おかえり、ただいまから始まる「リターンズ」

やっと二人が帰ってきた。

2018年、多くのファンを獲得したあのドラマの二人が、画面の中で新しい表情を見せる。
たったそれだけのことで「お祭り騒ぎ」できてしまえるのがファンである。

正直、始まるまでは疑心暗鬼になっていた。
なにせ2019年の劇場版が想定外の連続であり、終始不機嫌そうな牧くんと、勘違いするはずもないミスリードと。
不自然なほどギクシャクさせた中でも、「春田と牧」だけは連ドラと変わらない絆があることだけが救いだったあの映画で、多くの人が不完全燃焼になっていた。
その流れがそのまま続いていたら途中離脱も否めないなとの思いと、いや、あの俳優陣が勢ぞろいするのであればきっと上手くまとめてくれるはずだから、との思いが日々交錯していて、逆に冷静になり、過度の期待もしないし必要以上に不安がることもなく、その日を粛々と待っていた私。

関西では1時間遅れの地上波放送なので、待ちきれずにTVerで視聴した。

冒頭は何度も予告で流れていたし、夢オチだという噂も流れていたので、心置きなく笑えた。
部長と牧くんのキャットファイト…懐かしい。

2018年連ドラのキャットファイトから劇場版ではさらに過激な闘いになり、今回はそれ以上に暴れている二人を見て、大笑いする。
「激おこ牧」が大好物の私にとっては眼福であり、チワワ改めドーベルマンとなった「林遣都」に惚れ惚れした。
その後も続く部長VS牧の小競り合い。

「チェンジで」
の間合いと言い方、一瞬のその場面で「ああ、やっぱり林遣都最高だわ、好きだわ」となった私はやはり頭がいっちゃってるオタク気質全開の女である。

私にとって2018年の「おっさんずラブ」は、最推しになる遣都くんをじっくり見るきっかけになったドラマだ。
名前と顔は知っていたし、彼のドラマも見た事はあったけど、あれだけ心を掴まれた事はなく、「この人のこと、これからも見続けたい」と思った瞬間の、あの冷蔵庫の前の物憂げな目と表情に胸が締め付けられたのはこのドラマが初めてだった。
その後も過去作を含め出来る限り、映像作品も舞台も見続けているし、度肝を抜かれる作品も幾つかあったが、やはりその原点は「おっさんずラブ」での牧凌太なのだ。

連ドラから5年、劇場版から4年。
遣都くんもたくさんの作品を通して、その演技の説得力はさらにパワーアップしている。
私はちょっと不安もあった。
数々の役を見て来た今、純粋に「牧凌太」として見る事ができるだろうか、と。
全く問題なく見る事ができたので、やはり凄いなと、我が推しは最高だな、と冷静に歓喜しているところ。

そういう点では「田中圭」という俳優はそのもう一つ上の段階にいる人だな、とも感じる。
彼もとんでもなくいろいろな役をやって来た。
彼がまだ端役ばかりだった頃によく見ていたのだけど、イメージが固定しないというのは凄い。
今回も間違いなく、「牧凌太を心から愛する春田」でしかなかったし、その軸がぶれていない事を確認できただけで、今後の展開がどれだけとんでもない事になったとしても、途中離脱などあり得ないと思えるまでになっている。
なんなら爆笑しながら見てやろうじゃないの!なんでも来いだわ!という心境。

やはりこのドラマの軸は「春田と牧」であり、2018年に出会った二人が急速に心の距離を縮めた日々と、悲しい別れと突然のプロポーズがベースにあるからこそ応援したくなる二人であるというのは間違いない。

部長はまだ春田に想いが残っているようだし、武川さんもまだくすぶっている牧くんへの未練を断ち切れずにマッチングアプリに精を出しているようにも見える。
だって、春田が牧くんと揉めていると知った武川さんの顔が明らかに楽しそうだったもの。
部長も武川さんも、二人の幸せを願ってはいるけれど、どこかで未練を引きずりながらそれを抑え込むために必死な姿が、いじらしくもあり、哀しくもあり、可愛らしくもあって、これが「ダンディズム」というものではないかと思えるほど。
今後の絡み方も楽しみだ。

2018年から5年も経てば環境も変わっている。
登場人物の人生にも変化があった。
私がちょっと嬉しかったのは、ちずちゃんの子供が男の子で、「春田」と呼ぶところ。
私の二次創作で描いた世界がそのまま実写化されたようなワンシーンだったので、それだけで満足です。

それにしても。
TVerで無料配信されているスピンオフは、けしからん。
あれがスピンオフとして配信されている理由は、地上波だとR指定がつくからなんですね?
妙にテンションの高い牧くんと、終始ニコニコとする春田から「やっと二人で暮らせる喜び」が伝わってくるし、思った通りのダブルベッドだし、お風呂も結構広くて「なるほど」と言ってしまえる新居。

お風呂が沸いた音がうちと同じだというだけでテンション上がるオタクに更なるハイテンションへ導くラストの「雄・春田」がたまらない。
目つきが変わって、確実に仕留めにかかった猛獣のような春田が、この日をどれだけ待ち望んでいたのだろうかと想像するし、そうなる予感はあったけど、というか確実にそうなるだろうと思っていたから照れくさくてずっとハイテンションのままだった牧くんのドキドキを想像するとこちらが悶絶してしまう。
ブラックアウトで正解ですよ、スマホの画面が割れてしまう。
「初夜」というとても淫靡な響きに相応しい内容だったから、配信限定なんだなと勝手に納得。

だから、牧くんが帰ってくる空港でのインサート画像にあのピンクの飛行機が映し出されたり、2話の予告で「ん?」と思う台詞があったりもしたけれど、まぁそれをスルーできるくらいには、本編を楽しむ余裕はある。

結婚して最初にぶつかるのは、ほんとにささいな事ばかり。
「育って来た環境が違うから」というほんとうに基本的なところでのすり合わせが上手く行かないと、ずっとギクシャクするものだし、10年付き合ってもすぐ離婚する夫婦がいるのはそういうところもあると私自身身近な人々を見て思ったりする。

ルームシェアの頃は牧くんも遠慮があったし、住まわせてもらっているから、という気持ちで家事をやっていたのだろうと思うけど、「夫夫」になって、対等な立場でそれは違うと思うのも当然だし、「ゴミ出しは家中のゴミを集めるところから」と言う台詞に妙に共感してしまった。
それぞれ昇進して立場も変わったし、仕事の量も勉強しなくてはいけない事も増えた牧くんにとって、自分へのイライラを春田にぶつけてしまう気持ちもわからなくはない。

ただ、春田が、自分よりも年下で後輩の牧くんの昇進を誰よりも喜んでいるし、一生懸命支えようとしている気持ちもわかる。
それでもね…もうちょっと片付けましょう。
そして寂しさから部長を夕飯に誘っちゃダメです。
それ、一番されたくないことじゃないですか。

という不穏な空気を感じつつも、どうやって家族になっていくのかを見守りたい。
どうか最終話では、大恋愛の末にすれ違いも乗り越えた「最強の夫夫」として家族になる姿を見せて欲しい。

喧嘩をしても、相手を一方的に責めても、寒い夜にカイロを持って迎えに行ったり、マフラーを購入したり、相手のささやかな望みを叶えたり。
そういうちょっとしたことで、「家族」としての基礎を固めていく二人はやはり尊いのだ。

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