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嵐の夜に

あの嵐の夜に起きた出来事は、
まるで暗闇の中で羊と狼が仲良くなる「あらしのよるに」のような
ストーリー

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もうすぐ店の閉店、バイトが終わる時間が近づく
レジに来る人の持っている傘は濡れていて、
掃除しないといけないくらい床に水が垂れている。

「相当、大雨なんだろうな」
レジからは外が見えないけど、
雨がかなり降っているのが想像できる。

閉店は21時。そのあと閉店作業があって、
帰るのはいつもだいたい22時くらい。
その頃には雨が弱くなっているといいなと願う。


同じ時間のシフトには、
隣の店舗からヘルプで来た同い年の男の子が一人、
そしてベテランのフリーターおじさんが一人。

閉店の時間になると、
みんなテキパキとそれぞれ片付けと掃除をして
22時過ぎに全ての作業が終わった。

「今日はちょっと早く終わったね」
同い年の男の子は大学も学部も一緒で、
同じ授業を受けていたこともあった。
でも話したことはなかったので、少しだけぎこちない。

「めっちゃ雨降ってるけど、帰りチャリ?」
「私は歩きだけど」
「じゃあ俺もチャリ押して歩こうかな」

大雨の中を二人で歩く。
田舎の道だから暗くて、お互いの顔はほとんど見えない。

バイトのこと、授業のこと、一人暮らしのこと...
降りやまない雨のように話題は尽きない。
なぜか会話は弾んで、いつもの帰り道が短く感じる。

「じゃあ家こっちだから、ここで」
「おつかれさま」


嵐が過ぎて、二人がまた会うことは二度となかったけど
どうしても忘れられない夜。

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これがフィクションなのかノンフィクションなのか、
もはや自分でもよくわからない物語。

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