私のプロデュースしたピテカントロプス時代に戻り、
恩師、鋤田さんの交友関係に思いを馳せ、
時代の突端にいた頃の空気感を懐かしんでいた。
私は蓄音機をタイムマシーンと称したが、
由布院の人気店を日々忙しく運営する菊池さんの時間と、
東京でメディアの制作に終われる私と、共に流れる時間は同じはずだが、
時間の感じ方もスピードも大きく違うことを認識させられた。
過去 現在 未来 どれもが同時に進んでいると聞いたことがあります。
デビッド・ボウイのタイムの歌詞ではないが、
誰もがいつかここではない晴れの舞台に立つ
その瞬間を夢見ているのだろうか?
私にはここが桃源郷だ。

その2へ
つづく
画像・文
初代選曲家 桑原 茂→

情報
束の間
束の間
0977-85-3105
〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上444−3

金鱗湖

金鱗湖は由布院を代表する観光スポットの一つです。
CAFE LA RUCHE
Cafe La Ruche
0977-28-8500
大分県由布市湯布院町川上1592-1 
https://tabelog.com/oita/A4402/A440201/44000040/
菊すけ
0977-85-5262
大分県由布市湯布院町川上1269-36 
https://tabelog.com/oita/A4402/A440201/44008319/

湯布院
http://www.yufuin.gr.jp/index.html

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