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失恋から丸一年。神様が私好みのイケメンを送り込んできた


今年も文化の日がやってきてしまったという恐怖に、私は怯えていた。
一年前の文化の日、私は「絶対脈アリだろ」と思った相手に告白し、振られるという人生で忘れられないトラウマを残す一日を過ごした。

その日は、家にひきこもりたい気持ちで満々だったが、会社の行事の下準備のため、同僚と休日会わねばならず、しようがなく重い腰を上げた。
同僚は待ち合わせの時間に「今起きた」と連絡してきて、私は朝から30分も待たされることとなった。やはり、このXデーには、不吉な匂いがした。

そんな折、友達と何気ないLINEをしている最中、私が鉄のパンツを貫いている話になった。
性欲はわかないのか、と心配する友達に、ハグはされたい、と己の欲望を打ち明けた。

「そこらへんのイケメンに1000円払うからハグしてくんない?っていいたい気持ちだわ」

とあいもかわらず、頭のおかしい私を見かねたのか友達が飲みに誘ってくれたため、フラフラと向かうことにした。

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友達は彼氏と別れる寸前、みたいな状況で、とても病んでいたため、
その話を肴にしつつ、チーズタッカルビをつついた。
直近、私の周りでは別れラッシュが来ており、20代後半になると、
「いつ結婚するか」「結婚への温度感の差」が別れの原因になるのだなあと強く痛感している。(残念ながらまだ実感はしていない)

仕事、結婚、いつ子供を産むか、そもそも産めるのか・・・
悩みは尽きないアラサーの飲み会の時間はあっという間にふけていった。

友達と、またすぐ飲もうと誓いあってバイバイしたその瞬間。

「おつかれさまです」

と謎の男に声をかけられた。私は一瞥もせず、無視して歩きだしたが、数歩あるけば、ちょうど信号待ちだったため、ナンパ男の話を聞く羽目になった。

「綺麗だなーと思って声かけちゃいました」
「一杯だけでいいんで、飲みいきませんか」

あまりにしつこいので顔を上げると、

ものすごいイケメンが目の前に立っていたのである。

私は、ヒールを履くと172〜3くらいのまあまあな大きさになってしまうのだが、見上げなければ顔が見られないくらい身長が高かった。
髪は黒髪でセンター分けで、韓国ドラマに出てきそうな爽やかさ。

急速に、ホストかマルチか宗教か・・・と私は判断した。

「明日早いんで、すみません」

信号が青になったので歩きだすと、彼は追いかけてきた。

「いや、起こすんで大丈夫です。朝、強いんで。」
「いや、大丈夫です。私、性欲ないんで」
「え、まじっすか?」
「お兄さんホストですか?」
「いや違います、昔ちょこっとやってたけど、昼職です」

駅までならいいかーと思い、雑談をしながら歩くことにした。
こんなイケメンと並んで歩かせてもらえるなんてなかなか無い機会だぜ、と優越感に浸ってもいた。

「本当に性欲ないの?」
「無いよ、2年以上してないよ。」
「えええーーー!もったいない!」

話を聞くと彼は26歳で、一人で焼き肉を食べにきたという。私のことを美人だ美人だと騒ぎたてるが、私よりよっぽど綺麗な顔をしていた。
しかし、いくらイケメンでも、ここで彼とどうこうならないのが2年以上鉄のパンツをしている理由でもある。
どこか俯瞰して自分を見ているもうひとりの自分がいて、常にクールに振る舞ってしまうのだ。

「彼氏ほしくないの?」
「今はあんまりほしくない。あ、でもハグとかはされたいな。」
「えーハグはされたいのに性欲はないの?」
「そうだよ。てっか私、イケメンにハグしてもらいたいってさっき友達と話してたんだよね。性欲ないけどさ、ハグだけしてもらえない?

とんでもないお願いに、彼は「自分で良かったら」と両手を広げた。
駅につながる階段の前で、私は「やったー」といって抱きついた。
ポンポンと背中を優しく叩いてもらい、

ハグでストレス3分の1減るってホンマだわと思った。

まじありがとう、と手を振る私に、彼は改札まで送っていくね、と言って、付いてきた。

「ねえねえ、こんなふうにハグしても興奮しないの?」
「しないね」
「まじかよーーーとりあえずLINEだけ交換しよ」

彼はそういってQRコードを差し出してきたので、一応LINEだけ交換しておいた。
バイバイ、と言って改札の中に入り、さっきまでの出来事が笑けてしようがなかった。


電車の中で、ふと、失恋から1年間、頑張ってきた私に神様がくれたご褒美なのかもしれない、とすら思った。
こんなイケメンにハグされるなんていうボーナスがあるなんて・・・
頑張ってればいいことあるよね、と思いながら、二度と会わないであろうイケメンの彼にありがとうございます、と手を合わせたのだった。


▼1年前の失恋の話はこちら


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