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『葬送のフリーレン』のキャラクター構成を読み解く

物語を楽しむときに分析の切り口を持っていると新しい発見がある。今回は『葬送のフリーレン』に登場するキャラクターたちの構成について考えてみたい。


作品に共通する典型的なキャラクター

これまでに何度も引用している『SAVE THE CATの法則』によると多くの人から高評価される作品には様々な共通点があり、キャラクター構成もその1つで、作品中に登場する最も典型的なキャラクターは次の5種類だとされる。

  1. 《若くて明るいナイスガイ》タイプ

  2. 《かわいい隣の女の子》タイプ

  3. 《わんぱく小僧》もしくは《賢いやんちゃ坊主》タイプ

  4. 《セクシーな女神》タイプ

  5. (その男版)《セクシーな男》タイプ

上記の主要5種類以外では、
《救出という任務を背負って、再び戦場に戻っていく負傷兵》タイプ、
《ちょっと訳ありセクシー美女》タイプ、
《愛すべき優男》タイプ、
《おどけた道化師》タイプ、
《賢き長老》タイプ、
などがあるそうだ。
1つだけやけに具体的な行動まで示されているが、「確かによくある」って感じがする。

ここで「こんなありきたりのキャラクターばかりの作品で大丈夫なの?」と疑問が沸くかもしれない。もちろん、キャラクターの個性や魅力を付加することは必要だが、人間の脳は進化の過程で一定のパターンの物語を好むように形成されてきたとする説が有力で、
「こうした典型的なキャラクターが存在する裏側には、観客が望むストーリーがある。これは観客のDNAに深く刻み込まれている」
と上記著書の作者は主張している。

そこで、まずは主要5種類に絞って『葬送のフリーレン』にあてはめると、誰がどれになるかを考えてみたい。私の見立ては次のとおりだ(異論はみとめる)

  • 《若くて明るいナイスガイ》タイプ:ヒンメル

  • 《かわいい隣の女の子》タイプ:フェルン

  • 《わんぱく小僧》タイプ:シュタルク

  • 《セクシーな女神》タイプ:フリーレン

  • (その男版)《セクシーな男》タイプ:???

ハイターやアイゼンは登場機会が少なく、残念ながら上記5種には入らないが、あえて当てはめると、ハイターは「おどけた道化師タイプ」、アイゼンは「賢き長老タイプ」になるだろう。
最後の「セクシーな男タイプ」は空席なのだが、ここはザインの役割だったと思う。しかし、ザインは途中で物語から退場してしまった。作者にどんな構想があったのかわからないが、この空席を埋める工夫を考え続けているに違いないと思う。

キャラクターに個性を持たせる工夫

上述した5つの典型の定義はシンプル過ぎるので、これだけでは物語を動かすキャラクターとしては個性に欠け、作品の魅力につながらない。
そこで『葬送のフリーレン』では、これらの典型に次のような特徴を加える工夫がなされている。

  • ヒンメル:若くて明るいナイスガイ、でも、イケメンを自称するナルシスト

  • フェルン:かわいい隣の女の子、でも、怒りっぽくて、すぐすねる

  • シュタルク:わんぱく小僧、でも、気弱でいじけやすい

  • フリーレン:セクシーな女神、でも、小柄で寝相が悪いし朝に弱い、ミミックが好きな変わり者

どれも典型の定義と相反する特徴を加えているのがポイントだ。こうした工夫でキャラクターたちを具体的にイメージしやすくなり、それらが組み合わさって物語を動かす力になる。例えば、

  • フェルンがすねてる。シュタルクが誕生日プレゼントを用意してない

  • シュタルク強く言い返せず、いじける

  • フリーレンとザインがとりなす

  • フェルンとシュタルクのプレゼント選びのエピソードへ

という感じだ。

アニメシリーズ第14話より

上述した個性のうち、フリーレンだけは性格的な特徴ではないので、私の分析が甘いのかもしれない。フリーレンはエルフであり、主人公としてのキャラクター作りが難しいのだと思う。だって、誰も本物のエルフに会ったことがないのだから。

また、フリーレンには物語を主導する主人公としては欠けている点がいくつかあるが、それを補っているのがフェルンだと私は考える。フリーレンとフェルンは2人セットで主人公なのだ。これについては別の機会を取り上げたい。

この先、『葬送のフリーレン』という物語にどんな展開が待っているかわからないが、2人でセットであるがゆえにフェルンがフリーレンと長期的に別行動をとることはない、いやできないだろうと予想しておく。
アニメのシーズン2はまだまだ先だろうが、今後のストーリー展開が楽しみである。
(私はアニメシリーズしか見てないので、コミックでそんな展開が既にあったら予想は外れですね。まぁ、原作コミックを読めば答え合わせになるのですが、、、)

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