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終わらない夏

梅雨時に感じていた雨の香り。緑の香りが強くなってきたなと感じた頃、本格的な夏がやってきた。

ジリジリと肌を突き刺すような、太陽の光。裸足で歩くと、その温度が熱いくらい。

風に吹かれて、流れてくる夏の香りが好きだ。
潮の香りでも、濃くなった緑の香りでもない、夏の香り。
決して、嗅覚が鋭いわけじゃない。どちらかといえば、鈍い方だと思う。だから、感じている夏の香りは、きっと鼻だけをくすぐる、匂いとは違う。

空の色。風の音。それらが重なって奏でるように流れてくる夏の香り。夏が来ると、いつも思い出してしまう。
彼が私に、初めて電話をくれた日のことを。
きっとそこに、彼の汗の匂いも、混じっていたのかもしれない。だから、私が感じる夏の香りはどこか、憂いを帯びていて、切ない。真っ青な空とは相反するような、夕方の空のオレンジ色の方が調和が取れる。

お気に入りの香水とか、汗をかいた後に拭き取るボディシートの匂いとか、好きな香りにいつでも包まれて生きることはできるけれど、あの夏に感じたあの夏の香りはもう二度と再現できない。だからまだ、私は彼のいた夏の香りを追い求めたくなる。

2021.7.22

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いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。