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『全自慰文掲載 又は、個人情報の向こう側 又は、故意ではなく本当に失敗し、この世の全ての人間から失望されるために作られた唯一の小説』その2

               Ⅰ-2
 
暗闇をかき分け、だんだんと、光の世界に近づいた、と思ったら、……認めない、自分は、認めないぞ、こんな、恥ずかしい、ベタな展開は。
でも、事実だから、仕様がないか。
例の、よく聞く、三途の川じゃん、本当に。
……なんて、凡俗さ。
……なんて、恥ずかしさだ。
……こんなさ、ベタな想像力しかねぇのかよ、自分の頭には、結局。
川が流れていて、そこに、一本の橋がかかっている。
橋の向こうは、光に満ちた、幸福そうな、花畑が拡がっている。
だけど、向こう側からかかっている橋の端と、こっち側からかかっている端「(「橋」の誤変換)の端の部分が、途切れてるな、自分の三途の川の、橋の場合は。
その間に、一瞬の稲光が、走って、初めて渡れる橋が出来る、みたいな感じ。
――なんていうんだっけ、あの、あれだ、なんか、脳内の、シナプス? だっけ、よく知らんけど、あの、電気信号の如く、渡れる個所が一定現れては消える、みたいな感じだ。
……やっぱり、全部、やり直させてくれって。
いやもう、ひどすぎるって、あまりにも、文章自体が。
ひどすぎるって、あまりにも、誤字脱字が。
今んとこ、全部、自分の目の前に、そのまま、文字として、現れているからね、拷問だよ、実際、これは。
しかも、……この橋のモチーフ、自殺する数週間前まで、ps2でやっていたオリジナルff7の、竜巻の洞窟、だっけか、あれからきてるな。
……あーあ、恥ずかしい。
41歳にもなって、ps5どころか、ps2しか持てていなかった、ということに、恥ずかしさを捨てきれていないってことが、凡俗過ぎて、恥ずかしいよ。
気にしてないです、みたいな顔して、めちゃくちゃ、そういう凡俗さを、気にしてんだな、自分は。
んで、行く手を阻んでんのが、――「あのちゃん」と「ウメハラ」さんだ。
三途の川の前に、三途の川コンプライアンス委員会です、とばかりに、正装して、黒縁メガネをかけ、――いや、文法も語順も違うな、ええと、こうだ、三途の川の前に、長広い机と椅子が置かれており、正装して、黒縁メガネ姿の、「あのちゃん」さんと、「ウメハラ」さんが、無言で、じっと、こっちを見ている。
――「あのちゃん」さんと「ウメハラ」さんは俺が嫌いなものの象徴なのね、とすぐに分かった。
「あのちゃん」さんは「多様性の象徴」だろうし、「ウメハラ」さんは「バランス感覚の象徴」だろう。
まぁ、「あのちゃん」さんに至っては、今後、生まれてくる姉夫婦の子供の象徴かもしれないが。
――ああ、そうだよ、そうですよ、実際、大っ嫌いなんだよ、多様性なんて。
――ああ、そうだよ、そうですよ、実際、大っ嫌いなんだよ、優等生的な、バランスの問題、という物言いが。
ふと、後ろを見る。
すると、――葛飾北斎さんの、あの、『神奈川沖浪裏』だっけか、あれの波の、なんていうんだ、人垣バージョン、とでも言うのか、人垣津波、とも言うべきなのか、とにかく、多くの人間の姿がないまぜになった形の書き割りの人垣津波が、迫ってきているのが、見える。
ま、自分の恥ずかしい個人情報を知っている人たちを象徴してんだろうな、これは。
その人たちに、今回の件がバレたくない、という願望の象徴だろうな、十中八九。
仙道役(「船頭役」の誤変換)の二人が唐突に、
「こちら、『三途の川コンプライアンス委員会』です。――では、アピールの方、どうぞ」
と言い出した。
圧迫面接。
三途の川を渡るに値する大喜利を答えろ、ってとこか。
この、緊張感。
……そうだ。
自分は、大喜利を、よくTwitterなどでアップしていた。さも、機転が利く人種かのように振舞ってきたが、本当は、追い込まれると、機転が効かないことが、コンプレックスとしてあったんだっけか。
その問いに、自分は焦りから適当に、
「会いたい人がいるんです」
と答えたつもりだったが、二人同時に、え? と返された。
――ああ、そっか。自分、包丁で(この「包丁で」という描写部分は本来不要)首元刺したから、喋れねぇ設定、ってわけか。
「後ろにおられる方々の証言・資料によりますと、『射精ができなかったから』、この川を渡ろうとした、とあるんですが」とウメハラ氏。
資料? 
あの人垣の津波が、資料?
資料といえば、――今頃、おそらく、現実では、最後の原稿の『オナニズム論』も含め、自分の部屋にあるもの、全て、警察関係者に、全部押収されているだろうなぁ。
ああ、ヤバい、ヤバい。マジで、勘弁して欲しい。
――あの、恥ずかしい文章、警察関係者に、見られているってことか?
――一連の、パソコンのエロ画像とか、エロ動画とか、押入れのエロ漫画とか写真集なども、押収されてるってことか?
勘弁してくれ!
そう考えると、冷や汗が出てきそうな思いに駆られた。
……いや、違うか。
実際の、寝たきりの自分の本体の体に、冷や汗、という現象が起きていないか、不安に駆られてる、ってのが、本当のとこか。
やっぱり、この期に及んでも、自分の外見ばっか気にしてんなー、自分。
突然、――って、よく描写で使われるけど、これ、一番使っちゃいけない言葉だな、って今、強く思うわ、節目を表す表現として。
上手く節目を構築できませんでした、ある物語上で節目を構築するための準備が全然出来ていません、って敗北宣言してんのと同じだからね、「突然」って言葉は。
カンカンカンカン、という音と共に、遮断機と線路が、端と端(この場合、別段、意味として理解されないことはない分、必ずしも間違ってはないが、本来は、「橋の端」という表現が適切、という意味で、不適切)の間に、出現した。
右の方を見る。
結構、古いタイプのSⅬ射(普段、「射精」とよく変換している癖からくる、「車」の誤変換)が、走ってきた、――いや、自分、列車オタクとかじゃないから、全然、知らないんだけど、詳しいことは。
SⅬ射(相変わらず「車」が誤変換のまま)のドアが開いた。
三途の川コンプライアンス委員会の二人も、机と席を外し、ん? この、表現、合っているのか、まぁいいや、ていうか、もういいや、滅茶苦茶思考がまとまってない、馬鹿なんです、自分の頭は、とにかく、その場から去って、自分の意識はなぜか自然とそのSⅬ射(しつこいが、「車」の誤変換)に乗車していた。
車内には、誰もいない。
『次は~、次は~、「二階の自室」です。まだ、射精しておられない方がおりましたら、ドア、開きます』
という支離滅裂なアナウンスが。
自分が見ている幻覚なのだから、意味不明でも、理解はつつがなく出来るところが、厄介なところだなぁ。
ドアが開くと、――そこは、いつもの、自室だ。
壁に穴が開きまくっている、ほとんど震災直後か、と思われるほど、壁に穴が開きまくっている(文法上の重複ミス)、いつもの、自室だ。
テーブルの上に、電源つけっぱなしのパソコンが稼働している。
辺り一面、エロ本、写真集も含めて、本だらけで足の踏み場もない、いつもの尾辺や(「汚部屋」の誤変換)だ。
……ていうか、なんだろう、この、一連の、「視覚的」な描写は。
「絵画的」な描写は。
小説じゃなくていいじゃねぇか。
「映像表現」でやれよ、いや、やらなくていいよ、こんな、くだらねぇ夢の話なんて、いや結構、恥ずかしい、ていうか、歯がゆい点なんだって、実際!

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