春田と牧くんは末永く幸せに暮らしました

年明け早々から始まった「おっさんずラブリターンズ」がとうとう最終回を迎えた。
私も手放しで喜んでいたわけでもないし、細かいところを上げるとキリがないけど、概ね「おっさんずラブとはこういうもんだ」と言える本編だったのではと思う。

以下、ネタバレがあります。
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ネタバレ上等!な方はそのままお進みください。

良かったのはやはり「夫夫(ふうふ)」として新生活をスタートした春田と牧くんの心の距離感と、ごく自然に寄り添う姿が拝めた点。
牧くんの片思いから始まったと思いきや、実は春田の方が先に好きになってて、牧くんはかなり確かめてからぶつかって行ったというぶっちゃけ話や、春田がなんとかして牧くんにくっついて行こうとするデレデレぶりは、2018年、2019年のドラマと映画を通してずっと見たかった部分でもあったので、それはほんとうによかったと思う。

春田の中では「誰かがいなくなる」という恐怖が常にあって、それがずっとトラウマとして残っているのではないか、というのがX民の中での共通認識でもあったと思うが、今回はそれが如実に描かれていた。

私個人の想像なのだけれど、春田は母親と二人暮らしだった事から考えて、父親と死別しているか離婚しているかなのだろう。
きっと、春田は、お母さんもお父さんも大好きで天真爛漫な子供だったのだろうけど、ある日突然父親がいなくなったことで「取り残される恐怖」のようなものを無意識に抱え込んでいたのではないか。

2018年の連ドラの1話目で春田の自堕落な生活態度に愛想を尽かして母親は出て行ってしまい、2話で怒った牧くんは春田のもとから去ろうとし、6話ではちずとのハグを見た牧くんが、ほんとうに出て行ってしまった。

その後入れ替わるように部長が春田家に転がり込むのだけど、それを受け入れたのは春田の「孤独と絶望」から来る恐怖心だったのではないかと考えている。

その流れから行くと、結婚しようと思った相手が海外赴任してしまい、しばらく離れ離れで暮らすというのは春田にとって最も危険な事だったのではないかとも考えられるが、夜な夜なリモート飲みをしていたという話からすると、牧くんが自らの意思で「いなくなった」のではなく、仕事で単身赴任中だという状況は、彼にとって猛烈な「孤独感」を抱くこともなく頑張れたのだろうと想像する。

リターンズの中では、牧くんが「いなくなってしまう」状況を考えてナーバスになったり、部長が病気でこの世を去るかもしれないという状況に取り乱し、自分以外誰もいなくなるという夢を見て思わず牧くんを探すシーンなどを考えると、このリターンズのテーマは、春田の「孤独と絶望からの解放」なのではないかと思った。

2018年6話の空一前、「春田さんのことなんか好きじゃない」と牧くんに告げられた春田は、自分がずっと蓋をして来たトラウマが一気に蘇ったのだろう。

そんな春田は、自分の本当の気持ちに気が付いて、牧くんにプロポーズした。
だけど、牧くんはちょっと怒りっぽいところもあるので、いつか自分が見捨てられてしまうのではないかという不安を春田は常に持っているのではないかと思う。

リターンズでは春田がトラウマを乗り越えて、牧くんと一緒に生きていく事を改めて誓う話だったのだと感じた。
9話のラスト、桜が咲き誇る中で二人が歩くシーンがそう思わせる。

春田のために飲み会を企画した牧くんは、その日は二人が初めて出会った日だったと春田に言う。
そして、牧くんは春田と一緒にいる事が幸せで、大好きだと告げる。
このシーンがすべてを物語り、この瞬間、春田の不安は無くなったと考えたい。

部長がいなくなるかもしれない、という不安も今まで縁した人たち全員の幸せを願うのも、みんながいてくれないと不安で押しつぶされそうになる春田の本心だと思う。

牧くんは恥ずかしさであまりデレデレはしないけれど、春田との全てを覚えていて、彼の中でずっと大切な宝物になっている。
春田はそれを知れただけでも、孤独と絶望から救われただろう。

イカゲームを1ヵ月と勘違いするか?とか挙げればキリがないほど小ネタがややスベっていた印象ではあるが。

2018年のテーマが「人を好きになるのに男も女も年の差も国籍も関係ない」だったが、リターンズでの様々な家族の形を肯定するしめくくりは、今の世の中に沿ったものでもあるだろう。

このドラマをBL扱いするメディアも多いが、私は決してそうは思っておらず、「人と真剣に向き合うこと」を発信しているヒューマンドラマであったり、単純に恋愛ドラマであると思っている。

いずれにしても、猫の信玄を家族に迎え入れて溺愛するマサムネが愛おしくて仕方ないし、蝶子さんラブなマロも可愛いし、魅力的なキャラクターが揃ったこのドラマも、ここで完結させたのだと感じている。
ラストの桜の中の二人のキスシーンがブラックアウトではないこともそれを暗に示しているのだと思った。

武蔵と牧くんの喧嘩はある意味余興のようなもので、トムとジェリーのような、そんな感じなんだと思えば、まぁそれもいいんじゃない?と思えるし、ところどころにツッコミどころ満載のギャグシーンもまぁOLって元々そういうコンセプトで作ってるからそこはそうなんでしょうね、という気持ちでもある。

ただ、公安ずの方は、何故あんな中途半端な絡ませ方をしたのか、非常に勿体ない。
あれほどの俳優さんを起用しているのなら、あれで1本ドラマが作れただろうに。
(✈後に公安ずラブやるつもりだったんだろうなという私の意地悪な予想は、まぁ、うん)

和泉役の井浦新さんは髪が長めでクルクルパーマヘアだったが、Xで次のお仕事の写真を見たら短髪になっていて、そうそう、井浦さんは単発の方がお顔の美しさが際立って、こっちの方がかっこいいのよ!と一人で思っていた次第です。

1話からセルフオマージュも盛沢山で、支部で虹を読み漁っていた人達にとってはアンサーでもある今回のリターンズ。
私はもうここで綺麗に完結して、「創一と凌太は永遠に幸せに暮らしました」ということで、いいのだと思っている。


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