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10.10大阪決戦〜最後の欠片を得た中嶋勝彦 ノアは俺だ!〜

トップ画像は@shun064さんの作品です。

さてプロレスリングノア10.10大阪大会が無事に終了しました。メインイベントはGHCヘビー級王者の丸藤正道とN-1覇者の中嶋勝彦の一戦

両者の因縁とこの戦いの持つ意味について、こちらにまとめました。


ゴングが鳴ってもお互いが視線交わし、中々組みあわない緊張感あふれるスタート。そこを中嶋がローキックで口火を切ると、打撃戦で中嶋がペースを掴みます。リング上のみならず場外まで丸藤を連れ回し、ダメージを与える中嶋。相手をコーナーで踏みつける中嶋得意の「カメラタイム」を繰り出し丸藤を挑発します。

その中嶋の不敵な表情を丸藤が変えました。己を踏みつける中嶋の足を掴むと場外へ中嶋を勢いよく放り出します。この落下時に左腕を打った中嶋のスキを丸藤は見逃しません。場外鉄柵全てを使い、中嶋の痛めた腕を攻め続けます。中嶋も打点の高いミサイルキックやキックで応戦しますが、丸藤の絶妙ないなしの前に中々失ったリズムを掴むことができません。その上丸藤はエプロン上で中嶋にパイルドライバーを繰り出し、中嶋の頭部を硬いエプロンに叩きつけます。更には久しぶりのfromコーナーtoコーナー、不知火と丸藤の時間が続きます。その中で中嶋が流れを変えるためキックを繰り出し、得意技のヴァーチカルスパイクに繋げます。

ここから中嶋はダイヤモンドボムを出そうとします。しかしこれを切り替えした丸藤が今度はグラウンドで中嶋の左腕を攻め立てます。三角絞めでじっくり締め上げてからリング中央でパーフェクトキーロックへ。悶絶する中嶋は必死にロープに逃れますが、丸藤はすぐさま切り札のタイガーフロウジョンで勝負に出ます。

キックアウトした中嶋が選んだのは、こちらもとっておきの技R15。この技で踏みとどまった中嶋は20分過ぎにも関わらず打撃戦を丸藤に挑みます。中嶋の重いキックと、丸藤の鋭い逆水平チョップが交錯。ここまで肉体を削りあったにもかかわらず激しい打撃戦が続きます。この打撃戦の終わりは唐突に訪れました。虎王を狙った丸藤の膝を掴んだ中嶋。そのまま丸藤を担ぎ上げると、中嶋の切り札であるダイヤモンドボムがついに発射。すぐさまフォールにはいけませんでしたが、これで中嶋は勝機を掴みました。立ち上がった丸藤にハイキック一閃。そしてヴァーチカルスパイクで丸藤をリングに突き刺しました。これを返すことは丸藤であっても叶いません。ついに中嶋が丸藤を降し、悲願のGHCヘビー級王座返り咲きを果たしました。

2016年に鈴木軍からGHCヘビーを奪還し、ノアの救ったはずの中嶋。しかしその勢いをもってしても、当時の中嶋が時代を掴むことはできませんでした。それは決して本人だけのせいではありません。当時のノアの状況は厳しいもので、潮崎豪と清宮海斗は目覚め前。拳王もまだ中心軸には立っていません。そのため丸藤が他団体に出場することでノアへの他団体選手参戦に繋げる必要がありました。中嶋が熱望したGHCヘビーを賭けた丸藤戦が叶わなかったことも、そのあたりの事情が影響してたでしょう。

時計の針は進み2020年。当時はGHC王者潮崎が勢いを見せていましたが、同時に中嶋が足りなかったモノを集め始めた年でもありました。ナイフを持つ外敵鈴木秀樹との邂逅で戦いの幅を。無観客試合という異空間であっても凄まじいアベレージの高さを見せた杉浦戦。潮崎に反旗を翻すことで宿敵を。金剛に加入することで、自分と同じ意識を持つ拳王という同志を。2021年は過去のマサ北宮との過去の因縁を。中嶋勝彦というレスラーがこの2年で急速に完成形に近づきました。

そしてとうとう最後の欠片であるGHCヘビーを賭けた丸藤戦に勝利し、中嶋勝彦が完成したように私は感じました。しかしそう感じたの一瞬だったのかもしれません。N-1予選リーグで敗れた田中将斗の宣戦布告を受け、すぐさま初防衛戦が決まりました。さらにリング上で放った「ノアは俺だ」という言葉。この言葉があの男に対してのものなのか?それとも過去の自分に対してのものなのか?答えは中嶋にしかありません。いずれにせよ私が完成したと思われた中嶋勝彦は、実は未完成だったのでしょう。むしろ永遠に完成はせず、貪欲に様々な相手を喰らい尽くす。それこそが中嶋勝彦なのかもしれません。

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