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IPOトーク:7114フーディソン

みなさま、こんにちは。「もこもこ」です。
普段はTwitterで株式投資に関する情報発信をさせて頂いております。

Twitter ⇒ mokorpho3653(モコルフォ)

今回は2022/12/16に上場する
7114 フーディソンについて
12/13に行ったスペースの原稿記事を
まとめたものです
私個人としては
フーディソンと同じ業界に携わっていることもあり
参考になる話もあるかと思います。

①IPO概要

上場日12/16(金)
公募価格:2300円
時価総額100億円
吸収金額28億円
(2300円に対するPSRは2.78倍、PBRは5.7倍)
2018-2022年まで5期連続赤字でしたが
コロナ禍からの回復で
23年3月期2Q時点で2.2%の営業黒字を計上。
(21→22→23年の粗利率と売上高販管費率)
粗利率34.9→34.7→37.2% 
販管費率36.5→35.3→35.0%
なお
23年3月期通期決算は
売上50億円
営業利益1億円内外を見込んでいるみたいです
※営業利益率は約2%程度

②事業内容

1)飲食店向け生鮮食品EC「魚ポチ」
→2382百万円 構成比66.4%
2)消費者向けの生鮮小売店「サカナバッカ」
→ 871百万円 24.3%
3)フード業界の人材紹介エージェント
→337百万円 9.3%

③競合・類似他社について

1)八面六臂(はちめんろっぴ):非上場
非上場で業績は詳細不明だが年商10数億~20数億円規模、損益は赤字と思われる。豊洲市場に拠点を設け、魚ポコと同じような事業を行う実質ライバルとなるベンチャー企業である。ZOZONEXTや シンメンテHDの代表が社外取締役を務めており、元チェンジ福留社長が社外取締役だった   

2)7687ミクリード:時価総額19億円、来期予売上42億円、最終益0.7億円
飲食店向けに業務用冷凍食品を販売するECの運営。
冷凍食品が中心でフーディソンとは扱い商品は異なるが客層は魚ポコと同じ飲食店向けが中心。粗利率は30数%で、現時点のフーディソンの粗利率とさほど変わらない。

3)8039築地魚市場:時価総額56億円、来期予売上570億円、最終益2.9億円
豊洲市場の独立系大卸(鮮魚~冷凍水産物等を扱う)で仲卸へ販売している
他にも市場大卸の上場企業はあるが、フーディソンの時価総額や利益規模に一番近いかと。

4)3541農業総研:時価総額79億円、来期予売上62億円、最終益0.25億円
青果を生産者から直接仕入れ直売するのほか、富山の青果大卸を買収した。
青果扱いで水産ではないが、流通改革を謳っている点は方向性としてフーディソンと類似しているかもしれない

5)2683魚喜:時価総額28億円、来期予売上99億円、最終益0.3億円
鮮魚小売り店41・寿司店8、首都圏中心にテナントをチェーン展開。
小売業態のサカナバッカより大きな鮮魚小売りチェーン。非上場企業でも角上魚類など、魚喜より大きい小売り特化の魚屋チェーンがいくつか存在する

6)6558クックビズ:時価総額34億円、来期予売上14.8億円、最終益2.4億円
飲食業界特化の求人サイトを運営している

④フーディソンの強み・プラスポイント

1)主力事業の生鮮ECコマースは大手企業やネットスーパーが現状参入できておらず、今回のIPOによりそのシステムをビジネス構築できている唯一の上場企業となる。
※他社でまともに事業として運営出来ているのは個人的には西友のネットスーパーくらいだと思います

2)役員がプライム上場、医療向け人材派遣2175SMS(時価総額3185億円)出身者が多く、経験値的に言えばある意味プロ経営者の集まり。方法はどうであれ、時価総額を上げるというノウハウ・経験を持ち得ているのではないのでしょうか。

3)会社側いわく、生鮮流通業界はDX化が遅れており改善余地がある(食品EC化率4%程度)またDX化による利益率の改善(現状の粗利率は35%前後)が見込めるとのこと。

4)扱いが生鮮品ということから在庫の回転率が高く、倉庫や設備に大がかりなものが不要
※ラストワンマイルについては後述

5)小売り業態のサカナバッカはJR東日本との資本業務提携を行っていること魅力的な出店が可能・・JRエキナカなど。またJRの交通網を利用した高鮮度を謳った水産物のブランディングと営業展開(価格競争力があるのかは、わかりませんが)

6)2022年4月以降、アフターコロナが鮮明化となり業務用食品業界の回復傾向が顕著に。3Q以降も業績面は強気にみており、このタイミングでのIPO実施となった

⑤フーディソンの弱み・マイナスポイント

1)メイン業態の魚ポコは顧客からECで注文を受ける形態であるが、仕入れについては産地からの直接買付は少なく、従来の業者同様の仕入ルート(大卸もしくは仲卸から)がメインの状態。現状の事業体はいわゆる普通の「仲卸」と変わらず、成長余力がどの程度あるのか、よくわからない。不透明。
・鮮魚小売りチェーン中島水産子会社の仲卸、カネカ商店で売上60億円、利益1200万円
・業務用食品卸2708久世の子会社の仲卸、旭水産で売上27億円、5000万円の利益。
→水産のみならず青果業界もそうであるが「仲卸」は人的ソースなど経費が掛かる傾向にある業態で、ビジネスとしての妙味は薄いと言わざるを得ない。
→産地から直接仕入れる形で中抜きができれば良いが現状は大卸や仲卸経由の仕入が多く、EC化導入やオペレーションにDXを導入し現状は30%超の高い粗利率を確保しているものの、これを維持できるのか不透明。

2)顧客へ直送を行うため、自前の設備・人員を保有している。これらを外へ業務委託しているミクリードと比較すると、ラストワンマイルを行うためのコストが大きい。 裏返せば非効率であり、売上が大きく伸びてこないと、この投資やコストが重くのしかかってくることになる。
なお効率化の目安として
従業員1名あたりの売上は
2361百万円/114名=20百万円
※ミクリードは2128百万円/18名=118百万円

3)八面六臂が未だに赤字、SENDがサービス終了など、生鮮特化ECはいまだ厳しい環境と考えられる
※アフターコロナ後がどうなるか?

4)扱い品目が生鮮食品中心ということから取引上のトラブルリスクも冷凍食品に比べると高い。
→例えばアニサキスや顎口虫等のニュースは需要動向に影響しないか
→生鮮流通をEC化できたノウハウは素晴らしいが、今後成長する上で取引上のリスク/歪みが出てこないか心配な点もある。
→DXが進まない背景のひとつとして、生鮮流通においては「鮮度」をはじめとした目利き・チェック機能が欠かせない。という構造上の問題がある

5)フーディソンのようなビジネスは市場法の改正が背景(仲卸の直荷引き禁止の解禁)になっているが、市場法の改正により民間企業が市場を開設するのが可能となった。今後大資本のライバル会社が参入する可能性は否定できない
※上記のように楽天は西友と組んでネットスーパーを展開している。産直強化のため大資本が参入する可能性は十分ありえる

6)ARPUが8.7万円前後で推移しているのは、企業努力も一因といえるが、どちらかといえば魚の市況に左右されやすいのでは?また現状からこれ以上ARPUの伸びしろがあるのか疑問 
※ミクリードは顧客1万件でARPUは3.4万円(コロナ禍でARPUは以前に比べ減少した) 

7)業績推移構造が需要期の3Q(10-12月)で稼ぐ構造となっている。2Q(7-9月)は夏場で鮮魚需要が落ちるため、2Qまではなかなか数字が出にくく年間の見通しが出しにくいため、1~2Q時点で上方修正等の期待が薄い傾向にあるのが投資家にとってあまり良い印象にはなりにくそう

8)売上拡大のため顧客数も伸ばす必要があるほか、店舗出店や広告に積極的にコスト投下(投資)する 必要がある。現在のところは配当を出すどころか、IPOにより財務は好転するものの、今後のファイナンスは否定できない。

9)メイン業態がいわゆる「仲卸」なので、従業員の労働時間は夜中から昼というのが、あたりまえになるのだが、人手不足の中で果たして成長を描けるほど人材があつまるのか
※この部署の人員は正社員を使っておらず、夜中0時半始業・時給1750円~で従業員を募集している。

⑥今後の見通し

1)業務用向け生鮮流通プラットフォームがどこまでマーケットに評価されるのか?
ミクリードは生鮮流通プラットフォームではないが、飲食店向け業務用食品ECの先駆の上場企業で類似他社としての比較するなら一番適切な企業と思われる。売上高はフーディソンより多く、コロナ禍から回復して、ようやく2023年期に黒字復帰するとみられるがミクリードの市場評価は時価総額20億円程度に過ぎない。

2)といっても他社がやれてこなかった生鮮流通に一石を投じるシステム構築ができているのは一定の評価をすることは出来る。
企業価値次第にはなるが、フーディソンに対して魅力を感じる企業は今後出てくるのでは?
→例えば、顧客が類似しているミクリードと手を組めば生鮮&冷凍の飲食店向けECができる 。ミクリードは国分が資本参加している。国分を軸にタッグを組む可能性はあながち否定できない。
→市場を運営しているマルハニチロや中央魚類などもシナジーを得られることからグループに組み込むメリットはありそう
→市場に資本参加している(東都水産の経営権争奪戦にも参加していた)養殖魚卸のヨンキュウも、フーディソンは有望な販路となるため、魅力的に映るのでは?
→ECという括りで考えればZHDやアマゾンなども考えられる。現時点楽天と西友のネットスーパーはきちんと運営されており、それに対抗するのであれば、フーディソンのノウハウは魅力的。

3)大を飲み込む展開も想定、現在は大卸や他の仲卸から仕入をしている背景から、農業総研のように上場・非上場問わず卸売市場を買収するメリットはあると考えられる

4)生鮮プラットフォームという展開を考えると、青果業界にも同じように展開できると考えればこちら側での成長余力もありそう(水産業界と青果業界は現状、はっきり分かれており、一体化された企業は少ない)

5)ブランド力が向上すれば、サカナバッカのさらなる店舗展開・FC展開も可能と思われる。※サカナバッカブランドの飲食店等

6)需給面で心配な点は、役員が上場企業のSMS出身者。SMSからExitしている経緯もあり、IPOが完了したら最後まで経営関与するのではなく、早かれ遅かれExitを考えている可能性はあるかもしれない
※12.13にIPOしたばかりのeSport運営会社ウェルプレイドの取締役:副島氏が株式を売却。
ロックアップが外れたら需給面は・・・?

↓参考記事

『結局、私自身は(SMSで)IPOすることを1つのマイルストーンに置いて会社に関わっていたので、IPOした後に目的を見失ってしまったと思いましたね。(中略)(SMSの)創業期からいるため、キャピタルゲインも十分もらっている状態』

フーディソンもこうならないようにお願いしたいところです。

『我々が「産直事業」と呼んでいる、魚を買って、魚を売るということを、まずはしっかりやっていきます。それがしっかりでき上がったら、オープン化していく動きをやっていきます。』

これは私も同じ業界に携わる人間として
ぜひフーディソンさんには実現の一端を担って欲しいと思っております。

残念なことに魚の需要は年々減少
そして水揚げもどんどん減少、漁師さんも減少
このままでは
日本における水産業界の将来は暗雲です。
その風穴をフーディソンにぜひ開けて欲しいを願っております。

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