アルコール依存症の女 大丈夫

取材を受けた後も私の生活に何ら変化はなかった。いつも通り友人や職場の仲間と酒を呑み交わし、それでも飲み足りない私は1人立ち飲み屋へ向かうだの自宅で飲み直すなどしたりした。
しかし毎日そうした生活をするわけではなく、週末に溜まった飲酒欲を爆発させた。一応、禁酒してますよという程で。

ただ、取材を担当してくれた記者とはメールでやり取りを続けていた。
記者という忙しい立場にありながら、必ず長文で返信を書いてくれた。
アルコールだけでなく他愛もない話で盛り上がることもあったし、この往復書簡がこの頃の私の心の拠り所でもあった。

そして前々回「何回目」で書いた通り、酒が原因で再び欠勤をしてしまう。

酒をやめられない自分を助けてほしかった。
でも誰に助けを求めるべきか分からない。
母は悲しむだろうし、ドライな姉は自分で何とかしろと突き放すだろう。
思い浮かんだのはあの「記者」だった。
当事者だからきっと分かってくれるだろう、話を聞いてくれるだろう。そんな思いだった。

電話を鳴らすも出ず、焦った私は彼が所属している支局に電話をかけた。
「不在なんで戻られたら折り返しで」虚しく響いた。
数時間後慌てた調子で電話をくれた記者に、私は泣きながら「かなり大きなスリップをしてしまいました」と正直に告げた。
しかし怒ることもせず優しい口調で「大丈夫、大丈夫だから」と電話口で寄り添ってくれた。

自分を受け止めてくれる人もいるんだ。


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