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ビックリマン・シール 『カナガワの鱒釣り』5

 大体のシールが揃っていて、僕の持っていないヘッドはもちろん、見たことのないものですら、彼のシールアルバムには入っていると聞いた。

 僕のコレクションにヘッドは二枚、ヘラクライスト、ノアフォーム。
他校から転校してきた彼が、シールの交換を要求してきたのは、僕のノアフォームが欲しいからだった。損な話ではないと彼は言った。

 教室では最近流行りだしたヨーヨーをしている男子がうるさく、僕と彼は教室の隅で交渉をしていた。二人きりの中休みだった。

 お守りなら5枚、天使なら3枚、ヘッドなら1枚、どれでも好きなものを選べと言われた。僕は越してきたばかりの新しい友達を信用するにはまだ早いと感じていた。そこでこう申し出た。

 「お守りと天使はいらないよ。ヘッド3枚となら交換してもいいよ。ダブってるのもあるんでしょ? それならいいじゃん」

 彼はほんの数秒、2秒くらい、僕の顔を見つめて、黙ってシールアルバムを開いた。

 スーパーゼウス、スーパーデビル、サタンマリアの三枚を彼は取り出してくれた。僕は鼻息が荒くなっていた。

 「先生に見つかるといけないから、すぐにしまって」と彼は言った。僕はシャツのポケットにその三枚のシールを入れて、放課後を待った。

 早足で家に帰り、兄からもらったばかりのシールアルバムを僕は開いた。ポケットから取り出すとキラキラと光る三枚のヘッドは神々しく、僕の胸もキラキラと輝くようだった。

 シールの裏を見てみると、左上にロッチと書いてあった。







読んでくれてありがとう。明日も元気で!
多分僕もまた来ます。


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