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各国紹介(北アメリカ) バハマ

地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。
地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。

本日の一国は「バハマ」
フロリダ半島の南東に広がる3000近い島と岩礁からなる国。美しい珊瑚礁の島々からなり、コロンブス初上陸の地ともされます。
では、参りましょう。

場所
国旗
国章

バハマ国は、最も大陸に近い所ではアメリカ合衆国、フロリダ半島の南東およそ80㎞から最大幅800㎞に渡って広がる島国です。
この80㎞という距離は、博多港から壱岐の距離とそれほど差がない、と考えるとかなり近いことがわかります。

島の数はおよそ700、岩礁の数は2000ほどで、有人島はおよそ30。サンゴ礁由来の島々が多く、基盤岩は石灰岩で構成されています。
国土面積はおよそ1.4万㎢。人口は41万人ほど。
特筆すべき点は、国土面積に含まれる水域の割合の高さで、世界1位の27.9%。
「森と湖の国」と呼ばれるフィンランドでさえ10%に届きませんから、その水域の割合の圧倒的な多さがわかります。
原因は、さんご礁の地形が持つラグーン(礁湖)の存在です。

バハマの衛星写真


ラグーンの空撮

国名はスペイン語の「引き潮(baja-mar)」から由来しているとされます。
標高の低い岩礁や環礁が多く、引き潮で海面上に顔を出した島々を見て名付けられたものと考えられています。
実際、国の最高点は63mに過ぎず、大半は海抜ギリギリの高さの低地です。

最大の島はアンドロス島ですが、首都ナッソーはニュープロヴィデンス島にあります。

また、バハマの島の一つ、サンサルバドル島は、1492年にコロンブスが初めてアメリカ大陸で上陸した島であるとされています。

コロンブスの航路

彼は島に上陸後、この島の事を「聖なる救世主(San Salvador)」と名付けましたが、17世紀にこの島に初めて定住したイギリス人、ワトリングに因んで「ワトリング島」、或いは先住民の言葉で「グアナハニ島」とも呼ばれます。

コロンブスの上陸当時、この地域にはタイノ族(カリブ海における先住民)が住んでいましたが、ヨーロッパ人がもたらした疫病、そして奴隷化による過酷な強制労働によりほぼ絶滅してしました。
その結果、16世紀初め頃から17世紀半ばまで、この地域は殆ど無人だったと考えられており、この虐殺は驚異的なペースで進んだことが伺えます。

ちなみに、スペインはこの地域の開発には無関心であったことから、およそ100年に渡りこの地域は放置されてしまいました。
また、この地域は17世紀~18世紀にかけて海賊の拠点となっていた歴史もあり、ニュープロビデンス島にある首都ナッソーには、海賊ミュージアム(パイレーツ・オブ・ナッソー)があります。

気候帯

気候は熱帯が卓越し、熱帯モンスーン気候(Am)やサバナ気候(Aw)が広く分布します。
これは、メキシコ湾の温暖な海水の影響と、バミューダ海域の高気圧が南東の風を吹かせるからです。
この高気圧が弱まると北東貿易風が強まり乾季に、高気圧が強まると南東風が強まり雨季になります。

バミューダ高気圧

一方で、南部には高気圧の影響が年間を通して強いBS(ステップ)気候の地域が存在します。
いずれにしても気温の年較差は非常に小さく、首都ナッソーの1月平均気温は21.6℃、7月は28.5℃、降水量は1,400㎜。
また、低平な土地も相まって、ハリケーンの暴風雨や高潮の被害を受けることがあります。

石灰岩の基盤岩と大量の降水は、同国の地形を独特なものにしています。
例えばブルーホールなどはその典型で、重要な観光資源になっています。

ブルーホール

経済の柱は観光業と金融サービス業。
やや降水量が少なく、土壌流出が抑えられる南部を中心に土壌に恵まれた島もありますが、農業従事者は5000人に満たず、それほど盛んではありません。現在、食糧の8割を輸入に依存しています。

現状は、国の収入の半分は観光業関連という観光立国です。
島の中にはその名も「パラダイス島」があります。以前は別の名前でしたが、この名前に変え、更なる観光客の呼び込みを図っています。

パラダイス島

それ以外にも、ピンクの砂浜を誇るエルーセラ島など、特にアメリカからの観光客を満足させる見所、そして免税店での買い物などが非常に人気です。

エルーセラ島

また、世界有数の便宜置籍船国、租税回避地(タックスヘイブン)としても知られています。
2016年には「バハマ文書」と呼ばれる呼ばれる、租税回避地における個人や企業の活動に関する文書が公開され、世界の要人たちの名が多く連なっていたことなどから大きな話題になりました。
それ以前に公表されていた「パナマ文書」に次ぐ、大規模なリークとなりました。

また、2023年4月にはFTXという暗号資産取引所が破綻し、大きなニュースになるなど、日本では金融関係のネガティブなニュースで耳にすることが多くなってしまっている国です。

国民一人当たりのGNIは24290ドルと先進国並みに高く、カリブ海諸国で最も豊かな国です。

民族は85%が黒人、12%が白人系で、アジア系やヒスパニックが少数。
公用語はかつてイギリス植民地(現在は英連邦王国の一員)だったことから英語。他にクレオール語も用いられています。
宗教はキリスト教プロテスタントが圧倒的多数(8割以上)、カトリックが1割程です。

「大西洋の楽園」バハマ。
小国ながら、これまでも大国の需要を敏感に感じ取り、巧みな舵取りで産業を構築、国を富ませてきました。
美しい景色はカリブ海有数。安定した国情も魅力ですので、カリブ海観光の候補に加えてみては如何でしょうか。

今日はこれくらいで。


地理に関する動画を投稿しています。
各国紹介、一問一答、世界の奇妙な国境線、地図の歴史、国当てクイズ(ショート)などのシリーズを進めています。
また、地理系の偉人の業績についても取り上げていく予定です。
是非ご覧ください。


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