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全日が熱狂〜多幸感に頼らない世界観〜CC2024開幕戦

デイビーボーイ・スミスJrのCC2024が決まったことでぼくの全日本プロレスに対する掌がこんくらいまで返りました。


あとちょい…あとちょい…

「ここまで掌返しかけたなら会場行けよ」という心の中の声に促されて、全日本プロレスCC2024開幕戦に行ってきましたー。※以下展望記事。



大型選手が勢揃いするとリングがこんなに小さく見えます

結論から言えば「めちゃくちゃおもしろかったーーーーーーーーーーー!」大会でした。「安齊勇馬VS斉藤レイがメインでも大丈夫か?」「宮原健斗や青柳優馬の試合がメインのほうが良かった!みたくならんか?」。正直に言えばぼくはこんな不安も若干ありました。しかしそれを大きく。そして良い方向に裏切ってくれたのが。まさに「ゼンニチ新時代」と呼ばれる若手選手の躍動でした。

斉藤ブラザーズは間合いの取り方や緩急の付け方の上昇によりタッグ屋というイメージを壊すかのようなシングルでの戦いぶり。安齊は斉藤ジュンの重爆攻撃を耐えきっての新技ギムレットで快勝。安齊の試合を見ていると「アンザイ!」と声援を出したくなる空気感があり、これは選ばれし者のみ持ちうる才能だなあと改めて実感しました。

その「選ばれし者の才能を持つ選手」がこの日はもう一人いました。それは綾部蓮です。新コスチュームで登場し、最高男宮原健斗を上回る声援を受けた綾部が宮原から勝利(≠超えた)。宮原ファンのぼくも「綾部!」と叫びたくなる試合でした。

では新時代が引っ張った大会だったのか?決してそうではありません。パワーとテクニックに優れたデイビーボーイ・スミスJrに対し、ガッツリ技術勝負に持ち込み。妙技死んだふりからの逆転勝利を挙げた青柳優馬。

記者会見での馬マスクを着用し、更には馬マスク2号も登場させて話題をふりまいた大森北斗。その大森をアンクホールドでねじ切り完全復活をアピールした前年度覇者の芦野祥太郎。

重爆攻撃を正面から受けきって体重145Kgの斉藤レイをバックドロップでぶん投げて勝利した諏訪魔は、好調ぶりを見せつけました。綾部に敗れたとはいえ、宮原もベストバウトマシーンとして勝者綾部を引っ張る試合ぶりを見せました。

新時代に対する現行世代が頑張った!いやいやいや。それだけではありません。黒星スタートとなったデイビーボーイ・スミスJrは前評判どおりのファイトを。逆に謎のガイジンレスラーとして注目されたロードクルーはその恵まれたサイズで観客の興味を引かせ。この日に公式戦のなかったサイラスとハートリージャクソンも6人タッグで暴れまわって今後の期待感を大いに煽りました。

やはり大型ガイジンレスラーが参戦するとCCは盛り上がる!もちろんそうです。さらに加えるなら、団体のカラーに合ったフリー選手の活躍もです。GAORA王者の立花はどっしりした体を作って田村とバチバチファイト。黒潮TOKYOジャパンは所属選手以上の明るさを。鈴木秀樹は混乱を制御する高い知性を。

つまり「所属選手がどの世代も高いレベルの試合をして」「そこに団体のカラーにマッチするガイジンレスラーやフリー選手が加わる」。「試合開始前には恒例となりつつあるアクトレスタイムで華やかさを出し」。昨日の全日本プロレスの試合はまさにそうした「参戦選手の良さがパズルのようにハマり」会場の後楽園ホールに熱狂の渦が発生しました。

少し興味深いのは「これは熱狂であって多幸感とは異なる」という点です。全日本プロレスにおける多幸感とは「宮原健斗の最高ですかーーーーー」。もしくは青柳の「バーーーイ」だとぼくは捉えています。特に「宮原健斗の最高締めがあってこそ全日本プロレスだ」という意見もぼくの中には未だに存在します。

この日は宮原の最高締めもなく(もっと言えば宮原は敗戦)。青柳もセミ前。つまり「多幸感を引き出す要素」は少なかったと思います。しかし結果的に会場は大盛り上がり。ぼくも文句なしの大満足の大会でした。

多幸感というのはある意味でベタな展開。もっと言えば「長く見ている人ほど深く感じるもの」だとぼくは思います。23年10月の宮原と青柳の三冠戦はまさにそうでしょう。二人の歴史を知る人であればあるほど。あの試合によって大きな多幸感を得ることができたはずです。

しかし一方で多幸感には受け手側によって安定しないという側面もあります。ある程度コアなファンでないと多幸感を得にくい。一見さんに多幸感を伝えるのは難しい。

そこに対して答えの一つがこの日の大会ではないでしょうか?決して物語性が強いわけではない。しかし目の前で噛み合った選手同士がすごい試合をバンバン行う。それを見た観客が大声をあげ、足を踏み鳴らし。一見さんもコアファンも関係なく熱くなる。そうした熱狂する空間が存在しました。

多幸感と熱狂に優劣をつけることはできませんし、それらが両立することもあるでしょう。もしかすると熱狂の先に新たな多幸感が存在する。そんなことだってあるかもしれません。いずれにせよこの日の後楽園はものすごく熱かった。熱狂空間だった。それだけは間違いないです。

まだまだ続くCC2024。優勝争いも面白いですが、何よりもこの空気が長く広く広まってほしい!





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