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【応募】公共バスの中で知った「障害者も平穏じゃいられない」このご時世【最近の学び】

あまり自分の病状とかを明かすのもなぁ、という抵抗感はあるのだが、今回はそれを書かないと始まらない部分もあるので、前口上として少しお付き合い願いたい。

おいらは、もう20年以上病院通いを続けている。つまり、21世紀に入ってからはずっと健康とは縁遠い生活になっている、ということになる。
で、それでも一応は症状が悪化しないよう食い物に注意し、医者に言われた通りに薬を飲み続けて、と悪戦苦闘はしてきたのだが、力及ばず昨年ついに「サイボーグ」になった。
まぁ、簡単に言えば、腎臓の機能がいよいよ基準値を下回り、自宅で腹膜透析をする毎日になった、というわけだ。服を着ていればわからないが、上半身裸になれば左の下腹部から透析用のチューブがベロン、と出ている。そしてお腹の中には、約3リットルの透析液を抱えられるレベルの袋が装備されているわけだ。そんな身体の状態を説明するのが面倒くさいので、おいらは「サイボーグ」とか「サイボーグ化している」と表現している。はっきり言って、気持ちいいものではないゆえ、そんな感じで少しでも印象を和らげようということなのだ。

で、選挙の時に維新から出馬していた長谷川豊という男(元々はどっかの局アナだったらしい。テレビがないので出演していた番組を見たことはないのだが)が、腎臓透析は自業自得だ!1級障害者として国が医療費の面倒を見ることなど過剰医療だ!と騒いでいたことがあるので、それでご存じの方も多いと思う。おいらは今、まさにその1級障害者として認められ、各種の保護を国から受けている。もちろん、おいらは暴飲暴食の果てに腎機能を失ったわけではなく、持病でもあった悪性高血圧からの腎臓疾患で、長谷川某の主張には忸怩たる思いでいた側の人間だ。そんなに裕福な人生を送ってきたわけではないのでね。

11月にサイボーグ化手術をし、腹膜透析の運用が始まったので、合わせておいらは区役所へ行き、障害者認定の手続きを済ませた。そして年が明けた今月にようやく障害者手帳(というかカードなんだね、今は)が出来上がり、交通費の免除などがを受けられるようになった。そう、片腕がないとか、下半身不随といった人たちも1級障害者にカテゴライズされるので、移動も難しいケースもある為に、福祉サービスの一環でバス代無料とか100km以上の鉄道乗車は半額といった障害者割引も受けられるのだ。

前置きが長くなったが、この記事はようやく支給された「バス無料パス」がきっかけで起きた話になる。

1級障害者だ、とは言ってもおいらの場合は一人でも社会生活はできる。車椅子は不要だし、移動の為の付き添いも必要はない。だが、透析液を腹に抱えたままで長時間過ごすと突然眠くなったり、意識がぼーっとしてくることがある。簡単に言えば、透析液が汚れてくると、体内に老廃物が回り始めて悪さを開始するからだ。なので、その症状が出ると急いでサイボーグ機能を動かさなければならない。いや、大げさではなく、放置しておくとマジで死んじゃうのでね、けっこうシビアな話なのだ。

その日は、まず横浜まで納品へ行き、その後は戸塚を回ってバスで帰ることにしていた。最初の予定が早く終わったので、正月の挨拶も兼ねてかつてお世話になった代理店にも営業をかけることをアドリブで思いついたのだ。
ところが、思った以上に懐かしい話で盛り上がってしまい、予定していた時間を大幅に過ぎて帰路につくこととなった。その為、透析液の入れ替えをしなければならない時間になっても、まだ表にいるという事態になってしまった。
話が終わり(残念ながら新規の契約はとれなかったw)、急いで部屋へ帰ろうと地元行のバスに乗り込むと、車内はそこそこ混んでいる状態たった。だが、運よく「優先席」が一つ空いていたので、おいらだってここへ座る資格はあるよな、と自問した上でそこに座った。そろそろきちんと立っているのがキツくなり始めていたからだ。

急激に眠くなってきたので、これはいかんと大人しくスマホを見ていると、いきなり
「そこは優先席ですよ!立ちなさい!」
と、甲高い女性の声が聞こえた。
見ればアラサー?くらいの若い女性が、おいらの脇に立っている。
ああ、この人はおいらに言っているんだろうな、と気が付いて
「一級だよ?」
と、障害者カードと無料パスを見せながら女性に答えた。
ところが彼女は
「健康じゃないですか!」
と更に甲高い声(金切声だったね、もう)で言う。
なんだろう、腰に手をあてて仁王立ちのようになっているので、こりゃ障害者を示すアイテムを見たことがないんだな、と気が付いた。仕方がないので、おいらは長袖Tシャツをはだけ、サイボーグ化している腹を見せた。
女性は「はっ」と口元を手で押さえ絶句したのだが、その仕草で「見てはまずいものを見てしまった・・・」という空気になったのだが、その剣幕においらの眠気も吹っ飛んだ。周囲のお客さんの目もこっちに集中している。なので、さっさと黙らせようと思い
「わかりました。警察へ行きましょう。交番のあるバス停で一緒に降りてください」
と、運転手にも聞こえるように言った。
まぁ、完全に公然わいせつな事案にまでしたので、こっちもタダで引き下がるわけにはいかなくなった、出る所へ出て決着をつけてもらおう、と思ったのだ。
固まったままの彼女を見ながら長袖Tシャツを着直している間に、バスは次のバス停に着いた。
すると彼女は、間違いました、すいませんの一言もなく、転がるようにバスから降りていってしまったのだ。

障害者って、こういうトラブルがあるもんなんだねぇ、と走り始めたバスの車窓を見ながら思った。五体満足で動けるじゃないか、と勝手に思い込み、一人で決めつけて声を挙げるというのも、今風ということでもあるのだろうが、見えない五臓六腑がイカれてるケースというのもあるんだ、くらいはイメージできないものなのか、と少しがっかりもしたわけだ。やはり発想が貧困だということなのではないのかなぁ。

そして、彼女のように間違いから喧嘩を売るようなやらかしをしておきながら「謝らない」とか「自分の非を認めない」感じも、何とかならないものかと思ったりする。こんな「自分なりの正義を疑いもしない」という生き方?性癖?って、巷を騒がせているツイフェミのような「嫌な感じ」に通じるとも思う。それで部屋に帰り、こういう場面を防ぐいい物はないのか?とネットで検索をかけたら、おお!「自分には障害があります」と明示するワッペン的なアイテムが市販されているではないか。次に通院する際、売っていたら忘れず手に入れようと思っている。

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