見出し画像

【読書感想】「多摩川物語」 ドリアン助川

読了日:2017/10/17

Amazonで購入する

映画撮影所の小道具係を辞めようかと悩む隆之さん、客の少ない食堂で奮闘する継治さん、月明かりのアパートで母をしのぶ良美さん…。
多摩川の岸辺の街を舞台にくりひろげられる人生のドラマ。「黒猫のミーコ」ほか、名もなき人びとの輝ける瞬間が胸を打つ連作短篇集。

この本の概要

小説です。
短編で重すぎず、さくっと読めそうだから買ったんだと思います。
重たい小説は、最近全然読む気になれないんですよね。

内容は多摩川沿いに暮らす人々の話で、全部で8篇。
それぞれのお話の中で、少しずつ登場人物がかぶるんだけど、最後に彼らがまとまってどうにかなるとか、そういう驚く展開はないです。
全体を通して、静かで、少し悲しく、少しあったかい、そんな感じの内容が多いです。

満月の時間はほんの少し

登場人物みんな、どこか満たされてなくて、ある部分をあきらめたり、妥協したりしている。
ある人は旦那に、
ある人は夢に、
ある人は親に。

最後のお話が「月明かりの夜に」というタイトルだからなのかもしれないけど、少しセンチメンタルなことを思ったりしました。
生きるということは、月の満ち欠けと一緒で、満月の時間はほんの一握り。しかも、その満月の時期も曇りで見えないことも多いから、みんなどこか欠けた状態で人生の大半を過ごしてるんだなぁ、と。

ワタクシ的名文

「人として、こういう見方が間違っているのは、お父さんにもわかるよ」
父親はそういう前置きをした。
「こんな時代だから、生きてりゃいろいろある。ホームレスになってしまう人もいるだろう。
でもはっきり言おう。一生懸命真面目に働いていれば、人はホームレスなんかにはならない。これは事実だ。
どこかであの人たちには油断というか、怠惰な時期があったんだろう。もちろん、だからといってあの人たちを見殺しにするような国ではないけどね」
(中略)
「あの人たちが盗みを働いているという噂もある。やむにやまれずの場合もあるだろう。お父さんだって同情はするよ。でも、お前には一切関係ないことだ。お前は学校にも塾にも行っているんだから、まずそこで友達を作れ。その方がいい。だからあの人たちには今後一切近づくな。
「台風のあとで」より

名文というか、考えてしまったセリフです。
学校でちょっと浮いてる男の子が、河川敷のホームレスと仲良くなり、そのことを危惧したお父さんが息子に言ったセリフ。

うーーーーーん。
自分だったらどうするんだろう…。

自分の息子がホームレスに嫌がらせとか暴力ふるっていたら全力で叱ることは確定だけど、自分の息子がホームレスと仲良くなってそれが噂になったとして、別にみっともないとか思わない気がするんだけど…。

息子じゃなく自分自身がホームレスと話せって言われたら、
「においがくさいし、長時間一緒にいるのきっついなー」とか、「お金たかられたら困るなー」とか思うことは正直あります。
でも、自分の息子がただ話し相手としてホームレスと話すぶんには止めない気がするなぁ。

現実でほんとにそうなったら、やっぱりこの親のように「付き合わないように」っていうのかしら…。
なんか…ちょっと…そうは言いたくない自分がいる。

お金をたかられることは、実際ありえるだろうから、
「話し相手としてはいいけど、お金とか物を要求されてもそれはちゃんと断りなさい」とは言うかもしれないけど。

あと、このお父さんは「一生懸命働いていれば、ホームレスなんかにはならない」と言ってるけど、そうなのかな…。油断や怠惰があったからホームレスになってしまうかしら?
私はなんとなくそうは思えない。

だれも手を抜いて生きているわけではない。地の底を這うような思いを今みんなが耐えている。それでも客の戻らない食堂や、倒産する看板屋が出てくる。これが現実だ。
「花丼」より

さっきのホームレスの人たちも、限界を迎える前はこういう心理だったんじゃないかなぁ、と思うんです。
どこかで耐えられなくなったり、どうにもできなくなっちゃって、投げやりになってホームレスになる…。果たしてそれは「怠惰」とか「一生懸命働いてない」というんだろうか。

「言われたことだけやって、自分で考えないからだ」とか、
「努力の方向性が間違えてる」とか、
「知恵を出さず、ただ闇雲に継続していることは頑張ることではない」とか、
まぁ厳しい言葉を言おうと思えばたくさん言えます。
でも実際、それができる人たちばかりじゃないよねぇ…と思うんです。

不器用さんが不器用に生きた結果、心が折れてしまっても、それは不器用さんの自己責任で、そんなに生きにくくうまくいかない世の中でも、心折らずに生きなければならないのだろうか。そこで心折れずに生きていける人ってどれくらいいるんだろう?
果てしなくしんどいなぁ。
生きるって。

どの短編も面白かったけど、私が個人的に好きなのは、「黒猫のミーコ」と「月明りの夜に」です。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

また見に来てネ!私もスキ…。
3

mokoron

41歳の会社員。 男子3兄弟(9歳、6歳、1歳)の母。趣味は、キャンプ、Bリーグ観戦、読書など。 読書感想文書いたり、Bリーグの観戦記録書いたり、日々のくだらないことを書いたりしてます。

2017年の読書記録

2017年に読んだ本の記録です。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。