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【梅園魚品図正】(16) 鯵(まあぢ)/鱚(きす)/東都海上名所漁猟之場

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『梅園魚品図正 巻1


鯵 マアジ

癸巳下春廿日 真寫
海魚類

『順和名抄』曰  鯵 マアジ 一種
『産物志』 竹筴魚

此を真鯵の雄と云。雌は形状やさし。首面 不 尖。


白鱨魚 キス

癸巳年初夏五日 真寫
海河魚類

『武江産物志』 白鱨魚 キス

國俗、鱠残魚を以て キス と訓ず非也。鱠殘魚は シロウヲ と云者也。別者也。春、両国川 及び 中川、佃嶋、隅田川、尾久の邊にてとる。白ラウヲ とは又別物也。

鱠殘魚は 江州に多し。白鱨キス魚の首の内に各石あり。石首魚イシモチの如し。此者、中華の書に不載。故に漢名不詳。キスに 青白の二種あり。秋月、三まい洲、□ 近来、中洲 邊にて多く鉤る。

※ 「江州」は、近江国おうみのくに
※ 「三まい洲」は、三枚さんまい。旧江戸川の河口に広がっていた干潟のことと思われます。
※ 「中洲」は、隅田川の下流部にあった中洲のことと思われます。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
みつまたわかれの淵
隅田川の中洲


鱚 キス

鱚 キス 又 鼠頭魚


東都海上名所 漁猟之場

中川 川幅八十間、舟渡し
  ハゼ、キス、セイゴ、鮒、サイ
ヨシ 中川の口
  カレイ
中瀬 黒森
ミヨ 丸よしの東
  春秋の釣場

小澪 中の瀬の先
横三代 春秋
ばら/\松
砂取 横澪先
箒木 砂とりの酉方

三枚洌 箒木の外辰方
  海和尚、キス、ハゼ
出洲 ほう木の酉戌方
  イワシ 出洲の外廻り
横倉 三枚洲の内

伯父が榜抏
鎌 横倉の内、利根川落口
貝刀水増ミソ 鎌より五十丁東
蛎洲
大洲
井戸下浄光寺 利根川の内 是 ● を東と云

佃沖
  シラ魚、ハゼ、スバシリ

東河洲 西河洲 同所 春秋釣場
出洲 三つ合 東河洲の巳午
  ヒネキス、大ハゼ

蛤蒔間の洲 出洲の西 碇頭
前洲 樫木 眞嵜 弁天沖 上総沖 木澪
鉄砲洲
佃裏
濱御殿前
  メナタ、クロダイ、ハゼ、カレイ
  八十八夜より 三尺澪 亭の見通

赤壁
源兵衛みよ
天王洲
  芝エビ、ウミカニ、ハモ、アナゴ、サヨリ、ダツ、フグ、コハダ、ザコ
品川沖
  生貝イケ
鮫頭沖
  カレイ、コチ

白洲場 七軒屋 いなご﨑 われ
  御殿山天王の谷、われの見通し
松棒
根 品川沖
傘根 中根 沖根 是を西と云

沖釣の魚は、キスハゼ、黒鯛、撥尾イナ魚、牛尾コチ魚、比目魚カレイ、アイナメ、暨魚カイコ、魚 ● 其産所にあらずして 其年他沖にて釣る事あり。垂釣の㕝、委く兹に とかんと欲すれども、緊用の さまたげ ありて 閑暇あらず。故にここに停。

※ 「委く」は、くわしく。
※ 「兹に」は、ここに。



筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。

また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ

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