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いまだ!風呂に入ろう!いまっていつだ!

 お風呂に入るのってしんどいですよね。私お風呂入るのが大好きで大嫌い…でした。最近まで。

 まず、お風呂に入るまでにめっちゃくちゃ時間がかかる。入ってからも時間がかかる。入った後、元気になるまでにも時間がかかる。ほんと重労働。だけどお風呂自体が気持ちよくないかと言うと、入ってしまえば、それは気持ち良い。だけどそれ以外の要素がしんどすぎる。

 まず、お風呂に入るまでに、ぐずぐず。夕食を食べ終えて、ひとまず動けない。お腹がいっぱいになると、眠くなる。で、だーらだーらする。私は実家では「はよ風呂入れ」など、ああしろこうしろと言われることばっかりだったのだけど、夫はそういう人ではなく、自分で動くのを待ってくれる。というか私に一任されてる。一任って、私のお風呂なんだから当たり前なんですけど。だから、「あーお風呂入らなきゃいけないな…あれ、夫は『入れ』って言ってこないな…あれ?いいのかな?入らなくていいのかな?うーん入り時が分からない…」と、謎の罪悪感とともにぐだぐだする。入らなくていいのかな?ってなんだよ。

そしてウンウン唸りながら、嫌だ…しんどい…とぶー垂れながら、のそのそと風呂場へ行き、何とか湯船に浸かる。


…浸かりすぎる。


あったかい…もうここから出たくない…動きたくない…と思ってる間に、風のように時間が過ぎる。長いときは、1時間から2時間。

のぼせる。

で、子どもが生まれる前の私はどうしていたかというと、呼び出しボタンをプーと押して、夫を呼ぶ。「はいはいどうした」と来てくれる夫に、「体…洗って…」と、のぼせた顔で言って頭も体も洗って貰っていたのだ。

あっ、ちょっと、引かないで。
よおく聞いて。ちゃんと聞いて。
いい年したアラサー女が、自分の髪と体を洗うのが億劫なあまり、夫に洗って貰っていました。
引くか。そうか。そりゃそうだわな。

じゃあ引かれついでに言おう。
夫が体を洗ってくれている間、私は合いの手を打つようにカミソリで脇の毛等を剃ってました。

…おいこれ読者ゼロになるやつちゃうか。

まあええわ。
これがいわゆる、若若介護です。介助か。両手を挙げるのもだるい、そんな時、私は夫に介助してもらっていたのです。

私の髪と体を洗い終わると、じゃっ!とばかりに夫は風呂場を出ていく。そして私は再び湯船に沈む。あったけ〜。

ていうか湯船ってなんであんなに出られない仕様なの?鎖なの?温かさで私をがんじがらめにして、私を駄目にして離さない、下げチンあるいは上げチン彼氏なの?

そして私はどうするか。どうしますか?
ね。もう分かりますよね。
そうです。呼び出し音をプーと押して、夫を呼びます。
そしてアホみたいな顔で、「しんどーーい…出られへーーーん…」とぐったりし、マグロよろしく夫に湯船から引き上げてもらうのです。「はい、出るよ〜」「無理…もう一生出られへん…」という茶番も挟みます。そして夫の励ましを受けて、何とか私は湯船という下げ(上げ)チン彼氏と縁を切るのです。

あーしんど。
え、それは夫のセリフやって?まあそれはそう。異論はない。でも私の風呂上がりがしんどいのも、それはそう。事実。

あんなに湯船に浸かったのに、すぐに冷えるこの体。逆に寒い。風呂に入ったのに寒い。冬でもないのに寒い。そして強烈な立ちくらみ。全体的に視界が白い。頭を下げ、うおおおおおお、と唸りながら服を着る。
もうこの時点で私のHPはマイナス。なのに、アレをしなくてはならない。アレ。アレですよアレ、そう、オレですよオレ。いや今オレ関係ない。
そう、ドライヤーで髪を乾かすという、苦難に満ちた風呂オペのラストを飾るにふさわしい苦行、ドライヤー。

調子が良い日は、立って乾かせる。調子が悪いけど…何とか頑張ろう…という日は、ぺたんと洗面所の床に座り込んで乾かす。調子が悪いしもう無理だ頑張れない、という日は、そう、さんはい、「夫を呼ぶ」!!!!

私がビショビショの髪のままリビングに行くと、ハイハイとばかりに夫が椅子を持ってきてくれる。洗面所に。私はそこに座り、髪を乾かしてもらう。
ブラシを使って私の髪を乾かす夫は、初めこそ下手だったものの、あっという間に綺麗に乾かせるようになった。
私は仕上げのブラッシングが好きすぎて、何度も「もうちょっと」と言っておかわりをする。目を瞑って頭皮を掠めるブラシの先を感じて、ほわ〜〜っとし、うは〜〜っという顔をする。私がくれくれとしつこいので、「はい、もうおわりね」と夫がブラッシングを終わらせ、ドライヤーの儀は終了する。


これが、妊娠前の私の風呂の実態。

何度も、夫と話し合った。なぜ私はそんなに風呂に入るのが遅いのか。なんで自分でスッといけないのか。介助をすること自体は僕も楽しいし良いんだけど、時間が押して寝る時間が遅くなるのがとにかく困る、と夫は言った。自分は口うるさく「風呂に入れ」とは言いたくない、とも。
私の育った環境や体のコンディション、色んな要素を話し合った。私の自律性の弱さについて、真剣に。


そして妊娠した。
妊娠中は、前述のオペレーションの他に、風呂上がりに夫が私の全身にクリームを塗るという要素も加わった。夫は妊娠した妻の肌を守るという謎の使命感に燃えていて、普段、こんなに丁寧に保湿されることなどない私の肌は、妊娠前より明らかにもっちりした。ガサガサだった肘がもっちりすべっとなった。え、今?もちろんガサガサです。


そして産後。
妊娠前には1時間以上かけて入っていたお風呂も、出産したら出来なくなった。夫に「体を洗って〜」「髪を乾かして〜」なんて、赤ちゃんみたいなことは言えなくなった。なにせうちには本物の赤ちゃんがいるのだ。私の介助をする要員は居ない。むしろ私が赤ちゃんをケアするイチ要員。夫が見てくれているとはいえ、のうのうと1時間以上湯船に浸かっているわけにはいかない。娘が私を必要としているかもしれない。落ち着かない。

一旦は、夕食もすべて終わり夫が娘を寝かしつけてくれている間に私がゆっくり風呂に入るというスケジュールだった。でもそうすると、またあの問題が首をもたげる。ズルズルと風呂に入らずどんどん先延ばしになる、私の悪い癖。風呂に入るタイミングが分からない。

みんなどういうタイミングで入るの?どうやって決めてるの?よし今だ!いちっにのっさん!で勢いつけて入るの?

困惑する私に、夫がいちばん困惑していた。

また、話し合った。それでなくても、そのころは赤ちゃんとの生活スケジュールを度々見直していた。どのタイミングでどちらが風呂に入り、その間にもうひとりが何の準備をし…というようなことを半刻刻みでスケジュールし、その通りに動く。そして適宜、赤ちゃんの成長に合わせてアップデートをかけていく。

そうこうしているうち、ついに私のズルズル癖が直るスケジュールが開発された。
それは、「夕飯の前に私のお風呂の時間をねじ込むこと」だった。今まで、夫の「ゆっくり風呂に入ってほしい」という気持ちと、私自身の「ゆっくり風呂に入りたい」という気持ちのせいで、あえて余裕のあるタイミングに風呂を設定していたが、試しに夕飯前に風呂に入るようにしたら、「私ってばいつになったら風呂に入るのか問題」と「入ったとて風呂でダラダラしちゃってケツが見えてこない問題」が綺麗さっぱり解決した。

夫と娘が風呂から出てきたら、風呂に入る。それが私の、風呂のタイミング。しかも2人ともサッパリして出てくるから、なんだか私も風呂に入りたいような気持ちになる。
しかもしかも、夕食前だから、体が軽い。消化に体力を持っていかれていない。眠くなっていない。
もともと、夫は夕食前に風呂に入る人だったが、私は生まれてこのかた夕食前に風呂に入るということをしてこなかった。

なんだよ、めっちゃ楽じゃん。

標準語になっちゃうくらい楽じゃん。

しかも、「この後みんなで夕ご飯」があるから、無駄に湯船でダラダラすることもない。みんなで囲む夕飯を楽しみに、湯船を出る。
もちろん、湯船でダラダラしたい気持ちもあるけれど、いい加減懲りた。風呂でダラダラすると、疲れる。30を越えてようやく、私は認識を改めた。風呂は体力を消耗する。

今私は自律性のある入浴生活を送っている。

とてつもなく当たり前で、「なんだよ、そんなんで直んのかよ」と言われそうな解決策だが、私としてはこれは結構な発明だった。

大縄跳びに飛び込むタイミングを伺うように、風呂に入る(風呂から出る)タイミングを逃し続け自己嫌悪を育てていた私にとって、今のスケジュールは、なんとなく「家族に励まされているような」感覚のするスケジュールなのだ。露骨な応援じゃない。指示でも要求でもない。「一緒にやると楽しいなあ」というやつ。

それは、本来なら生家で経験すべきものだったのかもしれない。そのへんは今回はそっとしておこう。

とにかく、「風呂という重労働」に対して異常に腰が重く精力を奪われていた私だけれど、子どもが出来た今、少しだけ「自分の風呂の入り方」が分かってきたような気がする。

ただ、夫によるシャンプーとドライヤーについては、諦めたわけではない。あれは諦められない。必ず、またリクエストする。あと5万回くらい。


今回、この記事を書こうと思ったのは、ハネサエ.さんのこちらの記事を読んだからです。あー、ダラダラしちゃった、という葛藤に分かりみが深すぎて、思いのたけをつらつらと、振り返りもせず書いてたらこんなに長くなっちゃった。お風呂って深い。


いつもありがとうのかたも、はじめましてのかたも、お読みいただきありがとうございます。 数多の情報の中で、大切な時間を割いて読んでくださったこと、とてもとても嬉しいです。 あなたの今日が良い日でありますように!!