なぜ薬に賦形剤を入れるのかという話

先日、薬局と一悶着(?)あった。

まずはこの写真を見てほしい。

(見にくくてすみません。娘が寝ているので暗闇で撮影しました。)

この2つの袋に入っている薬は、娘の飲んでいる薬の中で一番大事なステロイドの薬です。どちらも、コートリルという同じ薬です。
さて、

これ、同じ量に見えますか…??

明らかに左の方が多くないですか??


娘は、副腎という腎臓の上にある小さな器官が生まれつきない。
そのため、本来副腎で作られている生きるために必要なホルモン(ステロイド、と言えば誰もが聞いたことがあるだろう)をコートリルという名前の薬で補っている。

薬は一生飲み続けなければいけないし、飲み忘れると副腎クリーゼ(副腎不全)に陥り、最悪の場合死んでしまう。
娘はそんな体なのだ。
だから他にもたくさん薬は飲んでいるが、とにかくそのコートリルだけは切らしてはいけないのだ。

そして娘が今必要としているコートリルの量は0.85mg×1日4回というごくごく微量である。(体重や血液検査の結果によって量は変わる)

今回のこの薬は、往診医に出してもらっている外用薬(塗り薬)を届けてくれる訪問薬局に、初めて調剤をお願いしたときのものだ。

処方箋を出したとき、そこの薬剤師さんに病院では賦形剤(ふけいざい、簡単に言うと薬をかさ増しするための添加剤で、乳糖やデンプンを入れることが多いらしい)を入れているのか聞かれた。

いや、知らん…

「娘ちゃん、経管栄養ですよね?それなら賦形剤は入れないでおきますね!詰まったら大変なので!」と言われたので、あ、はい、お願いしますとお答えした。

果たして今まで賦形剤は入っていたのだろうか。分からない。


薬を受け取り、コートリルを確認してみると、病院から薬をもらっていたときの量よりかなり少なく感じた。そりゃそうだよな、1包0.85mgだもんな…。ということは、今までは賦形剤が入っていたってことか。と妙に納得した。
(じゃあなんで詰まりの原因になるような賦形剤を病院ではわざわざ入れていたのか、という疑問も頭に浮かんだが、素人が考えることでもないよなとそれ以上深く考えずにいた。)

でもこれ、袋の内側に付いているわずかな粉も残しちゃいけないよな…怖い。

そう、正直怖かった。
だってこの0.85mgの白い粉に娘の命がかかっているのだから。
夫とも相談し、袋の中を念入りに水で流しながら薬を飲ませることにした。


薬を受け取ってから三日後。
1年半ぶりに行くデイサービスの準備をしていたとき、私は異変に気付いた。
それがはじめに載せた写真だ。

これは絶対に入っている量が違う。どう見ても違う。
念のため、1週間分ほどの薬を確認してみたら、やはり量にばらつきが見られた。
ちょうどその時、訪問看護師さんが来ていたので、一緒に見てもらった。

「お母さん、これは今すぐ薬局に電話したほうがいい!」

で、ですよね…!
あまりこういうことで電話するのは得意ではないのだが、いやでも娘の命がかかっているんだ。迷っている暇はない。

意を決して薬局に電話し事情を説明すると、驚きの返答があった。

要約すると、1包の薬の量が少ないので、どうしても誤差が出てしまう。こちらにも限界がある。ということだった。

いやいやいやいや、ちょっと待ってくれよ。
主治医はその0.0何mgの調整を毎月慎重に重ねてくれ、その結果今の娘がいるんだ。
限界があるとか、え、ちょっと何言っているかわかんないっす。

いつも冷静沈着温厚篤実な私(嘘ですごめんなさい)もさすがにカチンときた。
それでも感情的にならず、この薬を調整してきた経緯や、病院ではもっと量が多かったから賦形剤が入っていたのではないかということを伝えると、病院の薬剤科に確認して、病院と同じように調剤し直してもらえることになった。

訪看さんにそのことを話すと「当然よ!いざとなったら私が電話代わろうかと思ってたわ!」と一緒に怒ってくれた。


数時間後、出来上がったので今から配達しますという連絡があり、届けてもらった。

その際、私はどのように調剤しているのかを聞いた。人の手でやっているのか、機械なのか。その薬局では、機械でやっているとのことだった。

円盤状に薬剤を広げ(娘のコートリルの場合は錠剤からすりつぶし)、そこから機械で均等にすくいあげるので、薬剤の広がり方次第ではどうしても誤差が出てしまうらしい。

そこで重要になるのが賦形剤だ。
病院の薬剤科に確認してもらったところ、10倍にかさ増しして調剤しているとのことだった。
10倍にかさ増しするということは、本来の薬そのものの誤差は10分の1になるという計算だ。

納得した。
そりゃ見ただけで違いが分かるような誤差が出るわけだ。

すみませんでしたと謝ってくれ、あ、はい~なんて呑気に返事したが、私は正直もうこの薬局には頼みたくないなと思ってしまった。


いや、誤差が出ることが許せなかったのではない。
私も一応、理科教育に携わっていた身なので、誤差の概念に対しての理解はある。
高校になると、たいてい年度初めの授業のあたりに誤差の概念を学習するのだ。
科学の世界においては、誤差はどうしても出てしまう。だから繰り返し何度も実験して精度を上げていくしかないのだ。

今回の件もそうだ。薬剤の量が少なければ少ないほど、そこで生じる誤差は大きいものになる。
だから賦形剤を足すのだ。誤差を小さくするために

私が許せなかったのは、薬剤師というお薬のプロである人たちが、誤差のことを考慮せずに、経管栄養だから混ぜ物はないほうがいいわよねという思い込みで薬を調剤したことだ。
そのごくごく微量な薬に、娘の命がかかっているというのに。
ステロイドだから、少なくても多くてもダメなのだ。そこらへんはプロなのだから、よく分かっているでしょう?なのに…。

薬局とは特に契約があるわけではない。だからこそ、信頼できるかどうか、ただそれだけだ。私にはもうこの薬局は無理だ。例えこの先ミスがなかったとしても…


今回の件で、まずは娘の体調に変化がなかったことが一番の幸運だった。
そして、命に関わる薬の大切さ、それを試行錯誤しながら慎重に調整してくれる主治医と調剤してくれる薬剤師さんへの感謝を改めて感じた。

この記事を読んでくれた方の中にも、我が家のようにお子さんが命に関わるような大事な薬を毎日服用しているという方も多いと思う。
子どもは特に体が小さいから、必要な薬の量が少量になる場合も多い。

なので、ぜひ、今回の私の経験を頭の片隅に置いていてもらえたら、と思う。
特に病院で出してもらっていた薬を、初めて院外の薬局で処方してもらうときには注意してほしい。
不明なことがあったら、薬局側からかかりつけの病院の薬剤科にしっかりと確認してもらうことをお勧めする。


どうか、大切なあなたのお子さんが少しでも快適な在宅生活を送ることができますように。



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