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薬学部の若い学生に向けた化学実習のネタバレ

【高校化学からマニアックな化学まで】実習で、教えてること。工夫とネタを書いておく。実際には聞いてくれる余裕がある人にしか伝えてない。ゴチャゴチャ長い説明より要点だけを丸暗記したい人もいるので。得意な方で自分のちからにしていけば、良いと思います。

写真の青い結晶は硫酸銅。硫酸銅の需要が、高まっている経済記事がありました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002985.000067400.html

学生にどこまでわかるか聞きながら、話します。説明が長すぎると嫌われるようなので、聞きそうな学生を、見つけて話してます。


【有機物の名前】ベンゼン環になんか付いた化合物の名前、オルト、パラ、メタとか2,4とかの命名規則。


【慣用の命名】グルコース、マルトースなどの糖の名前。単糖類か二糖類か。ブドウ糖はグルコース。蔗糖ショ糖がスクロース。グルやグリは甘い匂いや味の化学物質によくついてる。スクロースはサッカロースとも言う。サッカリンはサッカロースより甘い合成甘味料。


【酵素の名前】アミロースを分解する酵素をアミラーゼと呼ぶ。酵素の略語はE、エンザイムのE。ペルオキシダーゼはペルオキシドを分解する酵素。過酸化水素はヒドロペルオキシド。ペルオキシドをパーオキサイドとも読む。


【燐】リンはPの化学記号でフォス、フッ素Fをフルオロ、硫黄Sをサルファ。SCOPスコップと覚える4種の元素には同素体がある。ダイヤモンドと炭、赤い燐と黄色い燐。信号は赤が危ないけど硫黄は黄が危ない。


【窒素と硫黄】臭い化学物質はほぼ窒素と硫黄が入る。有機物の中で窒素や硫黄の原子の周りに電子が多くてマイナスを帯びる。電子が多い部分が吸着したり半分くっついたような状態になる。ゴムが延びる時の加硫は硫黄Sの部分が半分付いたり離れたりしながら伸びやすいから。


【反応速度】化学反応を時間ごとに濃度を測ると反応速度がわかる。横軸時間で縦軸濃度のグラフを書くと反応物質が減って生成物質が増えるような曲線になる。そのグラフの傾きがその時間での反応速度。普通は材料になる反応物質の濃度が濃いと速く進み、薄いとゆっくりになる。だから反応物質の濃度に比例係数(反応速度係数)を掛けた形で式にできる。


【グラフと単位】縦軸と横軸が何かをはっきり書く。軸の名前と単位が大切。入れた薬品の重さか濃度か?濃度の単位はモルか%か。ミリ、キロ、マイクロ、ナノの単位は10の3.6.9乗といった付け方。日本語やアジアでは10の4.8.12乗で万、億、兆と単位が上がる。


【グラフ用紙】グラフ用紙は横向きに使う。A4の紙は上か左を綴るので、グラフ用紙を横向きで使うときには左側を上になるように書く。軸の名前や単位、目盛りを全てグラフ用紙の中に書く。方眼目盛りがない部分はコピーすると見切れるので使わない。


【レポート】手書きレポートはパソコンでコピペだけで書く手抜きを防ぐため。実際にはパソコンを使ったほうが練習になる。本から書き写すよりインターネットからコピーペーストしたレポートを手書きに再度書き写す際に、自分なりの言葉に直す。分からない言葉は使わない。使った言葉は全て説明できるようにする。つまり簡単な言葉に直す。または説明できるようにしておく。


【手書き】字は丁寧に。字よりも、レイアウトが大切。レポート用紙の余白を綺麗に見せる。目次、見出し、色鉛筆、グラフ、表、番号を工夫する。字が汚いなら図を多くする。図も自作がベストだが、引用元があればコピーも可。




【スマホカメラ】実験結果で色の変化や液面の泡立ちなどは写真に撮る。綺麗に並べて真正面から撮影。または教科書や資料集に載るような写真を目標に撮影する。薬品のかき混ぜ方が足りない、上と下で色が違う、沈殿が溶け残る、泡が残る、液面の高さが揃わない、などの証拠写真があるとデータ解釈しやすい。


【濃度と色】薬品を濃くすると色も徐々に濃くなる場合は、色の濃さを測る。色の濃さを数値化すると濃度と数値で直線的な比例関係がある場合もある。比例関係は濃すぎる、または薄すぎると成り立たない場合もある。検量線というグラフを実際に書くとどのデータなら直線になるか?原点補正する。


【触媒】触媒は化学反応を速くする。触媒自体は変わらないで化学反応する前の反応物質とくっついて、反応生成物質が出来ると離れるタイプの薬品を触媒と呼ぶ。化学反応は反応後のほうが普通はエネルギーが低い。反応する時の反応エネルギーの山バリアを越えるとエネルギーが低く安定する。山バリアの高さが触媒で変わる。山を低くすると簡単に反応が進み、反応速度が速くなる。


【酵素と触媒】酵素は触媒の働きをする。アミラーゼはアミロースを分解するというが、アミラーゼ自体は原則変化しない。アミラーゼ酵素がアミロースに付いて分解して、離れて別のアミロースに付いて分解して、を繰り返す。化学の触媒に比べると酵素はpHが7付近(特定のpH)で働き、それ以外では弱い。または分解する。温度も化学の触媒は100℃以上で働く触媒が多いが、酵素は37℃付近(ヒトの酵素)でだけ働く。


【酵素の仕組み】触媒も酵素も、反応物質が付いて反応して離れる仕組み。酵素は付く部分が特別な形で特別な相手だけを選ぶ鍵穴型をしている。


【酵素で定量】タンパク質などの定量分析では96穴プレートといった標準仕様の分析するための板がある。酵素反応で定量して染色した後、規定時間が過ぎたら定着液(ストップ液)で色が付く反応を止める。そのプレートの色の濃さを機械で読む。色の濃さは吸光度分析。


【銀塩カメラ】印画紙に銀塩が塗ってあり、光で露光すると銀粒子が黒くなる白黒写真がある。今はデジタルカメラがほとんどだが、一部で薬品を使う銀塩カメラの印画紙もある。デジタルカメラは銀塩写真を半導体素子で光の強さの数値化したモノだ。


【酵素触媒の濃度】濃度を上げると化学分解反応が速くなる。酵素アリの濃度変化のグラフをゼロの方向に延ばせるか?酵素ナシと酵素アリは決定的に違う。酵素アリのグラフを薄い濃度に伸ばしたグラフは、濃度ゼロの時の実測値とは一致しない(正確な実験は難しい)。グラフの中で、酵素が十分に働く部分を延長した点と酵素がない点の差が酵素によって加速された部分を表す。


【グラフの意味】縦軸と横軸を見る。直線的に増える範囲がどこまでか?直線なら傾きとY切片を計算する。その傾きと切片の意味は何か。反応速度なのか?原点を通るのか?


【触媒と阻害】触媒の阻害には複数のタイプがある。一つは反応物質と触媒との相性つまり親和性が変わる。触媒に付いたり離れたりする時の回転する速さが変わるようなイメージ。

別のタイプは一部の触媒自体が全く働かなくなるタイプ。こちらは触媒濃度が下がったケースと見かけ上、似てる。

触媒が分解反応速度を上げる。酵素の濃度を上げた時の反応の最高速度Vmaxが変わるのは、どんな時か?酵素が全体が働きが悪くなる時か?一部の酵素が働かないで酵素濃度が薄くなったように見える時か?

【銅イオン】硫酸銅水溶液は青。銅イオンはだいたい青いが、銅イオンの周りが硫酸か、硫黄や窒素を含むタンパク質かで、色が違う。銅イオンの溶液の色はよく分析試薬として使われる。


【キレート】銅イオンの周りを硫酸イオンが囲む、または別の窒素や硫黄などの有機物が囲む時の囲み方は、決まっている。銅なら平面的な四角な位置。周りに付く有機物をキレート剤と呼ぶ。蟹のハサミのような形で金属イオンの周りを取り囲む。キレートは蟹のハサミの意味らしい。


【銅以外の金属イオン】金属イオンは陽イオンでカチオンと呼ぶ。アニオンは陰イオン、マイナスイオン。プラスと、マイナスが引き寄せ合う。銅イオンの周りは平面四角の位置に配位するが、鉄イオン、コバルトイオンなどカチオンによって周りの配位する位置が異なる。最も単純なアミノ酸であるグリシンはカチオンに配位する。工業でよく使われる錯化剤の一つ。



【極性と水溶性】

水に溶けるのはプラスやマイナスがあるから。水自体にプラスマイナスがある。極性がある。だから極性があるモノを溶かす。極性がない有機物は水に溶けない。有機物は硫黄や窒素の部分がマイナスイオンになるので溶けやすい。酸素部分もマイナスイオンで溶けやすい。けど窒素、硫黄、酸素が少ない有機物、特に炭素がたくさんある分子量が大きな有機物は水に溶けない。


【有機金属】有機物の一部に金属が付いている分子を有機金属化合物と呼ぶ。正確には炭素と金属が直接結合した分子を有機金属化合物と呼ぶ。酸素や硫黄などを介して有機物と金属イオンが結合した分子は、金属塩や錯化剤とか呼んで有機金属化合物の範囲外らしい。


【石鹸 界面活性剤】

金属部分はカチオンになるから水に溶けやすい。石鹸は油脂由来分子の酸素部分の先端にナトリウムイオンが付いてる。一番ありふれた有機化合物と金属イオンと言えるんじゃないかな?


【アルコキシド】

アルコールの酸素部分の先端に金属イオンがあるとアルコキシドとかいう。ナトリウムメトキシドはメタノールの酸素部分にナトリウムが付いてる。石鹸に比べるとかなりマニアックな有機化合物。アルコキシドも炭素と金属が直接的には結合してないから、有機金属化合物の範囲外らしい。たぶん微妙な境界線だ。


【ノウハウ秘伝と化学】

有機化学には詳しい人が多い。比べると有機金属化合物は全体的にマニアックだ。有機金属化合物は、反応が激しい。安定しない。反応しやすい。上手く安定剤を使うと使いこなせる。安定剤はキレート剤であることが多い。ココら辺りが一番難しい。おそらく経験則がある。けど広く公開するより秘伝にしておく化学者ばかりらしい。将来は有機金属化合物はもっと分かりやすく解説できるようになるだろう。


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