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Plaubel Makina 670をお迎えして2ヶ月が経過

コロナ禍の3年半前にお迎えしたLEICA MP 0.72で、ライカならではの官能的で美しい所作とブラックペイントならではのエイジングを堪能し、さらに1年半前にはLEICA M10-Pも入手してフィルムもデジタルも包囲しました。これでもう、カメラ沼から脱したと信じて疑いはありませんでした。実際、この2台でストリートスナップを中心に写真撮影を楽しみ、満ち足りた日々を過ごしていました。

しかし恐ろしい事に、新たなカメラ沼が待ち受けていました。それは中判フィルムカメラです。日本に一時帰国した時、美容師でカメラ趣味人の雨宮さんの影響を受けて、国産中判カメラの魅力に心が奪われてしまいました。それが気になってから、様々な国産中判フィルムカメラをチェックする日々が始まりました。ライカで満ち足りた日々を過ごしていたはずなのに、何故、このような邪な欲望が湧いてくるのか、自分でもこの欲望がコントロールができないのです。カメラ沼とは何て恐ろしいのでしょうか。当然、カメラが沢山あれば良い写真が撮れる訳でもなく、単なる物欲だけしかありません。

そして、私にとって初めてとなる中判フィルムカメラ、Plaubel Makina 670をお迎えして2ヶ月が経過しました。これまで、KODAK Tri-X、KODAK EKTACHROME E100、ILFORD HP5+、CineStill 400Dで撮影してきました。また、35mmフィルムでパノラマ撮影も楽しみました。ここで、このカメラの感想をまとめたいと思います。

中判フィルムカメラ沼を回避するカルトカメラ

中判フィルムカメラは、様々な種類があり価格も様々です。その中でPlaubel Makina 670は、カルト的な存在感を放っています。基本デザインを担当したのは、ドイツ人デザイナーのUdo M. Geissler氏で、コニカの内田康男氏が設計しました。レンズは、ニコンが供給したNIKKOR 80mm F2.8です。製造は当初コニカでしたが、このMakina 670はマミヤが担いました。つまり、日本メーカーのアベンジャーズみたいな体制で作られた特別なカメラで、所有感はとても高いです。レンズ固定式のため、レンズ沼から回避できるのもありがたいです。
中判フィルムカメラとしては高価で流通していますが、これさえ手に入れれば他の中判カメラに対する散財欲が無くなり、結果として安く済むという計算です。今のところ、この計算は間違っていなかったようです。

シンプルかつ完成されたデザイン

一言で言えば、四角と丸で構成された超シンプルデザインです。とくにレンズの存在感は際立っています。この、やたら大きく見えるニッコールレンズの存在感は、Makina 670のボディデザインを決定付けており、デザイナーの強いこだわりだったようです。首からMakina 670をぶら下げてフォトウォークをしていると、この大きなレンズはかなり目立ちよく声を掛けられます。これはストリートスナップを楽しむ私としてはありがたく、声を掛けてくれた人には必ず写真を撮らせていただいています。

レイモンド・ローウィのストリームラインを彷彿させるリブも、デザインのアクセントとして効いています。初期モデルのMamiya 67はリブがないスムースなボディデザインでしたが、670はグリップ性能を高めるべくリブがデザインされています。このリブが、よりメカニカルで精悍な印象にしています。個人的には、この670のデザインが好みです。

レンズを折り畳んだ時の薄いボディは、携帯性を高めています。私の場合、LEICA MP 0.72がメイン機材なので、Makina 670とLEICA MP 0.72の2台体制、さらにM10-Pを入れた3台体制でフォロウォークをします。そのため携帯性はとても重要です。Makina 670の携帯性は、私の運用にとって大きなアドバンテージとなりました。

裏蓋開閉ロックのデザインがPlaubelのロゴをイメージしており、細部まで徹底的にこだわっています。こういうディテールからも、このカメラへの愛着を高めてくれます。

独特の操作性と高い質感

最も独特な操作性は、フォーカシングが上部ダイヤルで操作する方式であることです。しかし、意外なことに操作性は悪くありません。シャッターボタンの同軸上にあり、大きなダイヤル径ということで、むしろ使い勝手が良いと感じるくらいです。これは意外でした。フォーカシングを操作すると、X状の金属フレームが伸び縮みするギミックが格好よく男心をくすぐらせてくれます。

もう一つの独特な操作性を挙げれば、フィルム巻き上げレバーがダブルストロークなことです。初期型のLEICA M3と同じですね。Makina 670を使った後に
LEICA MP 0.72を使うと、ついついダブルストロークをしようとしてしまいます。

内部露出計は、必要な時にだけボタンを押して作動させます。ファインダー内では、3つのLEDで表示されます。露出オーバーは赤い「+」、露出不足は赤い「-」、適正露出は緑の「•」です。露出計を作動させなければ、ファインダー枠しか表示されていないので、ファインダー内がとてもシンプルで被写体に集中できるメリットがあります。

じっくりと細部まで

10枚しか撮れないということもあって、撮影するときはじっくりと構図を決めて露出を測り、シャッターを切るというスロースタイルです。35mmフィルムカメラの
LEICA MP 0.72でも、じっくりと撮影するスタイルですが、それよりもゆっくりです。一方、デジカメのLEICA M10-Pはパシャパシャ撮っています。撮影するスピードによって、アウトプットのテイストが変化するので、それも面白い効果です。

細部まで描写された銀塩プリントは、吸い込まれるような感覚を覚えます。やはりブローニーフィルムは、大きなサイズでプリントしたくなります。

リバーサルフィルムのインパクト

35mmフィルムカメラでは自家現像中心のモノクロームフィルムばかりでリバーサルフィルムをスルーしていましたが、折角の6 x 7という中判フィルムカメラの中でも大きなサイズなので、それを堪能するべくリバーサルフィルムをトライしました。

驚いたのは、そのリッチな色彩とビビットな描写です。ライトテーブルにフィルムを乗せてルーペで覗くと、その中に別の世界があるような感覚に見舞われます。ポジフィルムの魅力の一つは、ライトテーブルの上でルーペで覗くという行為ではないでしょうか。

パノラマ撮影も楽しめる

35mmフィルムを使って、パーフォレーションまで写るユニークなパノラマ撮影も楽しみました。

パーフォレーションの部分まで映ると、確かにひと味違う印象になります。中判フィルムカメラを楽しむ幅を広げてくれます。構図においては、上下方向はファインダー内に示されないのでざっくりとした構図になりますが、仕上がった写真を見てみると、構図に失敗したというのは無かったので安心しました。

まとめ

ストリートスナップに最適な画角(35mm換算で約40mm)と携帯性、ニコンのシャープでヌケの良い描写。6x7というブローニーフィルムの醍醐味を堪能できるフィルムサイズ。所有感を高めてくれるデザインと質の高いビルドクオリティ。買って良かった中判フィルムカメラです。

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