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凍死寸前の青虫を救出、蝶々の恩返しみたいにはならなかった話

生協で買った無農薬ブロッコリーから、体長2センチの青虫が転がり出てきました。

虫全般、大の苦手です。ブロッコリーを房で分けて切ろうとした瞬間、ぎゃーーー!って叫びましたよね。独身のころだったらティッシュで掴んでベランダから投げ捨てたんですが(殺すのは嫌)、3歳男児の母となった今、この青虫をみて喜ぶであろう子どもの顔と、見るだけで虫唾が走る(虫だけに!)私の生理的嫌悪感を天秤にかけた結果、「子どもを喜ばせたい」という母の気持ちが勝ちました。我ながら信じられません。

虫は虫でも「青虫」というのがギリ許容。コオロギやバッタだったらアウト。飛ぶな!
ナメクジやミミズもアウト。粘るな!

子どもに見せてから外に逃そうと、ブロッコリーのヘタと一緒にプラカップに入れて、しばらく置いておきました。

しばらくすると、青虫はモゾモゾ動きだし、ブロッコリーをムシャムシャしだした様子です。

絵本の「はらぺこあおむし」のように、これからたくさん食べて、大きくなって、蛹になって、やがて蝶になる青虫。

自分の何倍も大きなブロッコリーを、ものすごいスピードで必死に食べている様子を見ると、なんだか愛着を感じてきました。

ちょっとだけ、うちに置いておいてあげるか。

子どもに見せるために保護した青虫ですが、保育園から帰ってきた3歳男児は、青虫を見つけると喜んだのも束の間。最初こそ観察したり、食べ物をあげたがったりしていましたが、ほどなく興味をなくしました。

私の青虫がひどいことされなくてよかった。もはや青虫の保護者の心情なので、ハラハラしながら見ていました。

翌朝、スーパーに行って、オーガニックの小松菜を買ってきました。

青虫の生態を調べたところ、新鮮な野菜しか食べないんだそう。しかも、農薬付きの野菜を食べると死んでしまうんだとか。うっ…繊細。

普段は高くて敬遠している、スーパーのオーガニック野菜コーナーで、一束298円の高級小松菜を迷わず手にします。

ちなみに、青虫がくっついていたブロッコリーは、1週間ほど前に買って冷蔵庫のチルドルームに入れていたものです。ブロッコリーはほとんど無傷だったので、寒くて食べられなかったのかもしれません。かわいそうな私の青虫……。

小松菜を念のためよく洗って、青虫が溺れないように水滴をよく拭いて、水を染み込ませたキッチンペーパーで根本を包んで、ブロッコリーと入れ替えました。

青虫とーーー虫嫌い女がーーー出会ったーーー(下条アトム)

小松菜を入れると、青虫は小さな足で葉っぱをつかんで食べ出しました。その様子は、人間の赤ちゃんに似た雰囲気があり「この子を守らなくてはいけない」という母性本能をさらに強く呼び起こされたのです。

それから、私は毎朝せっせと小松菜を取り替え、うんちを取り、日に日に大きくなる青虫の成長を見守りました。在宅勤務のパソコンの横に青虫を置いて、ふと見ると、小松菜を一心不乱にムシャムシャ食べる様子を見ると、心が癒されました。

たった1日でこんなにたくさんのう○ちをします
無事蝶になれるよう願いを込めて「安産」箸を与えました

虫ってかわいいな。

とはいえ、このままずっと飼うわけにはいきません。いかんせん、私は幼虫や蝶のことなんか何も知らないので、うっかりNGなことをしてしまう可能性があるし、ある日突然死んでしまったらトラウマになりそう。はたまた、室内で脱走した!なんてことがあったら夜眠れません(ここは虫嫌いのまま)。

そんなわけで、サナギになったらどこか安全な場所(どこなの?)に逃そうと思っていたのですが、なんやかんやで5日が経過しました。

ある朝、いつも通り青虫の世話をしようとプラカップを覗くと、何やら糸を吐き出していました。

……糸???

私の認識では、蝶はサナギになるもの。糸を吐いて繭を作るのは……

震える手でパソコンをひらき、「青虫 種類」で画像検索しました。ヒットする画像ときたら、悪寒が止まりません。薄目で、目の前にいる、愛着が湧きかけた青虫と画像を照らし合わせたところ、ひとつの真実に突き当たったのです。

ヨトウガ


※自粛※

(夜盗蛾、Mamestra brassicae)は、チョウ目ヤガ科ヨトウ亜科の昆虫幼虫は極めて多食性で、イネ科以外のほとんどの植物を食害する。老齢の幼虫は、日中は土中や株の地際に潜み、夜間に地上部に出てきて食害するため、夜盗蛾(よとうが)の名がついた。

Wikipedia

だったのかーーーーーーーい!!!!!

蝶々と間違えて蛾を飼うって、のび太かよ。貧ぼっちゃまくんも飼ってそうだし。

この子に対する愛情の乱高下が激しすぎて脳がバグります。

でも、「ペットショップで飼った犬が成長したら可愛くなかったから返品したい」みたいなサイコなことはしたくありません。縁があってうちに来てくれたのだし、最後まで責任をもってお世話を……

※自粛※

やっぱ無理だよ蛾は!!!ある日こいつが家の中飛んでたら発狂するよ。

Wikipediaやほかのサイトによると、ヨトウガちゃんはある程度大きくなると土に潜って過ごすと書いてあります。土の感触を知らずにプラカップの中で、与えられたエサを食べて過ごすのと、地面と植物を行き来して自由に過ごすのでは、後者の方が幸せと言えるのではないでしょうか?いや、そうに決まっています。

幸いヨトウガちゃんは広食で、イネ科以外のほとんどの植物を食べるとあります。私は翌朝、近所の公園で土が柔らかく草木が多く生えている場所に、1週間ほど共に過ごした青虫を逃しました。

強く生きろよ。

家に帰って空のプラカップを見ると少し淋しくなりました。

今回の経験で、私を虫を少し好きに……

なったかというと、まったくそんなことはありません。ダメです。キモいです。特に何かされたわけでもないのに虫に対する恐怖感や嫌悪感は根深いんだなと思いました。

どうでもいいけれど、仮にこの青虫が私に恩を感じてくれていたとして、大人になって舞い戻ってくるみたいなことにだけはぜっっったいに!なってほしくないと、頼むから里帰りしないでくれ!と、切に願っています。