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職人尽歌合 10~18番

十番 むまかはう 対 かわかはう

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

むまかはう

かはかはう

※ 「むまかはう」は、 馬買うまかおう
※ 「かわかはう」は、 皮買かわかおう 。  皮買かわかおう がやって来る時分を「 皮買時かわかおうどき 」といったそうです。(夜明けや夕暮れどきの薄暗い時間帯のこと)。彼誰時かわたれどきと同じ。


十一番 山人 対 浦人

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

山人
 ことしは秋より さむくなりたるは

浦人
 此縄 はやきるゝは たかうれ


十二番 樵夫 対 蘓

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

樵夫


 伏見草とて せにもてなさるゝ
 みまくさよ

※ 「樵夫しょうふ」は、きこりのこと。
※ 「」は、草刈りのこと。
※ 「みまくさ」は、御秣みまくさまぐさ を尊んでいう言葉。( まぐさ は、牛や馬の飼料にする草のこと)


十三番 烏帽子折 対 扇子売

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

烏帽子折えほしおり
 今時の 御ゑほしは
 ちと そりて仕候

扇子売
 あふきは候
 みな 一ほんあふきにて候

※ 「御ゑほし」は、御烏帽子えぼしのこと。
※ 「一ほんあふき」は、一本扇いっぽんおうぎ。一本ずつ精選した扇のこと。


十四番 帯うり 対 白い物うり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

帯うり
 此帯 たちて後
 み候はん いそかしや

白い物うり
 百●も なからけも いくらもめせ
 いかほと よき御しろい候そ

※ 「しろもの」は、白粉おしろいのこと。


十五番 蛤売 対 魚売

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

蛤売はまくりうり
 ひけのあるは 家のはちにて さうそ
 ことの外なる ひけのなき哉

魚売いをうり
 いおは候 あたらしく候
 めせかし


十六番 弓作 対 弦売

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

弓作ゆみつくり
 此ゆみは つるをきらはんとするそ
 にへおり 大事なるへき

弦売つるうり
 つるめし候へ ふせつるも候
 せき弦も候

※ 「にへ」は、ニベ弓(鰾弓)の「ニベ」でしょうか。 にかわ と似たもので、弓に用いる場合は「ニベ」と呼ばれるそうです。
※ 「せき弦」は、先陣で用いる弓弦のひとつ。 弦苧つるおに黒く漆を塗り、その上に絹糸を巻きいて、さらに漆で塗り固めたもの。関弦せきづる


十七番 ひき井れうり 対 小窯作

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

ひきゐれうり
 これは 因幡かうしにて めせ

古窯作
 あかかわらけは めすましきか
 帰足にて やすく候そ

※ 「ひきゐれ」は、れ。入れ子になっている器のこと。
※ 「因幡かうし」は、因幡合子ごうし。合子はふた物のこと。
※ 「あかかわらけ」は、赤土器あかかわらけ
※ 「帰足かえりあし」は、帰る時のついで、帰りがけという意味。


十八番 饅頭うり 対 法論味噌

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『職人尽歌合 [1]

饅頭まんちううり
 けさは いまた 商なき
 うたてさよ

法論ほうろ味噌みそ
 我らも けさ 奈良より来て
 くるしや

※ 「うたて」は、うたてし。情けない、なげかわしいという意味。
※ 「法論ほろ味噌みそ」は、なめ味噌の一種。



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