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歩く水風船と蛾眉の飢餓

お前さん、ちょっとそこのお前さん。
んん?
そうさ、お前さん以外に此処には誰も居ないだろう?

お前さん、もしかしてその風船を割ろうっていうのかい?んえ?

そうさ、お前さんのその水風船だよ。
どこにある?だって?

ハッハッハハハハ!
お前さん、それは正気かい?
お前さん以外にどこに水風船があるっていうんだい。
そうとも。お前さんたちは、歩く水風船だろう?それ以外になんて云うのだよ。
私は知らない。

私は好きなようにそちらを呼ぶから、お前さんたちも私の事を好きなように呼んでいるだろう?

これはお互い様なのさ。
それで、その水風船の中身だけれどね。いつもいつも思っていたんだよ。

それが破裂して飛び散る前に、お前さんたちはすこぉしずつ出しては喰らいあい、出しては喰らいあい、そうやってその皮を丹念に張りつめたピィンと美しい状態のまま保ちたいのだろう?

それでだね、私もそれを真似してみたいなぁなんて。
んえ?中身?
お前さんたちには見えていないのかな?その中身だよぅ。
お前さんたち歩く水風船の中身は、本当にいろんなものが詰まっているだろう?
色や形やもやもややぐにゅぐにゅした、そのそれはなんて云うのかは、
私は知らない。
ほう、そうか。それは覚えておきましょう。

それで、それを出しては食べあっているではないか。私はその水風船の中身がそんなに美味しいのかどうか、それを知りたくてね。

そうすると、お前さんたちはその水風船の中身がまた変化するだろう?いつも同じ中身の水風船は見たことがないんだよ。

それがどんな感じなのか、私は知らない。
いやいや、私には見える。お前さんたちには見えなくても、私には見える。
そのようにしているのが私は見える。だから、聞いているんだ、歩く水風船よ。

中身をぶちまけて喰らいあうことをして、その皮が割れぬように皮が割れぬようにまたギュウギュウと押し込めては平然と歩き続け、もうこれ以上は重たくて歩けぬとおのれで皮を引き裂いて此処へ飛んで来ようとするではないか。

お前さんたちの中身は此処へ飛んでこないから、私はその中身を知りたいのだ。

んえ?さぞ美味しいのだろう?

いいえ。けっして美味しいものでは、ございません。

それから、私たちは貴方がそのように居なくなったり細くなったりパンパンに張りつめたカタチになるからこそ、それをそのように見たまま従っているだけでございます。

ですので、私たち水風船は貴方が創り出している貴方のそのお姿を真似しているにすぎません。

私たちは、貴方がいなければ、このように喰らいあうこともしないでしょう。そしてこの中身はけっして美味しいものでは、ございません。

それでも、貴方が弾けない限り、私もまた弾けることはありません。

私たち水風船は、いつか本物の風船になって、貴方の元へ割れずに飛んで行きますから。
それまでは、貴方を創り出している、あの強い光をまだまだ食べるのがよろしいかと思います。
しかし、今日たまたまに光の食事も飽きたのならば、この青い星の陰でその喉を潤すのがよろしいかと。

それでは、ごきげんよう。

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