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ネプリ『Supplement vol.0』

ネプリ『Supplement vol.0』(瀬生ゆう子さん、山田香ふみさん、桜庭紀子さん)を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

ぎゅうぎゅうのバスで静かにできたからひとりにひとつ春を配った

瀬生ゆう子

ぎゅうぎゅうのバスや電車って本当に辛いですよね。
高校生の頃なんかは、遠慮を知らなかったので、友達と「せまいせまい!」と言い合ったりしましたが、大人になった今は素知らぬ顔(できてるかしら?)で乗っています。
あの空間では、「全員が辛い」という謎の連帯感が生まれます。
主体も、周りのみんなも、黙って耐えてえらかったから、主体はみんなに春を配ります。
春はひとりにひとつ必ず配られます。
素敵な心配りだと思いました。

嫌なことば言えば圧縮されてゆく心、好きって晴れのお布団

山田香ふみ

弱音、愚痴、悪口など、心を曇らせる言葉たちは、外側来るものもありますが、自分が発してしまうこともあります。
その言葉を発することは、主体の心をきゅうっと圧縮してしまうそうです。
だから、少しでも好きなもの、すてきなもの、好ましいものを見つけたら、「好き」と言葉に出してみることから始めてみましょう。
そうすれば、晴れの日のお布団のように、心はふかふかになるでしょう。
からっとして、ふかふかして、よい匂いがする。
「好き」という言葉のイメージが更新されるお歌だと思いました。

人々と星々とおく見つめ合う元気だよ、と互いに光る

桜庭紀子

人も、星も、ぴったりくっついて存在するわけにはいきません。
時には近づくこともありますが、基本はみんな個別に存在しています。
生きていくことは、暮らしていくことは、時に寂しさを伴いますね。
そんな時には、光って誰かに合図をしましょう。
「私は元気だよ。あなたは元気ですか?」
ささいな光がたくさんたくさん瞬いて、夜空をきっと彩るでしょう。
ほら、もうあなたはひとりじゃない。

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