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11.5三冠戦 青柳優馬VS中嶋勝彦〜殺気と狂気という新たな価値観

10.21の後楽園ホール大会で挑戦者宮原健斗を退けて王者としての己の姿をプロレス界に見せつけた青柳優馬。その青柳優馬に挑戦への挑戦を宣言したのは中嶋勝彦。プロレスリング・ノアを9月をもって退団し、10月の試合を最後に方舟に別れを告げた中嶋の次の標的は三冠ベルトでした。決戦の地は11/.5札幌大会。札幌大会は昼夜興行であり王者青柳優馬はダブルヘッダー。6日で7連戦の最後というハードスケジュールでしたが、青柳優馬は王者としての無類のタフネスを観客に見せつけました。

フリー転向での実質的な初戦となるこの試合。ノア時代と同じKICK STARTの音色で入場した中嶋。一方の青柳優馬もすっかり王者の入場曲として印象付けたRockstarで入場。しかしセコンドには弟の青柳亮生だけではなく、ライジングHAYATOや石川修司も備え。外敵を迎え撃つという空気が否が応でも強まりました。

ファーストコンタクトは中嶋の左ローキックから。中嶋の切れ味鋭い蹴りはこれまでの青柳優馬の三冠戦では見られなかった緊張感を演出していました。ヒリヒリした空気を壊したのは中嶋のバックドロップ。これによりこの試合最初にリズムを掴んだ中嶋は顔面へのエルボー、キックをリング内外で繰り出し青柳優馬を攻めました。

リングに戻ったあとは青柳優馬も反撃を見せます。コーナー上段に中嶋をおいてのドロップキックで中嶋を場外に落とし。場外のマット上にDDT。リングではパイルドライバー。さらに一旦中嶋に攻守切り替えをされるもエプロンでの攻防に勝利し、エプロン上に中嶋をバックドロップで放り投げる。これは首ではなく背中を打ち付ける形でしたが、中嶋へ大きなダメージを与えました。この日解説を務めた宮原健斗が発言したように「いつもと違って冷徹に攻める青柳優馬」という印象を観客に強く印象づけました。

リングに戻ってヒートアップする両者。中嶋のキックと青柳優馬のエルボーによる激しい打撃戦。両者とも簡単には膝をつけずに攻撃を受け合います。青柳優馬は中嶋のキックをかいくぐりジャーマンスープレックス→ロックボトムと繋げると。中嶋をコーナー最上段において雪崩式のロックスターバスター。さらにはリング上で正調ロックスターバスターを敢行しました。客席から発生した大優馬コールを受けてザ・フールの体制に入る青柳優馬。

青柳優馬の清らかな流れをせき止めたのは中嶋の張り手でした。一撃で青柳優馬を沈黙させると中嶋は必殺のバーティカルスパイクを発動。万事休すかと思われましたが青柳優馬は執念のキックアウト。このキックアウトはこの半年近くの経験があったからこそ成せたことでしょう。これで決まらぬと見た中嶋は青柳優馬を引きずり上げると。青柳優馬の首と足をロックしてリング上に突き刺しました。技が決まった瞬間はこれまでの大歓声が一瞬止むほど。完璧な形でノーザンライトボムを決めて中嶋が青柳優馬を下し。三冠ベルトを己のモノとしました。

ハードスケジュールを駆け抜けた青柳優馬でしたが、その疲労を観客には見せず。堂々と中嶋の攻撃を受けきったのは素晴らしいことでした。この敗北で青柳優馬の王者時代の価値が落ちるわけでも。ましてやいち選手としての青柳優馬の価値が落ちるわけでもありません。青柳優馬は9年かけて成長した大樹です。台風で枝葉が折れたとしても。しっかりした根を張った幹は折れません。

「明るく楽しく激しくを闘魂スタイルで染めてやる」と発した中嶋を前にしてエプロンまで駆け上がる全日本プロレスの選手たち。しかし。いやむしろ必然でしょう。彼らを前にして中嶋は放送席に控えるあの男の名を呼びました。観客の歓声とともに中嶋の前に対峙し。「全日本を舐めるなよ!」と発言したのは。そうです宮原健斗です。かつての兄弟弟子であり7月にはシングルマッチで対戦した両者。お互いが特別な相手であるからこそ。中嶋は他の選手に目もくれず宮原を指名し。一方の宮原も「2023年の宮原健斗と中嶋勝彦の物語は大晦日でおしましいだ!」「中嶋勝彦!2023年大晦日、勝負や!」と。最後の言葉に方言が出るように。ある意味で宮原健斗という仮面の下の姿を見せられる特別な相手が中嶋なのでしょう。

穏やかな時代が終わり再び急転直下が訪れた全日本プロレス。殺気と狂気を纏った異質な王者中嶋勝彦にどう立ち向かうのか?直近の世界最強タッグ決定リーグ戦に彼の参戦はあるのか?そして大晦日決戦の行方は?全ての結末は全日本プロレスのリング上で見られることでしょう。


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