ネプリ『珈琲日和 Vol.14』
ネプリ『珈琲日和 Vol.14』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。
上の句に込められている、「あなたの触れたものに触れたい」という、とても純粋な願いに惹かれました。
同じコーヒーを飲むことではなく、その前段階の「ボタンを押す」にフォーカスを当てているのが面白いなと思いました。
下の句の柔らかさに惹かれました。
「ぬるくなったと思われる」なので、ぬるくなったかどうかまだ分かりません。
でも、主体は細かく確かめずにカップを手で包みます。
主体の手にはまだ少し熱かったかもしれません。
もしそうだったとしても、主体はカップから手を離さないでしょう。
主体はきみを大切に思っているのだろうなぁと、自然と想像してしまうお歌でした。
古き良き喫茶店を表していると思いました。
私も喫茶店を「喫茶」以外で使ったことがありません。
この時のお客さんは、きっと店の常連さんで、豆の日もあれば喫茶の日もあるのだろうなぁと想像しました。
行きつけの喫茶店がある生活に憧れてしまいますね。
妊娠初期のお子さんは「胎芽」と呼ばれるのですね。
胎児と呼ばれる前に段階があることを初めて知りました。
そこから、珈琲豆という具体的なものにつなげているのがいいですね。
ちいさすぎる命を抱える心細さも感じるお歌でした。
カフェイン中毒とも言えそうな主体は、胃の都合でコーヒーが飲めなくなってしまいました。
しかし、どうしても飲みたい。
胃に訊ねてはいるものの、すでに湯を沸かしているので、飲む気満々ですよね。
この後、主体の胃は痛むのでしょうか、無事で済むでしょうか。
悪いことだとわかっているのに、惹かれてしまう。
カフェインの罪深さを描いていると思いました。
初めて豆を挽いた感動が、柔らかく描かれていると思いました。
ちょっとおっかなびっくり、「本当にこれでいいのかな?」という不安が、「初めての抱っこ」という言い回しから伝わってきます。
結句に読点が入ることで、読んでいるこちらにもあたたかさがほんわりと伝わってくるように感じました。
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