見出し画像

鈴木秀樹VS中嶋勝彦〜覚醒や飛躍ではない積み重ねた者同士の名勝負〜決着は4.30両国へ

トップ画像は@shun064さんの作品です。

プロレスという世界の中ではときに、躍進や覚醒といった言葉が用いられます。これまで脚光の浴びていなかった選手が一気に活躍する。ユニットが変わってタイトル戦線に絡む。おもにそうしたケースで使われる言葉です。しかしそうした傾向について。それは違う。プロレスにおいてそんな言葉はない。積み重ねたモノしかリングに出ない。そんな言葉を発したのが鈴木秀樹です。

その鈴木は4.8後楽園ホールで。4.30両国国技館大会でのGHCタッグ王座戦の防衛戦の前哨戦として、中嶋勝彦とシングルマッチで対戦しました。両者の試合といえば2020年に行われたノアの隠れた名勝負。個人的には2020年のノアの年間ベストバウトに選びたいくらいのものでした。

この二人の試合のどこに魅せられるのか?それは人によって様々でしょう。シリアスな格闘技的な戦い。ロープブレイクに逃げないグラウンドの攻防。お互い何をやってくるかわからないワクワク感。それらに加えて私は今回の試合を見て両者の愚直なまでの鍛錬の積み上げも魅力の一つではないかと感じました。鈴木も中嶋もいわゆる派手な技を使うタイプの選手ではありません。一つ一つの技はもしかすると素人でも見様見真似でできるかもしれません。しかし彼らの技には凄まじいまでの説得力があります。鈴木のエルボースマッシュやワンハンドバックブリーカーはクラシックな技でありながら中嶋に大ダメージを与え。中嶋のキックは鈴木の巨体を破壊するような衝撃と音を発しています。さらに両者が見せるグラウンドの攻防も。相手に関節を決められても、ロープに逃げずにポジションを入れ替えて逃れ。そこから更に相手の関節を決める。理屈に沿った動きで目まぐるしくポジションを変えながらの攻防でした。鈴木と中嶋の戦い。それは間違いなく彼らにしかできないモノだと思います。

しかしこうした名勝負に至ったのは、彼らがそうした一つ一つの技術を徹底して鍛錬したからこそです。見た目は誰でもできそうであっても、それを凄みのあるモノへ昇華する。まさに冒頭で書いたように両者の積み重ねたモノがリングに出たのがこの試合でした。両者とも決して平坦な道を歩まず。苦労をしながらも鍛錬を続けた者同士というのも似ている部分かもしれません。二度目の対戦となった今回でも30分フルタイムドローとなり、決着はつきませんでした。そしてこれまでノンタイトル戦だった戦いが、次はついにタイトルマッチとして行われます。

鈴木には杉浦貴。中嶋には拳王。お互いに強力なパートナーを揃えたGHCタッグマッチです。今回の延長線上の攻防となるのか?それともパートナーの良さを活かした今回とは異なる色の戦いとなるのか?その内容に興味は尽きません。どんな試合になったとしても鈴木と中嶋の試合は積み重ねた者だからこそできる戦いになる。それだけはきっと間違い無いでしょう。最短距離を歩むことが正解と思われがちな現代だからこそ。積み重ねた者が見せる輝きに魅せられるのかもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?