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5年振りに電子書籍端末を買ったら、電子ペーパーの進化に驚かされた

電子ペーパーというと、楽天koboやAmazon Kindleなど大手ネットショップに紐付いた端末を思い浮かべる方が多いと思います。しかし残念ながらこれらの端末は基本的に自社ストア限定の端末であり、スマホやタブレットに比べると自由度がありません。

一方、これから紹介するBOOXのように、電子ペーパーを備えながらもAndroidタブレットとしてGoogle Playストアが使える汎用端末も存在するのですが、レビューも少なく価格もそれなりにする為、手を出しづらい分野となっています。

そこで今回は先月購入したBOOX Tab Mini Cを紹介し、電子ペーパーの実態について語りたいと思います。

1. 電子ペーパーは遅くて粗い、と言われてきた

電子ペーパーはスマホやタブレットのような自発光するディスプレイではなく、白と黒の顔料が実際に動いて並ぶ事で文字や絵を表示しています。端末の画像を自然光の反射によって知覚する為、タブレットなどと異なり目が疲れにくいという特徴があります。また、電源を切っても表示されている画像が維持されるという特徴がある為、最近はスーパーの値札にも使われています。

そんな電子ペーパーですが、上記の通り顔料を動かす関係上、表示の切り替わりが非常に遅いです。また白黒である事や、チラつきや残像といった問題もある事から、ゆっくりとページをめくる、小説やPDFの文書、白黒のマンガを読む程度しか使用用途がなく、動きの速い動画はもちろんの事、カラフルで頻繁なスクロールを必要とするWebサイトの閲覧や雑誌などの表示には不向きでした。

実際、私が2018年に購入したBOOX Noteは10.3インチの端末でしたが、スクロールしてから1、2秒待ってから画面が切り替わるといった感じで動作はとても遅く、画質も2種類(標準モード・A2モード)ありましたが、切り替わる速度を優先したA2モード(色調がドットで見える粗いモード)してこのスピードだったため、実質的に画質は悪いと言わざるを得ませんでした。

私の使用用途は小説がメインだったので、私自身は特に支障はありませんでしたが、マンガは塗りが単調で粗くなるので人によっては気になる見た目ではありました。また、PDFなどドキュメントの閲覧やペンによる手書きメモ機能については、アプリの切り替えも画面の動作もとても遅く、まったく使う気になりませんでした。

iPad Air(第4世代)とBoox Note。文字は支障ないが、
絵の部分は情報量が大きく減ってる事が分かる。

2. 5年の進化と驚き

とは言え、こと小説を読むという一点においては非常に有用な端末であった為、5年のあいだ使い続けていたのですが、OSのバージョンも古くなった(Android 6.0)のとWi-FiがAESに対応していないという致命的な問題を抱えていた為、さすがに日常使いに支障が出てきており、買い換える事になりました。

特に今回出たのがなんとカラーの電子ペーパー端末である事。これがBOOXで3種類目という事で、さすがに技術もこなれて来ただろうという算段もあり、決断しました。

という訳で、購入したのがこちらのBoox Tab Mini Cです。C(olor)と名前が付いている通り、電子ペーパーでありながらカラー表示に対応した機種です。本来であれば、Boox Noteと同じサイズのBoox Tab Ultra Cを購入したい所でしたが、値段が相当お高いのと、満員電車で小説を読むには小さい方が使い勝手が良いという事で、敢えてこちらを選びました。

iPad Mini(第5世代)とBoox Tab Mini C。
Booxの方が一回り小さく軽いのとフチが
少し太いので、圧倒的に片手で持ちやすい。

さて、実際に使ってみるとその違いに驚くばかりでした。

まずはそのスピード。電子ペーパー端末を触った経験のある人はよくご存じだと思いますが、電子ペーパーは横にスワイプしてから1、2秒程待たないと反応してくれない、タップは時々失敗するなど、反応面で致命的な問題を抱えていました。

ところがMini Cはスマホやタブレットほどとは言いませんが、指の動きに追従してくれます。Webサイトのスクロールも試してみましたが、ヌルヌルとは言わないまでも、実用にはギリギリ耐えうるスピードで動いてくれます。

次にカラー表示の性能。もちろんiPadなどには負けますが、充分色は分かるような表示になっていました。

実はこれとてもありがたい事で、こういった全体的にカラーが使われているものを白黒で表示してしまうと、その色によっては背景と文字がどちらも白寄りになってしまい、文字が読めない。背景が小さい文字を侵食し、文字が読めないといった事が発生していました。それがカラーできっちり分かれる様になった事で、文字もしっかりと読めるようになり、雑誌でも問題なく読めるようになりました。これは非常にありがたいです。

iPadと比べると全体的に白っぽくなってしまうが、充分色は分かる。

ただし、色によっては、色合いの違い=色の違いになってしまってしまい、実際の色とは異なって見えるものもありました。雑誌やWebサイトを閲覧する程度であれば支障はありませんが、色が判別出来ないと支障のある文書(PDFで赤字が~とか青字が~といった凡例があるなど)には向きません。

左がiPad Mini、右がTab Mini C。写真はさすがに画像が粗くなる。
またPS5の背景の色が紫から紺に変わってしまっている。

3. 使い道とデメリット

さて、多少制約が残るものの、5年前のBoox Noteの時代から大きく性能が向上した電子ペーパーですが、具体的な使い方はどう変わったでしょうか。

基本的には、小説を読む為に使う事に変わりはありません。ただ、これまでは必要に応じて端末を持ち出していたのが、通勤カバンに入れっぱなしという運用に変わりました。

iPadだとminiだとしてもカバンに入れていても地味~に重く、片手で持っていてもプルプルして来てしまいますが、Mini Tab CだとサイズもiPad Miniより一回り小さく軽い為、通勤カバンに入れっぱなしでも負担にならず、思い立った時に本が読めるようになりました。また、バッテリの保ちも、オートパワーオフのおかげもあり、放置しても1ヶ月近く保つというのも理由の1つです。これは電子ペーパー端末自体の大きなメリットですね。

因みに、koboやKindleの場合、自社ストアしか使う事が出来ませんが、BOOXのようにGoogle Playストアが使える汎用機の場合、普通に他のアプリも使えるので、私はBookLive!や楽天マガジン、Kindleアプリを入れて使っています。(※dマガジンは、BOOX端末ではうまく動かないので注意)

また、本以外にWebサイトも閲覧するようになりました。液晶ディスプレイなどとは異なり、文書を読んでいても内容が頭に入りやすいし、何より読みやすいというのが理由です。(※ディスプレイ(自発光体)より本(反射光)の方が理解度が上がるという説もあります)
特に、企業の決算発表などのスライドや文書は、こちらの方が読みやすく、頭に入りやすい気がします。

これまではブラウジングの段階で遅すぎて挫折していたのですが、速度向上とカラー表示のおかげで、普通のブラウジングに使っても良いと思えるようになりました。

一方で、価格が高いというのが課題です。楽天やAmazonに比べて、金額が数万円高いというのが、汎用電子ペーパー端末のデメリットです。

また、これはkoboやKindleも同じことですが、iPadやAndroidタブレットであればゲームや動画視聴、写真撮影にブラウジングと何不自由ありませんが、電子ペーパー端末ではムリ or 難しい(ストレスがある)でしょう。そんなほぼ専用機にiPad相当のお金を払う事にメリットを感じるかどうかというのが、大きなハードルです。

実際使ってみるとその快適さに大きな魅力を感じて頂けるとは思うのですが、その一歩を踏み出すには金額が高すぎる気がします。もう少し価格が安くなって、手軽に購入出来るようになれば良いのですが・・・・・・。

画面が光ってしまったが、横に並べるとサイズはこんな感じ。
iPadとそれ程大きさに違いはないが、片手で持った時の重さは
電子ペーパーが圧倒的に軽い。

4. まとめ

個人的には劇的に性能が向上し、充分買う価値があると感じたBoox Mini Tab Cですが、こういった物に興味のない方が手軽に手を出すには、まだまだほど遠いものであるというのが、私の印象です。

ですが、もしこれから電子書籍端末の購入を検討されている方は、カラー表示の汎用機も検討してみては如何でしょうか。koboやKindleよりも絶対オススメです!と言えないのが心苦しいですが、ストアの制約が気になっている方や、白黒表示に不便さを感じている方には、オススメ出来る端末となっています。

何より、カラーの電子ペーパーがこれほど実用的になっていたと言う事が驚きですし、動きの良さも大きく改善しているので、昔電子ペーパーを触ってキライになった方も、もう一度興味を持って貰えると嬉しいです。

また、価格面が気になるという方は、今後世代交代で旧世代になる端末が安くなるかもしれませんので、そのタイミングで買って見ても良いかもしれません。

いずれにせよ、少しでも電子ペーパーに興味を持つ人が増えて、世の中にもっと普及する事を願っています。


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